表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第一章 Boy Meets Girl
30/177

第三十話 戦国武将・上馬栗康かく語りき

■その30



「ど……どういう事?」

 我に返った玲南が、背後で羽交い締めにする千影に尋ねるが

「どういう事も何も、玲南さん誰かと喋ってたじゃないか」

「そうだけど、あの職員はどこに消えたの?」

「知らないよ! 確かに玲南さんが誰かと話してるのは聞いたけど、相手は見てないよ!」

「い、いや落ち着こう千影くん。よしここで玲南さんがおちゅちゅいた」

「うん、落ち着こう。上馬栗康(かみまくりやす)の名言、噛んでるから!」

『いやいや落ち着くのだおのおのがた、よしここで拙者が落ち着いt』

 これは小田原征伐で豊臣秀吉に取り立てられ、関ヶ原の戦いで東軍に参加し手柄を立て伊豆半島北部の領地を認められた戦国大名・上馬栗康(1565-1615)が、大阪夏の陣で真田信繁(幸村)の奮戦が伝えられ動揺した陣中における名言である。だが言い終える前に流れ矢が当たり、陣中になだれ込んできた大阪方に跡継ぎもろとも討ち取られ、御家断絶となった。(未冥偉人伝・日本の歴史編(未冥書房刊)より)



 羽交い締め状態から開放された玲南が千影の頬を掴んでむにむにする。

「ねえ千影くん、これ痛い?」

いひゃいいひゃい(痛い痛い)。というか、ほーいう(そういう)のはひふんのほっへでやるもんやろ!」

 痛くはないが抓られてる感覚はある。ただ、玲南の行動が意味不明だ。

「さっきドサクサに紛れて玲南さんの胸に触った千影くんへのオシオキです」

 ギクリとする千影。確かに玲南を羽交い締めにした際に手が胸の表面を撫でてしまったけれど、緊急事態だったので許していただきたい! 本気で玲南が危ないと思った時身体が既に動いてました! むしろ玲南が正気に返ってくれてホッとしたら、彼女を背後から抱きしめてる感触や玲南の甘くて爽やかな匂いを実感して体温や脈拍が急上昇してしまったのです!

「まあ、なりふり構わず助けてくれたんだよね。ありがとう」

 顔を赤くしながらお礼を言われ、千影もすまない事をした気持ちでいっぱいになる。

「……不可抗力とは言えゴメンナサイ」

「うん、確かに千影くんは玲南さんを助けてくれたよね。不健全警察に逮捕される危険を冒して★」

「ちょ! 逮捕される危険性は肯定かよ!」

「青少年不健全裁判で95%くらいの確率でえっちとみなされて死刑になると思います」

「死刑って!」

「心配しないで、せめて無期懲役で済むように証言はするから★」

「無罪釈放でお願いします!」

「それはともかく、千影くんは声は聞いてたんだよね」

「え? うん、そのアオジルは乙骨先生のだから持ってきてくれって」

「乙骨先生と一緒にいた職員さんの声だった?」

「一緒にいた?」

 2人とも、該当職員の名前が外川大義(とがわたいぎ)である事を知らない。

「途中で外に飛び出していったり、零比都ちゃんをマチルダ呼ばわりした職員さん」

「……あぁー、いたなあ、そんな人。確かにその声だった……って」

 千影の記憶にある人物と件の声がピタリと一致する。だがそれも一瞬。千影が思い出した職員像が、靄がかかったように不鮮明になっていく。

「あれ? 確かにその声だったと思うけど……どんな人だったっけ」

「えー、千影くん忘れちゃったの……あれ? おかしいな。玲南さんも顔は見たはずなのに、あれ?」

 玲南も千影と同じく記憶の引き出しがロストし始めたようだ。そのうち、外川がどんな声の持ち主で、何を話したのか、そして零比都を狂わせた出来事まで忘れてしまいそうな……

 神話級パラノーマルの呪いも解決して、異変は終わったと安心した矢先に不可解な話は勘弁してほしかった。


 余談だが、木南や零比都をあれほどまでに狂わせたマチルダとは何者なのか。ずっと疑問に思っていた千影が質問したが、その途端に零比都と木南がマチルダ症状(マガイモノ化する事)を発症して大暴れを始めてしまったため、千影と玲南は今もマチルダの正体を知らないままだった。



「なあ、神話級パラノーマルの呪いは本当に解けてるんだよな?」

「それは大丈夫だよ。千影くんの呪いはちゃんと解けてる」

「……じゃあ、玲南さんの呪いは?」

 それを口にしたと同時に、玲南の顔色が僅かに変わった。


「……それは大丈夫。玲南さんの呪いも、千影くんと一緒に解いてもらったから。これとは別問題だよ。でも、何で気がついたの? 玲南さんも呪われてたって」

「マガイモノに一番最初に気づいたのって、オレと玲南さんだっただろ。それに、乙骨先生は呪われた人を複数形で言ってたし、オレが呪われたとされる時間、玲南さんも一緒だっただろ」

 本当はもっと前から察していたけれど千影は言わなかった。玲南が微妙に元気がなくなってるように見えたとか、きっかけはそんなところだったと思う。玲南も怖かったんだろう。

「じゃあ、今起きてる異変は神話級パラノーマルとは無関係なんだね?」

「うん。神話級とか災厄級みたいな、トンデモパラノーマルじゃないよ……」

 危険性は少ないと仰るが、会話の最中お構いなしに五線譜ワイヤーでバリケード構築をやり始めては説得力皆無だ。

「来たよ! パラノーマル! まだ正体わからないから気をつけて!」

 ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ。

 音としてはこんな感じだろうか。窓の外からこちらに近づいてくる。机の上に置かれたアオジルもびっくりした顔で計量器の外を見ている。

 窓の外は一面砂嵐だ。これから何が襲ってくるのか?


To Be Continued>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ