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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第一章 Boy Meets Girl
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第二十二話 江戸時代から生きるアイドル伝説(前編)

■その22



「ここでしばらく待たせていただこう」

 プラント棟B棟制御室の手前にある、見学者用展示ホールのベンチに腰掛ける3人。展示ホールは鏡に映したように対称的に配置されたA棟とB棟の繋ぎ目にあり、どちらの棟の制御室にも行けるし、両側にある大きな窓からA棟B棟の棟1階部分を見下ろす事ができて、見学しやすくなっている。

「あの、これから一体何をするんですか?」

「一連の問題を解決できる人を呼んだ。もうすぐ到着する。会う準備ができたら呼ばれるから」

 虎野が説明した矢先に、B棟制御室の扉が開く。

「やぁ、よく来たねえ」

「……あの、木南さん?」

 現れたのは、何か調べ物があると言って会議室の書庫に引きこもったはずの木南だった。何食わぬ顔の彼を見て、まず千影が思った事は「どうやってここに! 神出鬼没すぎる!」ではなく、「巨大亀を吹っ飛ばした木南がいれば、ウマシカみたいなものにあんなに手こずらずに済んだのに!」だった。

「きなみ? 誰ですそれは。私は彼とは関係ない者です。木南という名前の人は現在、有東木千影君と関之沢玲南さんが異変に襲われないように周囲を厳重に警戒しています。決して仕事がめんどくさくて現実逃避しているわけではありません。無心で周囲を警戒し神が降りてくるのを待っていた結果思いもしない場所にいたりするだけなので、サボっているわけでは断じてありませ……」

「パラノーマルがいつ襲ってくるのかわからないのに、意味不明な話をする暇はあるんだ?」

「いえ今もちゃんと見張ってますから!」

 廊下の奥から聞き慣れない声がしたのと同時に。木南は言い訳めいたおかしな言動をやめキリッとした表情をした。一日72時間働くような、社畜の神に取り憑かれた不健康そうな顔に変わりはないけれど。背後に現れた小柄な少女に急かされながら展示ホールまで歩いてくる。

 思わず二度見してしまいそうな美貌だった。顔立ちは小学校高学年くらいで白い髪をショートカットにして、黒いワンピースみたいな制服を着ていなければ美少年に見えてしまうくらい中性的な雰囲気をしている。体格は華奢で、身長が180センチ以上あると思われる木南や虎野、身長が170センチ以上ある千影や玲南と比べても明らかに小さく見えた。150センチくらいだろうか。

 彼女の正体には心当たりがある。

 島津 零比都(しまづ れひと)。玲南の先輩に当たるフォーサーだ。

「呪いでこれから何が起きるかわからないって言われたでしょ。早く仕事終わらせないと他のドクター達にも迷惑かけちゃうし、いつまでも執筆に戻れないよ!」

「零比都ちゃん、お疲れさまですー★」

「あっ、玲南ちゃん! 今回は本当に大変だったね」

 木南を連れて展示ホールを通過する零比都に、玲南が挨拶をする。想伝蜃奇録の描写通り、仲は良いようだ。一時だが和やかな雰囲気に包まれる。

 不意に、おかしな気配を感じた千影と玲南が展示ホール入り口を見た。

 2人が全く同時に同じ方向を見た事に、虎野は不思議そうな顔をして

「どうしたのかな? 2人とも」

「今、誰かこっちを見てませんでした?」

「千影くんも気づいた? 確かに、見られていたよね……」

「気がつかなかったなあ。零比都さんは何か見えた?」

「うーん、特にこれと言って変な気配はなかったけど……って、ちょっとどうしたの!?」

 首を傾げる零比都の横で、今までの疲れ切った雰囲気が嘘みたいなキビキビした動きで制御室に戻っていった木南の背中を見送る千影と玲南。視界の片隅を影みたいなものが横切る。一緒にプラント棟A棟入り口の方を見た2人は、しばらくの間顔を見合わせていた。

 今までのパラノーマルの襲撃と様子が違う。筋肉押し売り、ウマシカみたいなものや着ぐるみ電話達には目立ちたがりなところがあったけれど、今2人の周りにいるおかしな気配にはそうした自己顕示欲が希薄なようだ。

 制御室の扉が開き、中から木南が顔をひょこっと出してきた。

「もういいよ、制御室に入って。まだ乙骨先生(おつぼねせんせい)はこっちに来てないけれど、制御室なら安全だから」

 虎野、千影と玲南、零比都という順番で制御室に向かって歩き出す。

 展示ホールから廊下に入る手前で、恐る恐るといった調子で千影が質問を始める。

「あの、木南さんは今乙骨先生って言ってなかった?」

「千影くんは想伝蜃奇録知ってるでしょ? その乙骨先生が来るんだよ★」

「……乙骨先生って、『あの』乙骨先生ですか?」

 何故か丁寧語である。

「その乙骨先生だよ★」

「都条例で加齢が禁止された、生きるアイドル伝説と呼ばれている、あの乙骨先生……?」

 うんうんと頷く玲南と虎野に、千影は思わず叫んでいた。


「あんな妖怪みたいな人、本当に実在するんですか!」


『全部聞こえているぞ! 誰が妖怪だって!?』

 すぐ近くから聞こえた妖怪めいた声に千影がすくみ上がる。展示ホール正面にある(千影達の左隣)テレビの電源がONになっていた。

 真っ黒な画面にアップで映ったのは、想伝蜃奇録作中で玲南達フォーサーの訓練をしている、乙骨先生と呼ばれる教師だった。その本名は乙骨 春日(おつぼね かすが)という。

 小柄な体格と、それに似合わない見事なアフロの髪型。そして古代王国のミイラのような顔つき。誰がどう見ても老女なのだが、年齢は関ヶ原の戦いの頃からようじょ(自己申告)というロソババア。それが乙骨先生だ。自称する年齢以外ロソの要素が見当たらない、という点が本来のロソババアと異なるところだが……

『んで、虎野さん。そこにいる子がパラノーマルに呪われてしまった子かい?』

「はい、呪いを解くために、是非とも乙骨先生のお力をお借りしたいのです」

『わかった。それでは制御室に来なさい』


 それだけを告げると、テレビの電源がOFFになった。

To Be Continued>

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