第二十一話 有東木千影はウマシカみたいな夢を見るか?
■その21
虎野に案内され、玲南と一緒に9階建てのプラント棟の3階にある想力炉の運転制御室にやって来た千影は。
既にズタボロフラフラで、足取りもおぼつかない有様だった。
「有東木君、大丈夫かい?」
「千影くんちょっと体力なさすぎじゃない?」
「やかましいわ! 体力ある、ないの話じゃないだろ!」
「ちょっとばかり、ウマシカみたいなものに追いかけられただけじゃない★」
「プラント棟並に巨大なパラノーマルに追いまわされたら、こうなるに決まってるだろーッ!!」
管理棟から出てきた千影達を、はるか上空から見下ろすつぶらな瞳。ビルをも一飲みにしそうな大きな口を開けたまんまる巨体のウマシカみたいなものが千影達を執拗に追いかけ回してきたのだ。最初千影はハリセンで引っ叩いて追い払おうとしたが、あまりの巨体にまるで太刀打ちできず下敷きにされかけ、ウマシカみたいなものがプラント棟に勢いよく噛みついて身動きが取れなくなるまで逃げ回る羽目になった。涼しい顔で追撃をかわしていた玲南や虎野と違って、それまで平穏な日常を送っていた千影は飛び跳ねたり全力疾走しながら方向転換するといった慣れない動きでスタミナが保たなかった。
「とにかく一刻も早く問題を解決しないとね。玲南ちゃんも有東木君も気をつけていこう」
「まさか、ウマシカみたいなものまで出てくるなんて……」
「何しみじみ語ってるんだよ! っていうか、怪物がそこら中を手あたり次第に蹂躙していったのに、建物や車に人も機械も無傷ってどういう事だよ!」
「えー? そんなの簡単だよ★ ウマシカみたいなものが作った結界の中に、玲南さん達が引きずり込まれただけだもの」
「当然みたいに言うなぁー!! そもそも、何でウマシカに追いかけられなきゃいけないんだよ!!」
「だって千影くん、追いかけてきたウマシカみたいなものに、ウマシカって言っちゃったでしょ?」
「へ?」
「ウマシカってパラノーマルに言ったらもれなくヘイト買っちゃうよ。『ウマシカなんかと一緒にするな』って感じで★ パラノーマルにとって史上最大級の侮辱を意味する言葉なんだもの★」
「そんなの初耳だわっ! ってか、アレもウマシカじゃないのかよ!」
「有東木君、アレは『ウマシカみたいなもの』であって、あくまでもウマシカじゃないからね?」
「ウマシカ、みたいなもの?」
虎野の返答に目を丸くする千影を見て、玲南が補足する。
「つまり、『ウマシカみたいなもの』って名前のパラノーマルで、『ウマシカもどき』とはまた別種って事だよ★」
「紛らわしすぎるし、結局ウマシカって名前ついてるのかよ!」
嫌なあだ名をつけられたパラノーマルに、千影は本気で同情してしまった。正直すまない事をしたと思うが、それ以上に。
「虎野さん、1つ質問いいですか?」
「何かな」
「ウマシカって本当にどんな生き物なんですか?」
「自分も見た事ないからわからないな」
結局、ウマシカの謎が解明されるどころか、更に深まるだけだった。
どんな生き物かはよくわからないけれど、特徴のある口を持っているんだろう。
多分。きっと。
To Be Continued>
とりあえず書き上がったところまでアップしました。




