第二十話 ウマシカは実在した!?
木南に助けられ、ようやく忍者を振り切り戻ってきた千影に、さらなる悪夢の宣告が襲いかかる。
「あと、唐突に草食動物の気分を味わいたくなって、そこら中の雑草をお腹いっぱい食べたくなったり★」
■その20
「……玲南さん、アンタ、ワザと言ってるのか?」
千影はズタボロ状態で玲南に詰め寄る。この上、内臓や消化器系にダメージを受けたらたまらない!
「え? これは全て確かな話だよ★」
「さっき間違いがありませんでしたっけ?」
「玲南さんのお話にケチをつけるとっても悪い子の千影くん★ 何でセイタカアワダチソウ持ってるのかな?」
「え、走り回ってお腹が空いたから……」
え、何それ。雑草を手にしてるのはお腹が空いたから? どういう事だそれは。
自分で言っててわからなくなった千影は自分の手を見た。そして玲南に尋ねる。
「……何でセイタカアワダチソウ持ってるんだろ?」
「自分で採ってきたんでしょ?」
「それじゃ、忍者から逃げ回ってる間に採ったのか? でも、どこで」
ますます困惑する千影。覚えてる限りでは、草を摘んでる暇はなかったはずだ。
「……うーとーぎーくーん?」
いつ過労死してもおかしくない、疫病神に魅入られた勤務医がフラフラした足取りで千影に近づいて、その両肩をガシッと掴んだ。
「……有東木くんがフォースに覚醒したきっかけも、神話級パラノーマルに呪われた理由もわからないけれど、その呪いの対処はできる。とりあえず、キミはもう想伝蜃奇録に出てくるフォーサー。おっけい?」
「え……でも」
「ちなみに、富嶽第一想発敷地内及び近辺には、セイタカアワダチソウが生えている場所はない。だからキミが短時間でセイダカアワダチソウを摘んでくるのは物理的に不可能。認めてくれないと話が始まらないし、もう準備始めないとこっちの身がもたないんだ……だから、お願いだから受け入れて、おっけい?」
「あ、は、はいいい」
いつ過労死してもおかしくない、疫病神に魅入られた勤務医に淀んだ目で迫られ、千影は首を縦に振るしかなかった。認めたくない話だが、玲南に指摘されなければ、無意識のうちに雑草を食べていたかもしれなかった。ここで対処できるならそれに乗っかった方がいい。
それに、これ以上拒否していたら木南がそのうち本当に倒れてしまいそうだ。
「あの、対処ができるって、本当に?」
念押しで千影が木南と玲南に質問する。
「できるよ。そのために、異世界在住の玲南ちゃんを呼んだんだ。ちょっと異常現象の発生頻度が多すぎるから、できるだけ早く対処ができるようにしよう……」
「はいはーい★ この玲南さんにおまかせっ★」
玲南が明るい調子で名乗りを上げる。千影を安心させようとしての振る舞いなのだろうが……
「……ウマシカみたいな、あんなヤバい奴にも出会わないで済む?」
「ウマシカもどき、だね★」
「もどき?」
玲南がすかさず訂正してきた。名前が間違っていたようだけど、そんなに重要なのか?
「そうだよ、アレはウマシカにそっくりな、ウマシカもどきっていうパラノーマルだよ。ウマシカはパラノーマルじゃなくって普通の動物だもの★」
「ちょっと待て。という事は、アレにそっくりな動物が実在するのかよ!」
「えー? ウマシカは富嶽第一想発の世界にいるんでしょ? もしかしたら動物園でしか会えないのかな? それなら、一件落着したら千影くんも一緒に見に行こうぜ★」
「知らねえよ、あんな生き物! って木南さん、あんな生き物本当にいるんですか!」
「まあ、世界は広いから、どこかにいるかもね」
「返事になってねえよ! あんな厄介な生き物が居てたまるか!」
木南は目を逸らして口笛を吹いている暇があるなら、自分達の世界への誤解はちゃんと払拭してほしい!
「はっはっは、有東木くんは何を言ってるんだい? ウマシカはウマシカもどきよりも遥かに厄介なのに……」
!?
「何だって? 今何て言った!」
「で、話を戻すとだ」
「戻すな-!」
富嶽第一想発は民鉄の線路をまたぐように建設された大規模製紙工場の跡地に建設された発電所で、その施設は大きく4つに分けられる。
1つ目はトラックや貨物列車で運ばれてくる萌えるゴミを計量し、萌えるゴミの在庫管理や再生紙などの紙製品の出荷管理、その他想力発電所の全般を管理する『管理棟』。
2つ目は萌えるゴミを受け入れるプラットホームと、萌えるゴミを分類し保管する『貯留棟』。
3つ目は萌えるゴミから想力エネルギーを精製する装置や、抽出された想力エネルギーで発電する『プラント棟』。エネルギーを抽出し終えたポスターや雑誌、書籍類から作られた再生紙を加工する工場も併設されている。
最後の4つ目は、ここの工場で作られた紙製品を保管・出荷する『倉庫棟』となっている。
千影と玲南は、これから迎えに来る虎野と一緒に想発内で一番大きくて背の高い建物であるプラント棟B棟に向かう。
プラント棟には1号想力炉と2号想力炉があるA棟と、3号想力炉と4号想力炉があるB棟という、まるで鏡に写したように左右対称な建物が2つ並んでいる。現在稼働している2号炉と、夏場の電力需要次第で稼働する1号炉があるA棟は活気にあふれているが、万が一の予備として待機している4号炉と設備点検で休炉中の3号炉があるB棟は、たまに1号炉の代わりに4号炉を稼働させたりもするが、3号炉の工事業者以外は人の出入りもなくひっそりと静まり返っている。
人気のないB棟でこれから何をするのか千影が木南に質問したところ、神話級パラノーマルとの因縁を断ち切る準備に想力発電の装置を一時的に使用する、と返事された。
To Be Continued>




