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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第三章 Crazy Gonna Crazy
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第十六話 パン焼き器は美少女戦士の夢を見るか?(後編)

2021年7/31 修正完了

■その16



 クリームパン(ヘンタイオヤジ)の美味しさが、早くもパン焼き器の中で大爆発する(留萌曰く)。

『このような! このような横暴が許されていいのですか! 人権侵害で訴えますよーッ!』

「パンには人権はありませんのさ」

 ぴしゃりと言い放つ留萌。あのヘンタイオヤジそっくりな姿形のパン生地が、どうして美味しいパンになるなんて発想できるのか。

 がんがんがん! ぼんぼばぼん! クリームパンの横暴にパン焼き器が健気に耐えている。中ではクリームパンが焼き上がる音も聞こえてくる。

『早くここから私を出しなさい! あなたの作ったクリームパンがパン焼き器の中で泣いてますぞーッ!!』

「パン焼き器に暴力を振るうような悪い子はうちの子じゃありませんのさ!」

 いやヘンタイオヤジ(クリームパン)見てよだれタプタプ状態だったの誰? と千影がツッコむ前に事態が動く。

『アイキャンストップマイラブフォユ―!!』

 空高く飛翔するパン焼き器。まるで身体から羽が生えたようにはばたく……いや、実際にはパン焼き器の下から生えた突起物で跳躍したのだ。最初無数の毛が生えた突起物を羽と見間違えた千影だが、ダイコンめいた突起物に愛製造機(ラブマシーン)のスネ毛びっしりな足を思い出しひっくり返る。二度見した事を輪廻転生の彼方まで後悔しそうな、それはそれはおぞましい光景だった。

「な……何でパン焼き機に足が生えて……ちょ、スネ毛に三段腹そしてムダ毛まで再現されて……」

「ラブマシーンそのものだね★」

 宙を華麗に舞うパン焼き器の姿は、玲南の指摘通りまさにヘンタイオヤジそのものだった。バレエレオタードを身に纏い、三段腹をたっぷんたっぷん揺らす姿がパン焼き機に重なって見える。

 激しい眩暈と吐き気に襲われる千影の隣で、玲南や榛名、零比都は死んだ魚のような目で見上げる中、傍陽は信じられないものを見たと言わんばかりに大興奮する。

「こ、これは! 寄生したカマキリを水辺に誘導するハリガネムシと同じですよ! 『宇宙的混沌を賛美するクリームパン(ラブマシーン)』が、パン焼き機を乗っ取り意のままに操っているのです!! 酵母菌の生存本能恐るべしです!」

「だからクリームパンを寄生虫呼ばわりするのやめるのぜ傍陽! というかパン焼き器をヘンタイオヤジに変身させて逃げ回るクリームパンってどんなクリームパンだよ!」

「だから今、パン焼き器で焼かれているクリームパンがそれですよ。榛名ちゃんの目は節穴ですか!」

「アッハイ」

 実も蓋もなく傍陽に即答され、榛名はそれ以上何も言えなくなった。そもそもパン焼き器に入ってるのは本当にクリームパンなのか? とか、あのヘンタイオヤジって本当にパン焼き器なのか? 諸々考えるだけ無駄な気がしたのだ。

「あ、ラブマシーン捕まったよ」

 零比都の言う通り、愛製造機の飛躍もここまでだった。とし子に宇宙など行かせはしないと留萌に影縫いで動きを止められ、パン焼き器は留萌の影にあっけなく捕縛された。クリームパンに魂を乗っ取られた愛製造機(パン焼き器)は縛られた椅子ごと飛び跳ねて何とか逃げ出そうとするが、直ちに留萌の影に捕まえられて『大人しくおしっ!』とばかりに鞭を振るわれる。

『暴力反対! 暴力反対!!』

「この者、パンを焼く神聖なお仕事をサボって白鳥の湖ごっこをしていた罪により、今から市中引き回しの上、王のピラミッドに納められるクリームパン1000年分を焼く強制労働に従事させられるのです!」

 いや亀甲縛りされた中年オヤジ(バレエレオタード装着)の市中引き回しを眼福と思うような趣味、千影達は持ち合わせておりませんが。

『嫌ですぞーッ!! 王の墓に埋葬されて遠い未来、クリームパンが炭化状態で発掘されるオチは嫌ですぞーッ!?』

「パン焼き器よ、キミには王様が来世で食べるパンを焼く栄誉を与えるのだ! さぁ、早くパンを焼くのさ! あと1500年分!!」

『ノルマが! 増えてますぞーッ!?』


 ま ず 王 様 へ の 不 敬 で 処 刑 さ れ る 事 を 危 惧 し ろ よ 。


「……玲南、あのヘンタイオヤジってパン焼き器なんだよな」

「何を今更★ 見てわからないのかな?」

「……アレがパン焼き器だとわからないから聞いたんですけど!」

 しかも手足ばたつかせる程パンを焼くの嫌がっているし! それ以前にパン焼き器に手足が生えて醜いはくちょうの湖(バレエの題名)を踊り出した現実を疑ってはいけないのですか!

『パン焼き器が、どうしてパンを焼かなくてはいけないのですかーッ!?』

「「「「「パン焼き器だからだろ」」」」」

『私だってたまにはお餅を焼いてみたいですぞーッ!!』

「ほうほう? パン焼き器がお餅を焼きたいと申すか? それでは、このパン切り包丁もたまに肉を切ってみたいって言うか、試してみるのさ?」

 据わった目でパン切り包丁を取り出した留萌がマジで怖い! 包丁を研ぐのに用意した器具のおかげで怪しさ激増だ!

『ひぃぃぃっ!? 私だって、玲南ちゃんのようにお餅を焼いてみたいんですぞーッ!?』

「え? 私?」

『そうですぞ! 餅を焼く、すなわちヤキモチです! 千影くんと仲のいい留萌きゅんを見てふがふがふがふが!?』

 突然に話を振られてきょとんとした玲南が、椅子に縛られたヘンタイオヤジの口に丸いお餅を容赦なく押し込んで黙らせた。

「そっか★ そんなにお餅が欲しいのかい? その口に、その口にぃ!!」

「玲南ちゃん!? そんなにお餅食べさせたら喉に詰まらせちゃうよ!」

「大丈夫だよ零比都ちゃん★ お餅は踊り食いするのが一番美味しいから★」

「何言ってるの玲南ちゃん! 今クリームパン焼いてる最中だよ! お餅とパンが混じったらどうするのさ!」

「いや留萌も問題そこじゃないから! つーかお餅の踊り食いって何だよ!」

「文字通りの踊り食いだよ千影くん★ このお餅はさっき新牢神父さん自ら杵と臼で突いた特別製のお餅だから、とってもイキがいいよ★」

「え?」

 玲南の傍にあるお皿に山積みされた丸いお餅が、新牢神父の作ったお餅? 何か嫌な予感が……


『ボエボエボエボエ……』

 千影の嫌な予感が的中した! 表面に萌え人面土器そっくりな顔が描かれた丸いお餅達がお皿からぽぽぽぽーんと飛び出してヘンタイオヤジに殺到する。アレは餅ではなくて、白くて餅と同じ大きさをした萌え人面土器では? と千影が思う間もなく、餅達は顎が外れたように大きく開けられたヘンタイオヤジの口から、食道を通り内臓へ……


 直後、ヘンタイオヤジの身体から発した眩い光が視界を埋め尽くし、轟音と爆風が千影達の横を通過する。光が収まった直後、大暴れしたヘンタイオヤジも、新牢神父が作ったイキのいいお餅の姿もどこにもなく、


『ピーッ』


 ヘンタイオヤジが亀甲縛りされた椅子の上で、何事もなかったように鎮座するパン焼き器が、ちょうど今14個のクリームパンを焼き上げた。



「自分達を焼こうとしたパン焼き器を乗っ取ったのはよい着眼点でしたが、結局パン焼き器の外に出るよりも自己顕示欲を満たす事を優先してしまったのが敗因ですねえ。まあ、私としてはモームス理論の限界をこの目で見られて、眼福眼福……」

「だから、モームス理論って何なんだよ!」

「ってか傍陽、お前ヘンタイオヤジの痴態を眼福とか言ってないか!? 神経疑われる発言やめるのぜ!」

 訳知り顔で語る傍陽に、千影と榛名がツッコんだ。


To Be continued>

職場崩壊の危機。

まあ、自分は辞めてしまうんですけれど。


★登場人物紹介

■実体化した留萌の影(通称・影さん)

●留萌のフォース『Fictional Moon』で実体化した留萌の影。昔から何かと厄介ごとに巻き込まれる留萌を陰から守ってきた存在で、留萌にそっくり。

●実体化する時は留萌の影が不自然に長く伸びて、影が映る壁からひょいと現れる。完全な真っ暗闇で影ができない状況や、留萌の周囲5mに壁や障害物がない状況では影さんを具現化できない(暗黒の中ではFictional Moonが全く動作しなくなる)

●身長50センチから5メートルまでで可変。ただし本来の身長は留萌と同じ164センチで体格も同じ。状況によって鎧やパワードスーツを身に纏った巨体となる。サイズに合わせて重量も増加するので最大サイズにすると重さで床が抜ける場合もある。影なので体色は漆黒で、表情の変化などは一切伺えない。

●千影や玲南達からは「影さん」と呼ばれている。頭を撫でられるとテレるらしい。

●戦闘目的でなければ数時間単位で実体化できるが、攻撃的な能力を使用したり、影さんを巨大化させると留萌の消耗が激しくなる。

●きわめて身軽で俊敏。巨大化した状態で何メートルも跳躍したり、落下する千影を空中で抱きとめて安全に着地するなどずば抜けた身体能力を持つ。

●言葉を話さず表情も読み取れない。留萌の傍で佇むだけなので自我があるように見えないが、クリームパンを美味しそうに食べる留萌を物欲しそうにじっと見ていたと思いきや、クリームパンを差し出されると慌てて遠慮したり、分けてもらったクリームパンを恐る恐る口にして夢中になって食べてしまうなど、実は意外に感情が豊からしい。

●パンを食べる時は「いただきます」、食べ終わったら「ごちそうさまでした」という仕草をし、自分を知ってる人に会うとお辞儀をするなど、お行儀の良い振る舞いが見える。

●クリームパンについては超欲張りな留萌だが、影さんだけは例外らしく、仲良くパンを分け合って食べているようだ。なお、影さんがパンを食べる時は顔に大きな口が現れる。

●クリームパンだけでなく、あんパンやジャムパン、カレーパンやメロンパン、のっぽパンといった菓子パン全般が大好きらしい。

●小さい頃から留萌と一緒だった千影や裏音の事を良く知っている。本人達も忘れてしまった過去の出来事まで覚えている。

●戦闘能力は攻撃特化型の千影に比べると低いが、捕縛術や召喚術などを幅広く使えるため汎用性は非常に高い。扱いが非常に難しい能力だが、留萌は難なく使いこなしている。

●フォース『Fictional Moon』

影を操り実体化させる能力。対象の影を地面に縫い付けて動きを封じる「影縫い」や、対象の影を攻撃してダメージを与える「影殺し」、留萌の手が作った影の形で色々なモンスターを召喚する「影絵」などを使用できる。影ができない環境下では当然能力は使えなくなる。

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