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二十二話

 

「きゃっ!」


「ミオンっ!」


「はっ!」


 再び、ヴァンテーヌさんが高速移動をし、主人のことを守りに入る。

 ミオンに攻撃が当たる寸前、氷の壁が主人を護った。


「ふん、だがこれはどうかな?」


 クジュスは続けてからを繰り出す。だがミオンに対してではなく、なんとソファを僕の方まで蹴飛ばしてきた!


「うぉっ!?」


 僕は突然の攻撃に対し、回避できずに思わず身構えてしまう。


「レッジ様!」


「ほッ!」


 しかし、更に拳をヴァンテーヌさんに突き出した。


「くっ」


「ぐあっ!」


 ソファはそのまま僕に直撃し、その勢いで壁まで吹き飛ばされてしまった。


「くっ……」


 冒険者時代には何度も怪我をしたものだが、これはなかなか痛い。何箇所か骨が折れているかもしれない。


「レッジさん!」


 アナステが駆け寄り、神能で傷を癒そうとしてくれる、が。


「ダメダメ、君はボクのもとにこないと。そんな無能の相手しても、何もいいことなんでないよ? なんせ、ヒモなんだか。あははははっ!」


 ロイムがそれを遮り、腕を引っ張り拘束してしまった。


「あ、アナステっ!」


 くっ、体が言うことをきかない!


「ほらほらほら、どうしたァ!」


 クジュスの激しい攻撃に防戦一方なヴァンテーヌさん。この前と違い、狭い部屋のため人が密集しており思ったように動けないようだ。


「ミオンさま、ここは一旦引きましょう!」


「何言ってるの、私の屋敷なのよ! それにいまこの部屋を明け渡してしまえば、使用人たちがどんな目にあうか……私にも攻撃手段があれば……」


 それは僕も同じだ。何か、攻撃方法が一つでもあれば……


「そろそろお遊びも終わりにしようかな?」




「・・・お前ら・・・」




 と、ロイムが言った瞬間、サシャが呟くのが聞こえた。


「サシャ?」




「・・・お前ら……ふざけるなあああああ!!」




『!?』


 なっ、今のサシャの声なのか?

 叫ぶところなんて、出会ってから一度も見たところがないぞ。

 他のみんなも一様に驚いて固まってしまっている。


「わ、わたしのレッジに何をするのっ、お前らのことなんて嫌いだ! やああああっ!」


「「ごああああっ!?」」


 サシャはそのまま、神能を使い炎をライムとクジュスに向け放つ。

 今度は撃ち落とすことができないほどの速度で飛んで行ったので、2人のアソコに直撃してしまった。


「う、うぐぁ」


「ヒョゲエエエ」


「うおっ」


 熱気がこちらまでやってくる。

 魔力で作られた自然現象は、認識している対象以外に危害を及ばすことは少ない。が、魔法の残滓がこちらまで迸るのだ。


「はあ、はあ・・はあ・・・あれ・・・」


 サシャは、深呼吸をした後、怒り顔からキョトンとした表情になる。


「さ、サシャ?」


  アナステが恐る恐る声を上げる。


「・・・てへっ?・・・」


 いつもの無表情で、首をかしげる。いや、かわいいけど今は違う気がするぞ。


「あ、あなた、凄いわねっ!!」


「ええ、今の魔法はなかなかのものでした。無意識かは知りませんが、魔法の攻撃範囲を抑え、速度は出す。高等技術と言えるでしょう」


 ミオンとヴァンテーヌさんが褒める。その目の前では、クジュスが泡を吹いて気絶している。


「は、はあ〜〜」


 アナステは腰が抜けたようで、へなへなと地べたに座り込んでしまった。


「サシャ、よくやったな」


 僕は痛む身体を我慢し、壁をずるように背中を使って立ち上がる。


「・・・いつの間にか、わたし、叫んでいた・・・」


 サシャは俺のそばにより、投げられたソファを起こし優しく座らせてくれた。


「いてて……おう、そうだな」


 本当にびっくりしたわ。


「・・・レッジが危ないめにあったのを見て、身体が勝手に動いた。一緒のパーティだった頃は、こんなことなかったのに・・・」


 確かに、冒険者時代もなんどもピンチな場面はあったが、サシャが私的な感情で僕をかばうなんてことは一度もなかった。

 リーダーの方針で、味方に気を取られて無駄な動きをするよりは、より敵を合理的に倒し、パーティの負担を最小限にする攻略法を採用していたからだ。


「だが、おかげで助かった。ありがとう、サシャ」


 そう言って、彼女の頭を撫でる。


「・・・あぅ・・・」


 と、また珍しく、顔を赤らめる。


「ふふふ、これはだんだん芽生えてきたような」


「何がですか?」


「勿論、恋心よ」


 ミオンがドヤ顔で言う。


「まあ、こいつらがあったのは下心だけだけどね」


 そして、足元で伸びているクジュスのことを睨みつけた。






 ★






 そして数時間後、2人の身柄を引き渡した後、改めて当事者が集合した。

 ちなみに怪我はアナステの神能できちんと直してもらいました。

 腕は確かなのは僕がわかっているからね。


「この度は、ご迷惑をおかけいたしました」


 そのアナステが頭を下げる。


「いいえ、この件に関しては、悪いのは完全にあの2人よ。アナステやサシャが何も謝る必要はないわ。むしろ、謝ったら駄目なのよ」


 2人はもう家臣だからと言うことで、ミオンは呼び捨てにしている。


 その通りだ。悪いのは女性に乱暴しようとしたクジュスとロイム。

 それをやっつけただけだ。


「は、はい」


「・・・疲れた・・・」


 サシャはおネムのようで、瞼が重くなっている。


「サシャも、お手柄だったわね。まさか、レッジが怪我をしたら途端に暴れ出すとは思わなかったわ、うふふ」


「・・・んー・・・」


 駄目だ、機能停止している。


「ありゃりゃ、"精神"を使いすぎたのかしら? ヴァンテーヌ、連れて行ってあげてくれる?」


 精神?


「承知いたしました」


「いや、僕が連れて行くよ。ヴァンテーヌさん、案内頼めますか?」


「別に構いませんが?」


「どうしたの、レッジ?」


「いや、助けて貰ったからな、少しは労ってやりたいだけだ」


「ふーん、ふーん。ふうーん。お優しいこと、さすが私のヒモね」


 なんだ、その含みのある"ふーん"は。僕は本当にただ感謝の気持ちを表したいだけだ。


「じゃあ、頼んだわ」


「おう」




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