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十一話

 

 屋敷には全部で62部屋ある。中央棟に21部屋、右棟に24部屋、左棟に17部屋である。右棟の部屋が多いのは、使用人用の部屋や物置小屋、その他雑務に使う部屋があるからで、左棟の部屋が少ないのは、3階に僕たちの区画があるからだ。


 中央棟の3階は執務エリアとなっており、執務室と秘書室がある。


 ミオン曰く、こういう建物は見栄が大事なので、使っていない部屋も多いという。が、それでも庶民の僕からしたら考えられない規模の建物だ。


「じゃあみんな、よろしく頼んだわよ」


『はっ!!』


 エントランスホールに再び使用人達が集められ、僕の紹介が行われていた。


「レッジは執務室についてきて。今後のことを相談したいから。あと、秘書長もね」


「畏まりました」


 この屋敷は使用人によって服装が違う。その中でも、他の人のものとは細部が異なる秘書の服を着た女性が、返答した。

 因みに秘書の服装は、紺のロングドレスに同じく紺のケープを羽織り、てっぺんが四角い羽付きの帽子をかぶっている。


 秘書長は、ドレスの前面とケープの背面に金糸で伯爵家の紋章をかたどった細い線が入れられている。あと目が悪いのか、眼鏡もかけている。


「じゃあ、解散。取り敢えず一ヶ月の間だからね」


 使用人達は礼を摂り、それぞれの持ち場へと散らばった。

 僕たち3人は、3階の執務室へと向かう。


「改めまして、レッジです。あの、色々とお世話になります」


 秘書長に挨拶をしておこうと思い、僕は軽く自己紹介をした。


「……ヴァンテーヌと申します。よろしくお願いします」


 しかし、秘書長ヴァンテーヌさんはそれだけいうと、前を向いてしまった。


「えっと……」


 なんか気に触るようなことでも言ったっけ?


「気にしないでね、彼女、こういう人なだけだから。あなたのことを歓迎しているはずよ。ね? ヴァンテーヌ」


「……一つよろしいですか?」


 と、丁度執務室の扉の前までやって来た瞬間、ヴァンテーヌさんが立ち止まった。


「な、なんでしょうか?」


「レッジ様は、ミオン様のことをお好きなのですか?」


「え?」


「ちょちょ、何聞いてんのよ!?」


 真顔でそんな質問をされた僕は、一瞬たじろぐ。だが、すぐに持ち直した。


「当たり前です。それこそ、子供の時からずーっと好きでしたよ? 今でも、世界で一番大切な人の一人です。あ、あとは両親なんですけどね」


 できるだけ笑顔を心がけながら、そう答える。


「……そうですか、失礼いたしました」


 ヴァンテーヌさんはぺこりとお辞儀をし、執務室のドアを開けた。


「ごめんね、レッジ。あと、ありがとう。嬉しいわ」


 そう言いながら、ミオンは執務室へと足を踏み入れる。僕も続けてお邪魔した。


「それじゃあ、今後の話をするわね」


 執務室にある机の椅子に、なぜか僕が座り、その上にミオンが座る。

 そして自分のお腹に両腕を回させた。

 これは完全に抱っこですね。なんか締まらないなあ。

 机を挟んだ目の前に、ヴァンテーヌさんがメモを片手に立つ。ジト目で睨まれているような気がするんですけど……


「まず、私の身分からおさらいするわね。法衣貴族の伯爵位、トラペレッタ・ミオン。主に宮廷--あ、王城のことね--への御用聞きをしています。で、この人が私のソウルメイトとも言えるこの世で一番だいだいだーいすきな男性、レッジね。私のヒモよ」


 ミオンの口調でざっくり言われると、恥ずかしさも吹き飛ぶ。


「私は執務があるから、基本はこの部屋にいるか、外に出て商売をしているわ。本業は商人ですから」


 そりゃそうだな。いつも家に居ても、出来る商売に限りはあるだろう。責任者が自ら顔を見せることで、信頼を得ることができるのは商人に限った話ではない。


「で、余った時間は全部レッジのために使います。以上!!」


「え? 全部? ミオンのしたいことはないのか?」


 働いている時間以外は、ずっと僕のそばにいるってことになるけど。趣味とかないのかな?


「私の今一番したいことは、レッジとイチャイチャすることよ。だって、12年も離れ離れになっていたんだからっ……」


 彼女が反対を向いて、僕と顔を突き合わせる。女の子って、至る所が柔らかいんだな。


「僕も嬉しいよ」


「レッジ……」


「ミオン……」




「……コホン」




「「あっ」」


 危なく二人の世界に入り浸るところだった。

 再び抱っこの体勢に戻る。


「レッジは、基本は私とイチャラブして欲しいの。勿論、無理のない範囲でいいわ。そもそも私が一方的に愛情を注ぎたいから、ヒモになってもらうんだし」


「いや、僕もミオンともっと恋人らしいことがしたい。お世話になる身分で申し訳ないとは思うけど」


「ううん、なんでも言ってね? 欲しいものがあったら、本当になーんでも買ってあげるから」


「ありがとう」


 当面はゆったりしたいから、本でも買ってもらおうかな?

 それくらいなら、いいよね。


「ヴァンテーヌは、レッジが欲しいものがあったら、買ってあげること。請求書も私宛に回しておいてね」


「畏まりました」


 と言いつつも、秘書長はゴミを見る目をしている……気がするのは僕がこの状況に置かれて謙っているだけなのか?


 因みに、最初にこの屋敷に来た時、僕のことを睨みつけていたように見えたのは、この人だ。ほら、目が悪いだけかもしれないし。


「レッジも、困ったことがあったら、執事長のステイヤンか彼女に相談してね。この二人が、伯爵家使用人を統率することになってるから」


「わかった。色々とご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」


「ミオン様の命令とあらば、いかようにも」


 うーん、やっぱりなんか歓迎されていない気がするな……


「じゃあ、私とレッジはイチャラブしてくるから、あとはよろしく」


「仰せのままに」


 ということで解散した僕たちは、ヴァンテーヌさんを残して左棟の3階へと向かった。

 ミオンの希望でお姫様抱っこをした。いろんなところがプニプニしてて、いつもよりハッスルしてしまいました。




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