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十話

 

 屋敷はまさに豪華絢爛、玄関入ってすぐには大きなシャンデリアが下げられたエントランスホール。ホールの奥中央には二階へ続く階段があり、踊り場から左右両翼にせり出している。


 見えるだけでも扉が一階二階それぞれ左右4つずつある。

 この奥にもまだまだあると言うのだから、全体はいったいどれほどの広さになるのやら……


「ほら、ぼっと突っ立ってないで、行くわよ?」


「ああ……すごいなぁ」


 首が痛くなるほど高い天井には、なんと宗教画らしき絵が描かれていた。教会の天井みたいだ。


 ミオンにエスコートしてもらって着いた先は、3階。つまりは最上階だ。

 屋敷は凹の形をしており、それぞれ左棟、中央棟、右棟となっている。連れていかれたのは、左棟の中程にある部屋だ。


 と言うか、左棟3階には、扉がここにしかなかった。


「この左棟の3階全て、レッジと私の部屋。好きに使っていいからね?」


「えっ?」


「ほんとだよ?」


「えっえっ?」


 ちょっと何言ってるかわからない。頭が追いつかないぞ。


「とにかく、入ってよ」


「おう……」


 ミオンに背中を押されるがままに、扉をくぐり抜ける。


「うわあ」


 部屋に入ってすぐに、ソファと机、さらに暖炉が目に入った。カーペットが敷かれ、大人のリビングルームといった雰囲気だ。


「ここは談話室になっているの。まあ、お客さんが来た時とか、私と軽めのイチャラブしたいときはここを使えばいいわ」


 お客さんはともかく、ミオンとこの部屋でイチャラブか……ありだな、うん。


「右の扉は色々な部屋に。左の扉はそれぞれプライベートルームになってるわ」


 壁の右端には扉が4枚あり、左端には2枚ある。


「左の壁にある、右の扉がレッジの。左の扉が私の部屋になるから」


「オッケー、覚えておくよ」


「先に、右の共用スペースから見て行こっか」


 ミオンはまるで、新婚の夫婦が住む家を探すみたいにウキウキとした様子だ。僕も、興奮しているのが丸わかりだろうな、思った以上の屋敷のすごさに期待が隠しきれない。


 右端の扉は、ダイニング兼キッチンだ。


「レッジは料理できるんだよね」


「そんなことも知ってるんだな……まあ、冒険者をやってるとな。1日じゃ終わらないクエストもあるから、自炊はできないと。食材はどうすればいいんだ?」


「ヒモなんだから、もちろん私が用意するわ。なんでも買ってあげるわよ、欲しいものがあったら食材に限らず遠慮せずに言ってね?」


「そうか、そういうことになるのか」


 ヒモになるってことは、ミオンになんでも頼りきりになるってことなんだよな……


「あ、言うの忘れてたわ」


「なにを?」


 キッチンを出たところで、彼女はそう切り出した。


「ヒモになってもらうけど、代わりに1日1回は、イチャラブして欲しいの。前も言ったけど、私の望みはレッジとラブラブカップルをすることなんだからね? 私に甘えて欲しいけど、私も甘えたい時があるの。わかるわよね?」


「えーっと、それは」


「そういうことよ……あとでベッドも確認しましょうね、レ・ッ・ジ」


「……はい」


 僕たちは恋人だ。既にそういう関係である。

 生活に関することはなんでも面倒見てあげるから、代わりに惜しみない愛を返して欲しいってことか。


 まあヒモだからな。ただ養ってもらうだけじゃ乞食と変わらない。

 ヒモにはヒモの"仕事"もあるのだ。


「2番目の扉はお風呂よ」


 中に入ると、まず脱衣所があった。ここだけで10人は同時に入れそうだ。


「そしてこの奥が湯船になるわ」


「湯船もあるのか、見るのは初めてだな」


 湯船はたくさんの水を使い、またお湯を沸かす労力、その温度を維持する労力も必要になる。なので貴族が道楽で作るか、よっぽど大きな街に公衆浴場がある程度で、田舎に住む庶民が目にする機会はまずないのだ。


 浴槽は石で作られている。長方形に綺麗に切りそろえられており、大の大人が20人はゆうに入れるだろう。


「こんな広いところを、二人で?」


「そういうものよ。ま、レッジが女をはべらせるなら話は別だけど?」


 と、ミオンはまたあの挑発的な笑みを浮かべる。


「心配するな、僕の好きな女性はこの世でただ一人、ミオンだけだよ」


 唇に軽くキスをする。


「やんっ、レッジったら……」


 風呂を出て、再びリビングに戻る。


「3番目はトイレよ」


 と、軽く中を確認した。当たり前のように水洗トイレが置いてあってびっくりする。


「そして4番目が、私たちのコミュニケーションルーム」


「なんだそれは?」


「見たらわかるわ」


 扉を開けると、短い廊下があり、その奥にまた扉がある。


「じゃーん!」


 その扉を開くと、部屋の中央に大きなベッドが一つ、置かれていた。


 しかも電気がピンク色だ。


「あの、もしかしてコミュニケーションルームって……」


「別名愛の巣ね?」


 そういうことか……


 ミオンはベッドに座り込み、シナを作る。


「どう? 雰囲気出てるでしょ?」


「う、うん。とても色っぽいよ、ミオン」


 僕はいてもたってもいられず、1時間ほどイチャラブしてしまったのであった。





「ここがレッジのプライベートルームね」


 服装の乱れを直し、今度は左側にある部屋を見る。


「広すぎるだろ……」


 僕の部屋は、リビングルームを縦に半分に割って並べたような形をしていた。因みにミオンの部屋も同じ間取りらしい。


「まだ家具は少ないけど、言ってくれれば必要なものは揃えるわ」


「あ、ありがとう」


 だが、この部屋を埋めるくらいの欲しいものが全然思いつかない。


「奥はテラスになっていたら私の部屋とつながっているからね」


「そうなのか」


 言われた通り大きな窓を開けると、建物からせりだすように床が伸びていた。


「今日みたいな日は、ここで読書するのもいいかもね?」


「確かに、いい陽気だからな」


 そうして一通り観察したあと、またリビングルームへ戻る。


「どうかしら、気に入った?」


「いや、もう、十分すぎるよ。取り敢えず一ヶ月、お世話になります」


「いいえ、こちらこそ。あとは屋敷の全体を軽く案内するわね」


「うん、頼んだよ」




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