永遠の誓い
ガルシャを倒した俺は、少しだけ残っていた熾天使としての力を使い、何とか皆の元へ戻ることが出来た。
しかし地面に降りた瞬間、背中に生えていた翼が消失し、同時に俺を纏っていた光も消える。そしてそれらは光の残響となって空に溶けていった。同時に、脳内に声が響く。
『堕天使を倒すという使命は終わった。よってあなたに授けた力もここまでです』
「ああ······わかってる」
『これでもう、あなたに二度と会うことは無いでしょうね』
「そうだな······少しだけ寂しいかな」
『ですが、私はいつまでもあなたを見守っています。人生を謳歌し、天寿を全うした後、また会えるといいですね』
「ああ······イリス様も、元気でな」
『はい。お元気で』
そう告げてイリス様の温もりが完全に消える。少しの喪失感を味わいながら、俺は空を見上げ、深くお辞儀をした。
涙を拭った俺は、意識の戻っていたソフィーナの元へ駆け寄った。そして彼女の顔を見て言う。
「おまたせ······全部、終わったよ」
「さすがは······アルマ様ですねっ」
そう言って彼女が満面の笑みを浮かべる。俺も笑みを返し、穏やかな雰囲気に包まれていると、遠くからラミア達が駆け寄ってきていた。そしてみんなに囲まれ、口々に言う。
「ご主人様······終わったんですか?」
「ああ······俺達の勝ちだ」
「いやったー!勝ったー!」
「良かった······ですっ······ぐすっ」
「俺もなんとか一命を取り留めましたよ······はは」
「もうロダン!まだ動いたらダメなのに······」
「でも······みんな······無事で······良かった」
皆が喜びを露わにし、感動に打ち震えている中、俺は彼等に声をかけ、王様達が待機しているところに戻った。
「よくやってくれた。勇者アルマとその一行よ」
「愛しい愛娘の婚約者だ。それくらいは当然さ!」
「あなたにラミアを任せて、本当に良かったです」
それぞれヴァレン王、レン王、エレナ女王から称賛の言葉を貰った。俺がむず痒い気持ちでいると、ロダンが話し出した。
「これで······大戦は俺達の勝ち······なんですかね?」
「奴らの大将は倒したが······如何せん犠牲が多すぎた」
「兵士も、冒険者も、ほとんど死んでしまいましからね······」
「とにかく、今はここから撤退し後処理をせねばいかんな」
「ですね。まずはそれを優先しましょう」
そう決めた俺達は早速準備を始めた。その辺に転がっている武器や防具を集めたり、死体の始末などをした。
死体を持って帰って遺族に説明するという案もあったが、腐敗が進行していることもあり、やむなくやめることになった。
そして三時間後。俺達は《緑の大地》を後にした。
その後は目まぐるしい勢いで色々なことが起きた。
戦争で家族を失った遺族や、王城の兵士の遺族などに対する謝罪や謝礼。持ち帰った武器や防具を商人達に無償で手渡すやり取りや、混乱に乗じて悪さを起こす輩の鎮圧などが起きた。
今回の大戦でほぼ全ての冒険者が死んでしまった為、ローランス王国、ウォルテラ王国、キャメルナ王国の冒険者ギルドを休止することにした。職を失ったギルド員には国が責任を持って保障を与えた。
また、冒険者ギルドの休止に伴い王国外の魔物が急増した。その度に俺達やロダン達が対応に当たり、何度も勢力を打ち倒している。時々超級魔法を使ったりもした。
自国の治安がなんとか戻ってきた三カ国は、数週間後に国王会議を行った。そこで、三カ国で互いに援助して助け合っていくことや、互いの交易ルートを確立してさらに交流を深めていこうというような事を話し合った。
そんな中俺は妖精達の住処へ行き、妖精王アリアに大戦が終わった事、なんとか生きて帰ってこれたことを伝えた。彼女は泣いて喜んでくれたが、同時に、もう一つの約束について問いかけてきた。そう、婚約の話だ。
正直苦笑いながらも、俺は訳ありで結婚は出来ないと、彼女に頭を下げて謝った。
アリアは頬に涙を浮かべていたが、最終的には許してくれた。ただし、定期的に会いに来て欲しいという約束をされた。そのくらいならしてあげようと思い、俺も承諾した。
そんなこんなで、激動の日々から数ヶ月後───。
俺達は魔族を倒した勇者一行として、ローランス王国王城の謁見の間で、王様達と対面していた。
三本投稿の二本目です。
次回最終回です。23時頃に投稿します。




