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自由気ままな異世界冒険譚  作者: 鈴野 白
最終章
66/75

勇者対魔王

 俺達が奴ら目がけて走っていると、向こうからは四人が駆け出して来る。そのうちの三人は魔眷属ヴァニタスだと分かるが、最後の一人は初めて見る。恐らく奴が魔王ガルシャだろう。


 そうして俺達は走るのを止め、数十mの距離をとって相対する。互いに武器を抜き臨戦態勢に入ると、初見の一人が急に喋り出した。



「ご機嫌よう。私が魔王ガルシャだ」



 そう言いながら奴が軽くお辞儀をする。残虐なイメージを持つ魔族の王とは思えない程、知的そうな感じだった。


 そんなことを考えながら対峙していると、両手に握った二刀の剣を地面に振り下ろした。地面が抉れ、途轍もない爆風が巻き起こる。グノがそれを操り、俺以外にぶつけて全員を遠くまで吹き飛ばす。


 それを追って魔眷属ヴァニタスの三人も、飛翔魔法で後を追う。あっという間に俺一人の状況にされる。



「悪いが······彼等の相手は魔眷属ヴァニタスにしてもらう」

「じゃあ······俺とお前は一騎打ちってことか?」

「理解が早くて助かる······不満か?」



 別に不満というわけではない。単騎で戦う方が気楽で戦いやすいくらいだ。だが······。



「随分と余裕だな?」

「というか私の趣味だ。たまにはこういう戦い方もありだとな」

「······自分が負けるって微塵も思ってないな」

「そりゃあ、伊達に魔王なんてしていないからな」



 そう言ってガルシャがその顔に薄く笑みを浮かべる。俺も苦笑いを返して、剣を構えて疾走した。奴も二刀の剣を構え、俺目がけて突進する。



「その余裕がいつまで続くかなっ!」

「それは、こちらのセリフだっ!」



 振り下ろしと振り上げが激突し、大地が鳴動する。そうして、魔王と勇者の戦いに火蓋が切って落とされた。







「悪いな。お前らの相手は俺らだ」

「いきなり戦力の分断とは······魔族らしいですね」

「それはどういう意味なのでしょうね······?」



 軽口を叩きながら、アルマ様と分断された私達は魔眷属ヴァニタスという魔族の幹部の三人と相対していた。


 ここからでも伝わってくる熱気と殺気に一瞬気圧されるが、直ぐに切り替え皆に小声で作戦を伝える。



「数の利を活かして戦いましょう。レオもロダンさんが保護魔法ライフバフをかけてもらいながら攻め込み、後衛組の私達でサポートしましょう」



 そう私が言うと、みんな一様に頷く。しかし、ロダンさんが疑問ありげに聞いてきた。



「相手の一人······あの大鎌を持っている奴には物理攻撃が通用しません。どうやって戦うんですか?」

「······レオとロダンさんはノアとグノを相手にしてください。残りの私達で奴と戦います」

「わかりました······お気を付けて!」

「そっちもね!」



 互いに激励をかけながら、保護魔法ライフバフをかけてもらったレオとロダンはノアとグノと、残りの後衛組五人でその男、ギルヴァンとの戦闘を開始した。



 二重の剣戟音が響き、攻撃魔法が飛び交った───。










「ハアアッ!」

「フッ!」



 ガルシャが二刀の剣を雨霰の如く振り攻撃してくる。俺は人間離れしているステータスをフルに使い、それを全て守り、弾き、受け流し、躱す。しかし息が途切れた様子もなく、奴も高速で攻撃剣を放ってくる。



幻撃連斬ヴァニッシュメント!」



 そう叫びながらガルシャが更に上がった速度で連撃を放ってくる。その名の通り、まるで消えているように見えるほど剣が速く振られる。しかし俺も対抗して攻撃剣を放つ。



剣魔融合エンチャント!」



 先程ノアと戦った時とは違い、コンマ数秒以下の時間で剣魔融合エンチャントを完了させ、迎撃する。



 振り下ろし、すくい上げ、横薙ぎ、連続攻撃。



 両手の剣で交互に斬撃を放ってくるが、剣魔融合エンチャントを施した妖精剣フェアリーソードで全て受け止める。



 三つの剣が邂逅する度に火花が舞い、甲高い衝突音が連続で響く。衝撃波を生み出して空気を切り裂き、地面を裂く。



 そして奴の最終撃と俺の剣が激突し、これまでで一番の衝撃が辺りを包む。突然の出来事に俺達は思わず吹き飛ばされる。少し離れた場所で互いに受身を取り、剣を構え直す。


 そうして相対しながらいると、ガルシャが呟いた。



「まさか······俺の幻撃連斬ヴァニッシュメントを全て跳ね返すとはな」

「でもさすがに多すぎだろ······三十連撃くらいか?」

「三十六連撃だ。普通なら反応すら出来んぞ」

「そんな変わんねえじゃねぇか!」


「それより、お前に対する認識を訂正せねばな······」

「なんだ?俺の事を強いって認めたのか?」

「お前はともかく、その魔法剣には感嘆させられた」

「魔法剣じゃない。剣魔融合エンチャントだ。二度と間違えんな」

「ほとんど同じだろう······」



 互いに武器を構えながらも、苦笑いが顔に浮かぶ。ある意味で似たもの同士なのかもしれない。そんなことを考える。



「その剣魔融合エンチャントに免じて、私も本気でやってやろう」

「なんだ。本気じゃなかったのか」

「ふふっ。それはお前も同じだろう?」

「······まあな」











 そう言いながら俺達は同時に地を蹴り、更なる加速と剣戟の世界へ身を委ねた───。

次話では七人と三人の方書きます(笑)

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