平和な一時
妖精族たちに挨拶を終えた後、《魔獣の森》を出て俺はローランス王国の冒険者ギルドにも寄ることにした。ロレナさんにも挨拶はしておきたいし、今どんな状況なのかの確認も兼ねて行けば好都合だと思ったのだ。
《瞬足》を発動し、俺は途轍もない速さで森を抜け、あっという間にローランス王国の検問所についた。身分証の提示を頼まれたが、Sランク冒険者の証を見せるとすぐに通してくれた。やっぱりなっておいて良かったと思ったものだ。
歩くこと数十分、俺はローランス王国冒険者ギルドに到着し、入口の門を開き中に入った。ギルド内は慌ただしい様子で、ギルド職員の人達が色々な書類整理に追われていたり、冒険者達もパーティーなどで固まり、大戦に参加する者はその時の立ち回りの話などをしていた。
俺は彼等のことは気にせず、同じく仕事に忙殺されているロレナさんの元へ向かった。途中で何人かが怪訝そうな目を向けてきたが、特に気にするようなこともしなかった。
「ロレナさん。お久しぶりです」
「なんですか······今忙し······って、アルマさん!?」
俺が突然目の前にいた事に驚いたのだろうか。ロレナさんがびっくりして大きい声を出す。すると、周りの冒険者達がひそひそと話す声が聞こえてくる。
「おい······アルマってあの······」
「ああ······最近Sランク冒険者になった奴だ」
「へえ······あんな小さいのになぁ······」
「なんでも、邪龍を倒したらしいぜ」
「なるほどな。だから殺龍剣士って呼ばれてるのか」
「Sランクは二つ名までかっこいいんだな」
そんな会話が耳に入ってくる。というか途中で聞こえてきた二つ名はなんだ。俺そんなふうに呼ばれてるのかよ。恥ずかしいから辞めてほしいものだ。いや本当に。
心の中で羞恥に悶えていると、ロレナさんが返事をしてくる。
「それでアルマさん、どういったご用件で?」
「あーなんだ······その、もうすぐ次元の狭間が開くだろ?」
「そうですね。魔族との大戦が近いんですよね」
「ああ。それに俺も参加するからさ、一応挨拶だけはしておこうと思って。······今生の別れになるかもしれないし」
「今生の······そんな!死ぬおつもりなのですか!?」
そう言ってロレナが勢いよく立ち上がってくる。少し気圧されるが、すぐに訂正を入れる。
「違う違う。死ぬつもりなんてないよ」
「だったらなぜそんなこと······」
「万が一の事もあるかもしれないだろ?それにロレナさんにはお世話になったしな」
「······そうですか······それは······ありがとうございます」
ロレナさんの頬が赤くなる。お互いに無言になり、どこか気まずい雰囲気が漂う。とりあえず俺は話題転換をしようと彼女に話しかけた。
「それで、ローランス王国もその連合軍に参加するのか?」
「勿論です。私は直接戦いはしませんが、ここにいる人達のバックアップ等をしたいと思っていますね」
「そっか。じゃあ、もしその機会があればよろしくな」
「はい!よろしくお願いします!」
そう言って彼女が満面の笑みを浮かべる。とりあえず機嫌が良くなってくれて良かったと思った。
「俺はそろそろお暇させてもらうよ。準備もあるしね」
「はい!頑張ってください!」
手を振りながら見送ってくれるロレナに軽く会釈をし、俺はローランス王国のギルドを後にした。そしてその一部始終を見ていた冒険者達は───。
「結局何しに来たんだ?あいつ」
「ロレナちゃんに唾付けとこうと思ったんじゃね?」
「なんだと!そんな汚らしい真似を!?」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ」
馬鹿丸出しで喋りあっていたのであった。
冒険者ギルドを後にし、そのまま特に寄り道もせずローランス国を出た俺は真っ先に実家に戻った。家を出てから数時間程度しか経っていなかったが、何か巻き込まれなかったかとか、結構心配された。何も無かったから良かったが。
そうしてその日の夜、俺達はいつもと同じように七人で食卓を囲っていた。皆が談笑している中、俺は切り出す。
「父さん、母さん。もうすぐ魔族が攻めてくることは知ってる?」
「ああ。次元の狭間が開くんだろ?」
「アルマ達も、戦うんですよね?」
「まあね。それで、その準備もあるから明日辺りにはここを出ようと思ってるんだ」
「······そうか」
そう言ってガルアが少し残念そうな顔をする。それを見て、俺もいたたまれない気持ちになる。そうしてその場に気まずい空気が漂っていると───。
「あなた。アルマ達はこの世界の為に頑張るのよ。だからこそ、笑顔で見送ってくれあげないと······ね?」
「······そうだな。きっとまた会えるしな······だろ?」
「もちろんさ。死ぬつもりなんて毛頭ないからな」
「私達も同じ気持ちです。また色々とお話しましょう」
「その後には私達の結婚式もあるからねー」
そうラミアが言うと、皆が笑い、温かい雰囲気に包まれる。そんなこんなでその日は今まで以上に触れ合い、沢山のことを話してとても楽しい一日になった。
そして次の日、俺達は二人に見送られ、出発するところだった。
「大丈夫か?忘れ物はないな?」
「ああ。大丈夫だ」
「誰一人欠けないで、必ず帰ってきてね」
「勿論だ。なあ、みんな」
俺がそう聞くと、皆が朗らかに返事を返してくる。それに満足したガルアとメーアは微笑を浮かべていた。
「それじゃ······そろそろ行くよ」
「ああ······行ってこい」
「頑張ってね」
「うん······行ってきます」
そうして俺達は実家を後にし、馬車に揺られながら、連合軍に合流するべくキャメルナ王国へと向かった───。
後半かなり急ぎ足になってしまいました...
読みにくかったりしたら申し訳ないですm(_ _)m




