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自由気ままな異世界冒険譚  作者: 鈴野 白
第四章 獣人族
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ガルシャの誓い

第4章ラストです。

 ヴェスター魔王国。その王城の謁見の間で、魔王ガルシャは頭を抱えて唸っていた。頭を振り回しすぎて少しの酔いを引き起こした。




魔眷属ヴァニタスが揃わない······」



 そう。魔王に仕える最強の戦士、魔眷属ヴァニタス。もうすぐに迫った大戦に備え、既に死んでしまったヴァーレイン以外の三人を謁見の間に呼び出したのだ。


 ちなみに魔眷属ヴァニタスにはそれぞれ実力相応の二つ名がついている。具体的には、



 魔人ベルアヴァーレイン

 雷帝ゲイヴォルグノア

 風帝ハザードグノ

 冥王ディースギルヴァン



 この四人だ。実力的にはヴァーレインが最弱。ノアとグノがほとんど互角で、ギルヴァンは頭一つ飛び抜けている。単純なステータスの面で言えば、魔王ガルシャにも届きうるほどの実力者だ。魔族ナンバー2は伊達ではない。


 そんな彼らを呼んだはいいが、如何せん揃わない。既にノアとグノは俺の前で控えているが、何故かギルヴァンが来ない。一体何してるんだあいつ。



「おいフィル。ギルヴァンはまだ来ないのか?」

「申し訳ありません陛下。何も連絡が無いのです」

「全く······どこに行ったんだ······」



 俺が再び頭を唸らせていると、控えていた二人の話し声が聞こえてきた。



「まーたあいつだけいないパターンかよ」

「まあまあ、そのうち来ますよ。気長に待ちましょう」

「逆になんでお前はそんなにのほほんとしてんだよ」

「人生、急がば回れって言うでしょう?」

「いや知らねぇよ」



 二人はいつものように、まるで漫才でもしてるかのような噛み合ってそうで噛み合っていない会話をしていた。


 しばらくすると、部屋の大扉が開かれ、一人の人物が入ってきた。四人目の魔眷属ヴァニタス、ギルヴァンだ。



「遅かったな、ギルヴァン。なにか理由でもあったのか?」

「······剣の手入れをしていた」

「お前なあ······まあいいや。とにかく、全員揃ったな」



 そう言って三人を見据える。ノア達も先程のおちゃらけムードから一転、真剣な顔つきになった。



「お前達を呼んだのは他でもない。残り十五日に迫った次元の狭間の開放、そして人界侵略作戦についてだ」

「「「はっ」」」

「それぞれの果たすべき役割は既に通達してあると思うが、今一度確認しておこう」



 そう言って俺はフィルに説明を促す。軽くお辞儀をし、彼女は確認事項を読み上げた。



「次元の狭間は、この王城の目の前に出現します。よって魔眷属ヴァニタスの御三方には、緊急時を除き二箇所の場所に分かれて戦ってもらいます」


「具体的には、ノア様とグノ様には攻撃部隊に参加して人間達と積極的に戦ってもらい、ギルヴァン様にはこの謁見の間で魔王ガルシャ様の護衛についてもらいます」


「ただ、ノア様とグノ様は、ガルシャ様やギルヴァン様に危険が迫れば、即座に加勢してもらうことになります」



 そう言い終えて、フィルの説明が終了する。俺は彼女にお礼を言い、魔眷属ヴァニタス達に再度向き直った。



「とまあ、こんな感じだ。一応聞きたいことはあるか?」

「では陛下。私から一つよろしいですか?」

「わかった。グノ」


「先程フィルさんは危険が迫った時、加勢しろと仰りましたが、恐らくその時我々は人界で戦っているでしょう。直ぐに駆けつけることは出来ないように思われますが?」

「なるほどな。確かに一理ある。しかし、それに関しては問題は無い。後でまとめて説明する」

「わかりました。進言、失礼しました」

「うむ」



 そうしてグノが下がる。しかし俺のぼかすような言い方に、ノアもギルヴァンも疑問そうな顔だ。



「それで本題なのだが、お前達にはこれを見てほしい」



 そう言って、俺は三つの真紅の指輪を彼等に投げ出す。



「ガルシャ様······これは?」

「その見た目通り真紅の指輪というものだ。その指輪についている水晶に特定の人物の血液を垂らすことで発動する。肝心の効果は、《その人物の半径5mの場所に一瞬で移動することが出来る》だ」

「なっ······」

「とんでもないですね······」

「······へぇ」


「ただし勘違いしないで欲しいのは、俺のところに飛ぶことは出来ても、逆は不可能ということだ」

「なるほど······しかしそれを差し引いても、十分に価値のある代物です。それを私達に与えてくださるのですか······」

「しかも三つもだもんなー」


「流石に俺もやりすぎではないかと思ったが、万全を期すために出し惜しみはしてられないのでな」

「確かにそうですね······これが最後のチャンス······」

「絶対に負けられない戦いだからな」

「······だな」



 三人が改めて気を引き締め直す。やはりこの三人は頼りになる。何処ぞの魔眷属ヴァニタスモドキとは大違いだ。


 どうでもいいことを考えていたが、俺はそれを意識から放り出し、彼らに激励の言葉をかける。



「ノア、グノ、ギルヴァン。······フィル。この戦い必ず勝つぞ。魔族の未来のために」

「はい。全力でお力添え致します」

「俺が全部ぶっ倒してやるぜ!」

「······言われなくとも」

「頑張りましょう!そして勝ちましょう!」



 フィルの勇ましい掛け声に皆が「おおっ!」と叫んだ。そしてそれぞれが十五日後の決戦に備え、準備をするべく謁見の間を後にしていった。




 そして俺一人だけになった部屋で玉座から立ち上がり、窓から差し込む月光に向かって俺は誓った。


 たとえこの身が朽ち果てようとも、最後の一瞬まで魔族の為に戦い抜くと。未来に希望を繋げると。










 静寂に包まれ月光に照らされる謁見の間で、俺はいつまでも誓いを胸に佇んでいた───。

これで第4章終了です!(まあ、まだありますが······)

次話では登場人物の説明ではなく、皆のステータスを

一度まとめて整理しておこうと思います。

その後、第5章に入っていきたいと思います。

これからも、よろしくお願いしますm(_ _)m

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