《人族最強》対《獣人族最強》
戦闘回です。ちょっと短めです
「アルマさん!俺と一発模擬戦しませんか?」
「模擬戦······?俺とロダンがか?」
「はい!」
ラオ事件の後、俺達はロダン達の希望で一緒に訓練をしていた。彼のパーティーメンバーのリルットとニタは後衛職だったので、女性陣で集まって訓練をしている。
俺とレオ、ロダンがローテーションで組手を行い、ちょうど皆休憩していた時にそう声をかけられた。
「うーん······人族の俺が良いのか······?」
「全然大丈夫ですよ!責任は俺が持ちますから!」
「いや責任とかあるのかよ」
そんなやり取りをしていると、ニタがこちらに来た。何だろうと思って目を向けると、ポツリと呟いた。
「······ロダンは獣人族最強。······戦っておいて損は無い」
「······え?そうなのか?」
「ああ······まあな。あんまり言いたくなかったんだけどな」
そう言ってへへっと笑う。その表情からはこの国最強の戦士とは想像出来ない。しかし、本当なら是非戦ってみたい。
そう思い、俺はリルットにも聞いてみる。すると、
「ロダンは間違いなく獣人族最強よ。私が保証するわ」
彼女もそう賛同した。よし、早速やろう。すぐやろう。
「ロダン!模擬戦しよう!」
「お、おお。······どした?」
「なんでもない!さあ!やろうぜ!」
「わ、わかった」
そんな俺達のやり取りを見ていたソフィーナ達は、
「アルマ様の目が戦闘狂のそれだ······」
「強い人を見つけるとすぐあんな感じになるんですよね······」
婚約者とは思えないほど言いたい放題であった───。
俺とロダンが妖精剣と細剣を構える。周囲の人々もただならぬ空気を察知して俺達に注目した。訓練場が瞬く間に静かになり、剣を構え相対する。
そしてその沈黙を破って、ロダンが高速で疾走した。
「タアッ!」
勢いを殺さず、細剣による連続刺突を放つ。俺はそれを妖精剣で全て受け止める。
キンッ!
訓練場に甲高い衝突音が響いたかと思えば、俺とロダンは同時に後方に跳躍し距離を取る。
間髪入れずに今度は俺が、ロダン目がけて突進する。
剣を肩の高さに構え、彼我の距離が零になった瞬間に振り下ろしを放つ。
それを細剣で受け止め、受け流す。
体制が崩れるが、その反動を利用して手を地につけ、回し蹴りを叩き込む。
超人的な反応速度でロダンが蹴りをかわし、俺の脚が彼の前髪を揺らした。
すぐさま体勢を立て直した俺は、再び剣戟に身を委ねた───。
その模擬戦は数十分も続いていた。二人の額には汗が浮かび、熱気が周囲を包み込む。
苦渋の表情を浮かべながらも、俺達は笑っていた。
そして、もう何度目か分からない鍔迫り合いの中、ロダンが呟いた。
「もう······十分だろう。次の一撃で終わりにしようぜ」
「······ああ。わかった」
そう言って俺達は鍔迫り合いの反動でバックステップし、距離を取る。互いの必殺剣を構え、最後の攻撃に挑む。
周囲もそれを感じ取り、さらに黙り込む。
永遠にも思われた静寂の中、俺達は必殺剣を放った。
「絶命斬!」
「光速剣!」
互いの剣から放たれた漆黒と光刃が衝突し、爆発を巻き起こす。砂が巻き散り、爆風が空気を轟かせる。
突然の襲撃に、その場にいたもの全てが目を眩ませた。
皆が目を開けると、後に残ったのは必殺剣を放ったまま硬直していた俺とロダンの姿だけであった。
「み······見事なもんだ······」
「そっちこそ······な」
互いにそう呟き、剣を離してその場にぶっ倒れた。
「アルマ様!」
「ご主人様!」
ソフィーナやラミアがこちらに駆け寄って来るのが見えたが、俺の意識はそこで途切れた───。
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