十層ボス戦
魔獣の洞窟。その名の通り様々なモンスターが跋扈しており、またその種類も膨大である。キャメルナ王国の冒険者達にとっては格好の狩場であった。
構造としては各階にそれぞれ存在するワープゾーンを見つけ、更に下の階層へ下っていくものだ。無駄にハイテクである。国王曰く「人口遺物」らしい。
そんな魔獣の洞窟の入口に、俺たちは立っていた。
「この五人で冒険するのは初めてだな」
「そうですね。ルゥとレオにとっては初陣ですね」
「俺とアルマ様が敵を倒すんだよな!」
「ああ。まあな」
「それを私達で援護するのですね」
「そうだよ。二人とも頑張ろうね〜」
「はい!」
「おう!」
ラミアの応援と二人の掛け声が空に響く。皆やる気十分だ。かく言う俺も新武器を試したくて仕方ない。武者震いを抑え、俺は皆に声をかける。
「よし!行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
こうして、俺達のダンジョン探索が始まった───。
ダンジョン探索を開始してから2時間後。現在階層は九層。このダンジョンは三十層構成なので攻略段階は約三割といったところだろう。かなりハイペースだが、パーティーメンバーが増え、武器も新調した上に皆確実にレベルアップしていたので当然であった。
そして今、十層に待ち構えるボス戦を前に、ダンジョン内の安全区域で休憩を取っていた。
「すごい順調ですね」
「ああ。まあ当然の結果だけどな」
「と言うと?」
「武器を全部新調して、人数も増えた。その上皆確実にレベルアップしてるからな。この程度じゃ負けないさ」
「そうだぜ!俺の剣があれば無敵だぜ!」
「お兄様の半分くらいだけどね。倒したの」
そんな感じで、ボス戦前とは思えないほんわかムードがその場に漂っていた。不思議とモンスター達が近寄って来るようなこともなく、ゆっくりと体力の回復に努めた。
ちなみに、今の俺達の装備はこんな感じだ。
アルマ
妖精剣
黒竜の軽鎧
黒竜兜
妖精王の指輪
ソフィーナ
氷炎杖
賢者のローブ
賢者のティアラ
賢者のイヤリング
ラミア
雷獣弓
兎の銀鎧
兎の銀冠
兎の銀輪
レオ
煌炎刃
炎の闘鎧
炎の闘兜
炎のリング
ルゥ
魔叡杖
蒼の静装
蒼の静冠
蒼のネックレス
この世界には武器にだけ特有の二つ名をつける風習がある。その理由で、俺達の武器には色々な名前がついているのだ。
こうして改めて見ると、全体的に装備が強すぎる。俺だけでなく、パーティー全員がチートレベルだ。
それに色合いが良い。俺が黒、ソフィーナが白、ラミアが銀、レオが赤、ルゥが青と見事に分かれていた。そういう意味でのバランスも大事だからな。多分。
「よし。そろそろボス部屋に乗り込むか」
「十分休めましたね。行きましょう」
「私も準備バッチリですよ〜!」
「ボス!ボス!俺が倒すー!」
「頑張りましょうね!お兄様!皆様!」
そう言って俺達はボス部屋の前に行き、全員で大扉を押して中に入った。さあ、開戦だ。
中は正方形のような形の部屋で、数十メートル離れた先に魔法陣が存在していた。前のように魔族が立っている訳ではなく、恐らくボスモンスター専用のものだろう。
しばらくすると魔法陣が光り、眩い輝きを放った。そして光に目が慣れてきた頃、目を開けて前を見ると、見るからに強そうなモンスターが現れていた。
魔獣の洞窟十層ボス《グリフォン・キマイラ》
ライオンに羽が生えたような相貌のそのモンスターが咆哮を上げる。その雄叫びを合図に、俺達も武器を構える。
「行くぞ!」
「おお!」
そして、後衛組三人が詠唱を開始したと同時に、俺とレオはモンスター目掛けて疾駆した。
「グリュァァァァ!」
奇怪な鳴き声と共にグリフォン・キマイラも突進する。
距離が一気に零になり、レオと同時に剣を振る。
グリフォンも右足を振り上げ、爪での攻撃を放つ。
キィィィン!
耳をつんざくような衝撃音が響く。瞬間、後方の魔力が膨れ上がったのを察知し、レオに目で合図を送る。
全く同じタイミングで左右に飛び退く。直後、雷と氷炎がグリフォンに襲いかかり、奴を襲う。
「グルゥァァァァ!」
悲鳴を上げるグリフォンに向かって再度、俺達は疾駆した。
「畳み掛けるぞ!」
「おおっ!」
その後もヒット&アウェイ+遠距離攻撃を繰り返し、着実にダメージを与えていた。戦闘開始から数十分後、グリフォンはほとんど瀕死寸前だった。そして最後の一撃、
「絶命斬!」
「焔剣!」
俺達の必殺剣が命中し、グリフォンを三つに切り裂く。体を保てなくなったグリフォンはその場に倒れ伏し、直後その体を魔石に変え消滅した。
「······終わったな!」
「やったあ!勝ったあ!」
そう言ってレオとハイタッチを交わす。すると他の三人もこちらに駆け寄ってきた。俺は彼女らともハイタッチをし、勝利を祝いあった。主の消えたボス部屋には、そんな俺たちの楽しそうな声が響いていた。
十層ボス《グリフォン・キマイラ》討伐───。
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