束の間の休息
次の日、俺達は日頃の息抜きも兼ねてキャメルナ城下町に来ていた。一応王様達に外出の許可を取ると、快く了承してくれた。その上全てのお店で使えるらしい、高そうな銀色のペンダントを貸してもらえた。
なんでもこれをお店で提示すれば、全額タダになるそうだ。経済的な面でチートアイテムだった。王様達にお礼を言い、今日一日に限って貸してもらっている。
そんなこんなで、俺達は久々の休みを楽しんでいた。
「アルマ様。次はどこに行きましょうか?」
「ご主人様〜。私あの洋服店が見たいです」
「ああっ!《山兎の串焼き》だぁー!」
「ちょ、ちょっと!レオ!待ちなさい!」
······楽しむと言うより振り回されていた。俺にずっとべったりなソフィーナとラミア。美味しそうな食べ物を見つけては駆け出していくレオ。それを追いかけるルゥ。自由奔放すぎて気が気じゃない。
それだけでなく人族二人、兎人族三人の集団だ。傍から見たらめちゃくちゃ目立っている。さっきから獣人族の人々の好奇心を孕んだ視線が向けられてくる。後、一部の男からの嫉妬と憎悪の視線も。
なかなかに混沌な状況ではあったが、俺達はキャメルナ観光を楽しんでいた。そうして気がつくと、もうお昼頃の時間になっていた。俺は皆に声をかけ、それなりなお店に入って昼食を取る事にした。
「······」
そんな俺たちを隅っこからずっと見ている子供がいた。俺も気づいてはいたが、どうせ特に関係ないだろうと思って放っておくことにした。
「うん。ここの料理も美味しいな。以外と当たりかもな」
「そうですね。このお肉の歯ごたえが何とも」
「ご主人様〜。私の分もお食べになりますか?」
「ねーちゃん!これおいしーよ!」
「こらレオ。行儀悪いわよ」
先程入ったお店で俺達はそれぞれの料理を堪能していた。今までの色々なお城で食べた料理に勝るとも劣らない美味しさだ。そもそも比べるべきではないかもしれないけど。
俺が料理に舌鼓を打っていると、ソフィーナから声がかけられた。彼女はもう食事を終えていた。早い。
「アルマ様。この後はどうしますか?」
「午後からは武器屋や防具屋に行こうと思ってる」
「あ〜それ忘れてました」
「アルマ様!俺の新しい剣買ってくれるのか!」
「ああ。別にレオだけって訳じゃないけどな」
「やったー!」
「静かにしなさいレオ。迷惑ですよ」
そう言ってルゥがレオを注意する。なんかもうあれだな。レオのお母さんみたいだな。とても姉弟とは思えない。
そんなたわいもない談笑と一緒に昼食を終えたあと、俺達は国王オススメの武器防具店に向かった。ちらりと後ろを見ると、先程の子供はいなくなっていた。一体なんだったのだろうか。まあいいか、とその事は頭の片隅に置いておくことにし、目的地に向かった。
「ここだな······《ルドールの工房》って言うのか」
「確かルドールって、一流のドワーフにだけ与えられるっていう称号でしたね」
「ということは、相当の腕前なのですかね?」
「とりあえず中に入ってみよう。ここで待ってても仕方ない」
そう言って玄関の扉を開け中に入ると、様々な武器と防具が飾られていた。量産型の安い武器もあれば、金貨数十枚は下らないであろうとんでもなさそうなものもあった。
俺達が思い思いに商品を眺めていると、奥から人が来た。
「なんだ······今度の客は人間と兎か······」
「あなたが、ここの店長ですか?」
「······《ルドール》のゴレオだ。何か用か?」
「いえ、国王にオススメのお店を聞いたところ、ここを紹介されましたので」
「ああ······あいつか······」
そう言ってゴレオが深くため息をついた。
「······ついてきな。お前さん達は特別な客だ」
「······わかりました。みんな行くぞ」
俺は商品と睨めっこしている皆を連れ、ゴレオと一緒にお店の奥に向かった。
「とりあえず、そこの椅子に座ってくれ」
ゴレオに促され、俺達は用意されていた椅子に座った。
「それで、本題だが······とりあえず一つ聞かせてくれ」
「はい」
「お前さん達は······魔族と戦うつもりなのか?」
「······はい。俺たち全員そのつもりです」
どうやら王様から色々と聞かされていたらしい。
「······本気なんだな。······わかった。お前さん達全員に俺が特注で武器防具全部作ってやる」
「······本当ですか!?」
「ああ。俺も魔族の恐ろしさは知っている。それを退治してくれるんならこれくらいは当たり前だ」
「ありがとうございます」
そう言って俺は頭を下げる。
「ありがとうございます。ゴレオさん」
「感謝します」
「ありがとーな!おじちゃん!」
「レオ。失礼ですよ。······ありがとうございますね」
皆もゴレオにお礼を言った。ゴレオはそっぽを向いて「ふん」と言っていたが、少し顔が赤くなっていた。
「それじゃあ、お前さん達のリクエストを教えてくれ」
「はい。俺は······」
こうして俺達はゴレオさん特製の超高性能の武器を手に入れた。各々装備は違うが、皆どこかたくましく見える。どうせなら、新武器の試し斬りでもしないかと俺は皆に提案した。
「良いですね」
「ぜひやりましょう!」
「俺の剣が火を吹くぜ!」
「あんた火炎魔法使えないでしょ?」
聞くまでもなかったな。そんなこんなで俺達はそのままキャメルナ王国を出て、近くにある《魔獣の洞窟》の探索に行くことに決めた。
一応これも王様に許可を取りに行ったが、むしろ行ってほしい。手に入れた素材はこちらで換金するからと言われた。それを聞いて俄然やる気を出した皆と一緒に、俺は洞窟攻略に向かった。
休日のはずがいつの間にかダンジョン探索になっていたが、気にしないことにしよう。うん。
次話で新武器防具全部紹介できたらなと思います。
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