別れと新王国
少し短めの章でしたが、兎王国編ラストです。
「もう······行ってしまわれるのですね」
「······はい」
ウォルテラ王国出発当日、俺達は謁見の間でエレナ女王と最後の面会をしていた。
「愛しの愛娘に会うことが出来て私は本当に嬉しかった。それだけでなく、アルマ様や他の方達と交友を深めることが出来ました。お礼を言わせてください」
そう言ってエレナ様が頭を下げる。
「頭を上げてください。エレナ様。女王様が簡単に頭を下げるなんてあまり良くないのでは?」
「それはそうなのですが、私は女王としてでは無くラミアの母親としてお礼を言いたかったのです。だから、素直に受け取ってもらえませんか?」
「······わかりました」
エレナ様はニコッと微笑んだ。
「それなら俺から······いや、俺達からもお礼を言わせてください。お城に居候させて頂いた上に、かなりの高待遇をして下さった事、本当にありがとうございました」
「ありがとうございます、エレナ様。本当に充実した一週間でした。私、ソフィーナからもお礼を言わせてください」
「エレナ様!ルゥ達はこれからお兄様の元で頑張ります!それと、ありがとうございました!」
「まぁ······その、エレナ女王様。色々と面倒を見てくださって、ありがとう······ございました」
「お母さん。ありがとうね。すっごく楽しかったです」
俺の言葉を皮切りに、ソフィーナ、ルゥ、レオ、ラミアの順でエレナ様に感謝の言葉を伝えた。
「ふっ······ぐすっ······ダメですね······涙脆くて······」
感情が抑えきれなくなって涙ぐんでしまったエレナ様を見て、俺達も目頭が熱くなる。堪えようとしたが、気がつくと一粒の涙が頬を伝っていた。
皆も別れが惜しいのか、涙ぐんだり、嗚咽を漏らしていた。
「ほら、皆。別れに涙は似合わないぞ」
「そうですね······」
「ふぅ······ぐっ······すっ······」
「············ズズズ」
「······」
しばらくすると、エレナ様も俺達も落ち着いてきた。しかし何故かラミアだけは黙りこくって下を向いていた。
俺は特に気にせず、話を進めることにした。
「最後にもう一度だけ言わせてください。ありがとう······ございました」
そう言って頭を下げる。しばらくした後、エレナ様から声がかけられた。
「はい。承りました。······それで、これからどうされますか?」
「そうですね······とりあえず、セーナ大陸にあるもう一つの亜人族の国に行ってみようと思います」
「なるほど······寂しくなりますね······」
「またいずれ顔を出します。その時にはお茶でも」
「はい!是非やりましょう!勿論皆様全員で!」
エレナ様が眩しい笑顔で破顔した。そうしてその後軽く話をし、俺達は謁見の間を後にしようとした。
そこで───。
「······お母さん。また会えるよね?」
ラミアがそう、ぽつりと呟いた。
心なしか弱気で、今にも崩れてしまいそうなほど儚かった。
「えぇ······また会えるわ。いつか、必ず」
エレナ様が壇上を降りてきて近づいてくる。そして、ラミアを力強く抱きしめた。ラミアの体が震える。
「また······こうやってあなたを抱かせて頂戴」
「お母さん······うんっ······うんっ······!」
そう言ってラミアも抱き返す。二人の頬には雫が伝っていた。そんな心温まる光景を、俺達は離れて見守っていた。
二人の嗚咽が、いつまでも響いていた───。
「ラミア······もう大丈夫か?」
「······はいっ。お母さんの温もりが残ってますから」
「そうか······よし、じゃあ皆。出発するぞー!」
「「「「おおー!」」」」
こうして俺達は騎士様の運転する馬車に揺られながら、ウォルテラ王国を後にした。振り返ると、エレナ様がいつまでも見守ってくれているような気がした。
「アルマ様。ようやく半分くらいのようですね」
「そうだな。ここまで二日だったっけ?結構かかったな」
「ということは、後二日で着くということですね」
「まあそういう事だな。単純計算で、だけど」
エレナ様と別れてから二日後、俺達は馬車に揺られながら平和な旅路を楽しんでいた。ラミアもあの謁見を経てどこか落ち着いたようにも思える。正直人が変わったみたいだった。全然構わないんだけどな?
「にしても······二人ともぐっすりですね······」
「暇といえば暇だからな······」
俺達の対面側にあるソファには、ルゥとレオが寄り添うように寝ていた。毛布がずれていたので掛け直しておく。
そんな何気ない日常を楽しんでいると、急に外が喧騒に包まれる。なんだと思って外を見ると、馬車が山賊らしき冒険者達に取り囲まれていた。
「おい!馬車に乗ってる奴ら!大人しくでてこい!」
「お前達はもう包囲されてるんだぜ〜?」
またこういうのか、面倒だな。さっさと終わらせよう。
「ソフィーナ、ラミア。二人を頼む」
「わかりました」
「任せてください」
二人にルゥとレオを任せ、俺は外に降り立った。
すると唐突にリーダーらしき奴が声をかけてくる。
「ああ?お前だけじゃねえだろ。さっさと全員出てこい」
「うるさい。黙れ」
「······は?」
「今なら許してやる。さっさと消えろ」
俺は少し苛立っていた。穏やかな旅路を邪魔された挙句、罵詈雑言を浴びせられたからだ。
「てめぇ······舐めてんのか」
「さっさと消えろと言っているんだ?耳腐ってるのか?」
「こっ······このガキァァァ!」
リーダーの頭に血がのぼり、下っ端たちに合図を出す。
待ってましたと言わんばかりに全員が突っ込んでくる。
俺はふっと微笑んで、詠唱───。
「煉獄之禍福」
瞬間、世界が紅に包まれる。馬車から数m離れた所で、血が蒸発する音が聞こえる。塵すら残さず焼き尽くす。
超級魔法。
その人智を超えた魔法を放った。それほど俺は怒っていた。
蹂躙と呼ぶことすら生温く、第三者がいればアルマのことをきっとこう呼んだだろう。
「魔王」
少々怒りの収まったアルマは周囲に馬車以外何も残っていないことを確認し、自分も中に戻っていった。唯一外に出ていた騎士様に懐疑の視線を向けられたが、見なかったことにした。
「もう。アルマ様。やりすぎはいけませんよ?」
「悪い悪い。次からは気をつけるよ」
「その次はいつ来るんですかね······」
ソフィーナとラミアに呆れられ、苦笑いを浮かべるしかなかったのは言うまでもない。
そんなこんなで二日後、俺達はもう一つの亜人族の国、獣人族のキャメルナ王国に到着した。
これで第3章完結です。次章で獣王国を書き、
その次辺りで魔族編を書けたらなと思います。
今後も色々とよろしくお願いします。
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