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自由気ままな異世界冒険譚  作者: 鈴野 白
第三章 兎人族
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 この世界には二つの大きな大陸が存在している。

人族が住むオズフィア大陸。亜人族が住むセーナ大陸。


 しかし、この二つの大陸の他に「闇の大地」と呼ばれる全種族未到達の大陸がある。その大陸へは、《次元の狭間》と呼ばれる空間の裂け目からしか行くことができない。


 そこには魔族が住んでおり、暗黒の風が澱んでいる。

そしてその中でも最も大きな国である《ヴェスター魔王国》の王城には、人々に恐れられている《魔王》が顕在していた。


 そんな魔王ガルシャの元に従者が一人跪く。名はフィル。



「······ガルシャ様。ご報告がございます」

「なんだ。フィル」

「ウォルテラ王国付近にダンジョンを作成し、魔法陣を守らせていたヴァーレインの消息が途絶えました」

「なんだと?ヴァーレインが?」

「はい」


「全く······あいつは何をしているんだ······」

「仕方ありません。彼は魔眷属ヴァニタスの中でも最弱。他の三人の足元にも及びません」

「正直言って死んだのがヴァーレインで良かったよ」

「左様です」



 そう言って魔王ガルシャはフィルに命令を下す。



「とにかく、ヴァーレインを倒した冒険者には注意するように部下達に伝えておけ。勿論、魔眷属ヴァニタス達にもな」

「はっ!」


 

 フィルが部屋を出ていく。ガルシャは玉座に座り直し、頬杖をついた。その表情は何故か愉しそうであった。



「魔族を倒した人族か······興味深いな」



 魔王ガルシャは舌舐めずりをし、小さく笑みを浮かべた······









「魔族?」

「はい。魔族です。基本的に奴らは《闇の大地》というこの世界とは違う次元に住んでいます」

「それで、次元の狭間を開いてこっちを侵略しようとしてるんです〜。物騒ですよね〜」



 ダンジョンから帰ってきた俺達は、借りている城の自室で二人に魔族のことについて聞いていた。まとめると、


 こことは違う次元に住んでおり、基本的に遭遇はしない。

 行き来するには、次元の狭間を通らなければならない。

 魔王ガルシャは、こちらの世界を支配しようとしている。

 その魔王が居を構えている《ヴェスター魔王国》には、魔族の兵士達と魔王直属の部下、魔眷属ヴァニタスが控えている。

 先程倒した魔族は魔眷属ヴァニタスの一人。


 という感じだ。とんでもなく物騒な話である。



「直ぐに魔族が攻めてくる、っていう可能性はあるのか?」

「本来ならありませんが、百年に一度次元の狭間が開いてしまう期間があるのです。そしてそれが1ヶ月後です」

「一ヶ月後······!?もしそうだとしたら急がないとな」

「······?何をですか?ご主人様」


「戦力増強と俺達のレベルアップだよ。この世界で最強は間違いなく俺達だ。率先して魔族と戦うべきだろう」

「俺達と言うか、アルマ様単体で最強ですからね······」

「ラミア。そこは突っ込まなくていいのよ。私たちも十分強いわよ······多分」


「まあとにかくだ。少しでも急がないと取り返しのつかないことになるかもしれない。早速行動に移そう」

「はい!」

「ええ!」



 そう言って俺達は、ウォルテラ王国の城下町で、新たな仲間を探すことにした。ちなみにエレナ様に聞いたところ、この国にも奴隷商が存在しているらしい。その情報を元に、俺達は奴隷商に向かった。





「ここが······奴隷商」

「向こうの······ラミアを買った所とあまり変わらないな」

「そうですねー大きさや広さも特に変わりませんね〜」



 そんなことを話していると、受付の人が声をかけてきた。



「お客様。奴隷をご所望ですか?」

「ああ。なるべく戦闘能力に秀でた者を二人頼む」

「かしこまりました。ではこちらへついてきてください」

「二人とも行くぞ」

「あ、待ってくださいよー!」

「ご主人様〜!」



 未だに話し合っていた二人に声をかけ、俺は奴隷達のいる部屋へ向かい男女の奴隷二人を買った。年齢は俺達と変わらないくらいだったが、身に纏う雰囲気は死線を潜り抜けてきた猛者のようなものであった。不思議なものだ。



 緊張している二人を連れ、俺達は王城の部屋に戻った。王城に入った辺りで二人が驚いていたが、どうせ後で説明すればいいと思い放っておいた。


 そして部屋の中で、俺がベッドに座りソフィーナとラミアが傍に立って控え、残りの二人は俺と対面するようにソファに座っていた。というか俺が座らせた。



「さて······とりあえず自己紹介からしようか。俺はアルマ。君達の新しいご主人様だ。」

「ラミアです!ご主人様の奴隷兼婚約者です!」

「ソフィーナよ。私もアルマ様の婚約者です。ちなみにローランス王国の王女でもあるわ」



 驚いている二人に、俺は自己紹介を促した。



「レオ······です。この度は······ありがとうございます」

「ルゥですー。よろしくお願いします」



 男の子の方はレオ。女の子の方はルゥと名乗った。

自己紹介が終わったところで、俺は話を切り出した。



「二人を買ったのは、俺達と一緒に戦ってもらうためだ」

「······戦うんですか?」

「嫌か?」

「いえ······むしろ好きな方ではあります」

「なら良かった。無理やり戦わせるのも嫌だったしな」



 そう言うとレオは小さくはにかむ。いい子そうで良かった。



「ルゥもいいか?」

「はい。それよりアルマ様······」

「ん?」

「お兄ちゃん······って呼んでもいいですか?」

「······え?」

「私······お兄ちゃんが欲しくて······レオは私の弟ですし······」

「うーん······」



 そう言われると弱い。俺はちらりと二人の方を見た。

ラミアもソフィーナも、小さく頷いた。何故か歯ぎしりしていたが。一応触れないでおこう。



「うん。いいよ」

「ありがとう!お兄ちゃん!」


 そう言ってルゥが俺に抱きついてくる。咄嗟のことで俺は反応できなかった。ルゥがお腹に頬ずりをしてくる。



 そしてその部屋では、俺に抱きつき匂いを嗅いでくるルゥ、それに気づかず終始有頂天なレオ、ルゥを引き剥がそうとするラミアとソフィーナという、何ともカオスな状況が出来上がった。







 何はともあれ、レオとルゥに懐いてもらえて良かった、と乱闘している三人に苦笑いしながら俺は思った。

ブクマや感想はモチベの向上に繋がりますので、ぜひよろしくお願いしますm(_ _)m

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