ダンジョン探索+α
次の日、俺は二人を起こし、エレナ様と一緒に朝食を食べていた。女王様の食事ともあって、とても豪勢であった。
「それで、皆様はこれからどうなされるのですか?」
「そうだなー。元々観光目的で来たようなものだからな」
「じゃあアルマ様。今日は街を見て回るのですか?」
「それもいいかもしれないな」
「あの、もし宜しければお願いしたいことがあるのです」
「お願いしたいこと?」
「はい。最近の事なのですが、この国を出て数時間歩いた所に突然洞窟のようなものが現れたのです」
「洞窟······モンスターがいるかもしれないのか」
「はい。どのような危険が潜んでいるのか分かりませんが、最深部まで攻略しておいて欲しいのです。」
なるほど、そういうことか。ダンジョンには普通金品や珍しい武器などが存在しているが、反面モンスターの数も他の場所の比じゃない。ハイリスクハイリターンだ。
「どうする?ラミア、ソフィーナ」
「私は構いませんよ?ご主人様について行きます」
「私もよ。アルマ様のご自由に」
「······わかった。エレナ、その依頼引き受けるよ」
「ありがとうございます!お礼は必ずしますので!」
「うん。期待しておくよ。じゃあ、さっさと食べちゃおうか」
そう言って俺達は朝食を食べ終え、その洞窟に向かった。
「シッ!」
「グハァッ!」
「ナイスラミア!あとは任せろ!」
「はい!お願いしますアルマ様!」
俺は下がるラミアの代わりに前に出て、攻撃を受けて怯んでいる《レッドウルフ》に袈裟斬りを放った。
「セアァッ!」
「ギャァァ!」
レッドウルフの体が半分に割れ、血を吹き出して倒れる。その血なまぐさに思わず鼻を顰めてしまう。
「グシャァァ!」
隙を狙ってもう一体のレッドウルフが俺に飛びついてくる。
「くっ!」
俺はギリギリで噛みつきをかわし、後ろに控えていたソフィーナに後を託した。
「頼む!」
「はいっ!はあっ!」
ソフィーナの放った獄炎がレッドウルフを襲い、その体を焼き付くしあっという間に魔石に変えた。
俺はようやく一息つき、小さくため息を吐く。
「うーん······油断したなぁ······」
「ご主人様は大丈夫でしょうけど······確かに危なかったですね」
「それをカバーしあってこそのパーティーだからね。アルマ様もラミアも、もちろん私もね」
「そうだな」
そう言って二人と顔を合わせる。二人とも笑みを返してくれる。微笑を返し気を引き締め直した後、俺達はダンジョン探索を再開した。
「行くぞ!」
「はい!」
「ええ!」
俺が切り込み接近戦を仕掛け、ラミアとソフィーナに援護射撃をしてもらいモンスターを倒す。バランスの取れた連携のお陰で、特に苦戦することもなく俺達はダンジョンの最深部の扉の前まで来ていた。
「ここで恐らく最後だろうな······」
「ですね。見るからにボス部屋って感じがします」
「でも、油断は禁物だからね。アルマ様もラミアも」
「ああ。もうさっきみたいなヘマはしないよ」
「さあ!いきましょー!」
俺達は三人でその大扉を開け、暗闇に足を踏み入れた。
「······暗いな」
「暗いですねー」
「アルマ様。暗闇を照らす魔法とかありますか?」
「ああ。わかった。······熱光!」
俺が熱光で部屋中を照らす。あっという間にその空間の全貌を見渡すことができ、中央には魔法陣と、その上に《魔族》が立っていた。
「あれは······魔族か!」
「······こんな所に何の用だ!人間!」
「そちらこそなんなのですか?ここで何をしているのです?」
「どうせろくな事じゃないだろうな」
そう言って思わず苦笑いが零れる。
「お前達下等生物ごときには関係ない!だが、この魔方陣を見られたからには生かしておけん!皆殺しだ!」
「なんだあいつ。めちゃくちゃ自分勝手だな」
「魔族は野蛮で獰猛な生き物ですからね」
「見てるだけで吐き気がしそうです······」
俺達がそう話していると、聞こえていたのか魔族が怒りを肩に滲ませ言う。
「貴様ら······生きて帰れると思うなよ······」
「こっちのセリフだ。魔族は倒すに限るからな」
そう言いながら俺達は武器を構え臨戦態勢に入る。奴も曲剣を体の前で構える。
「うおおっ!」
叫び声と共に、俺は奴目がけて突進し、接近したところで振り下ろしを放った。
「くっ!」
魔族が苦しそうに避ける。しかし完璧に避けることは出来ず、奴の頬を俺の剣が撫でる。後退して距離を取った奴の傷口からは、紫の血が流れていた。
痛そうに傷を押さえている隙だらけの奴目がけて、俺は無数の斬撃波を放つ。
魔族に斬撃の嵐が襲いかかり、奴の服を裂き皮膚を抉る。だが怯まず反撃だと言わんばかりに魔法を放ってきた。
「闇嵐!」
その名の通り真っ黒な風の塊が俺目がけて迫ってくるが、焦らず右に回避し、瞬間、後方の二人が叫んだ。
「雷撃の矢!」
「雷嵐!」
雷を纏った矢と嵐のような風の塊が奴の魔法と衝突し、打ち消す。それだけでなく雷の残滓が魔族に直撃し動きを止める。
「っ!」
「とどめだ!」
決定的な隙を見せてしまった奴の懐に高速で入り込み、俺は必殺剣を放った。
「絶命斬!」
暗黒が迸り、魔族を覆う。触れた傍から焼き尽くし、奴の悲鳴が断末魔に変わる。
「ぐがぁぁぁぁぁ!」
「······もう終わりだよ」
「く······くそがぁぁぁ!」
捨て台詞を残し、魔族は完全に消滅した。
後には何も残らず、淡い光を放つ魔法陣だけが存在していた。
「終わったか······」
俺は絶命斬を放った倦怠感を感じ、大きくため息を吐いた。
「アルマ様〜!」
「ご主人様ー!」
ラミアとソフィーナがこちらへ走ってくる。俺は小さく笑みを返し、二人の方へ駆け出した。
こうして俺たちは、女王様の依頼を完了した。
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