エレナとラミア
私はウォルテラ王国のしがない兵士。名乗るほどの名はない。
我が女王の命により、かれこれ数年ラミア様という方を探してきた。しかし、有力な手がかりの一つさえ見つからなかった。もうこの国にはいないんじゃないか。探す意味などあるのか。そう思っていた。
しかし、
「見つけたぞ!」
俺はついにラミア様を見つけた。宝石のように綺麗な銀髪の髪。兎人族の象徴である長い耳。間違いない、彼女がラミア様だ。俺は喜びに打ち震えた。だが、彼女の傍に立っている男の姿を見て俺はつい声を荒らげてしまった。
「ラミア様から離れろ!人間!」
いきなり兎人族の兵士が叫んだかと思うと、今度はラミアから離れろと言ってきた。なんなのだろうか。俺に向かって言っているのか?
「聞こえないのか!そこの人間!」
どうやら俺に向かって言っているらしい。
「聞こえてるよ。それで、一体何なんだ?」
「何度も言わせるな!ラミア様から離れろと言っている!」
「······は?ラミア様?」
俺は呆気にとられていた。なぜ兵士の人がラミアを様付けするのか。不思議に思い、本人にも聞いてみた。
「おいラミア。お前様付けされてるぞ。何かあるのか?」
「いえ?特に心当たりはありませんよ?」
「だそうだ。人違いじゃないのか?」
「ふざけるな!······さては、ラミア様を操っているのか!」
俺達の会話(?)を聞きつけ、周りには野次馬ができていた。中には俺に懐疑の視線をぶつけてくる者、面白そうに事の成り行きを見守っている者など色々な人がいた。もれなく兎人族。
「彼女は単に俺の奴隷だぞ?」
「どっ······貴様······許されると思うなよ······女王様の愛娘を······」
ん?女王の愛娘?
「おいラミア。お前この国の王女だったのか?」
「だから知りませんよ?親の顔も覚えてませんし」
そう言ってラミアは首を傾げてこっちを見てくる。いったい何がどうなっているんだ?俺はますます混乱し、頭を抱えた。これじゃ無限ループだ。
そんなことを考えていると、急に野次馬が割れ、一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。
ラミアと同じ銀髪に、体には純白のドレスを纏っている。一目見ただけでわかる。恐らくこの人が女王だ。
「当然申し訳ございません。私はウォルテラ王国の女王エレナ。突然申し訳ございません。しかし、ある理由がありましてこのように参上いたしました」
「理由?」
「はい。彼女······ラミアは、私の実の娘。この国の王女の立場にある者なのです」
「··················え?」
「「ええええええええええ!?」」
俺が素っ頓狂な声を上げた直後、ラミアとソフィーナが完全にシンクロしたタイミングで絶叫を上げた。
ウォルテラ王国に来て早々、俺達はやらかしたのだった。
その後、俺達はエレナ様の乗ってきた馬車に乗せてもらい、ウォルテラ王国の王城に向かった。ちなみに宿はまだ取っていなかったらしく、騎士様と馬車も一緒に連れられてきた。とりあえずはぐれなくて良かったと思う。
「それで······本当······なのですか?」
「はい。正真正銘、彼女は私の愛娘です」
どうやら確定らしい。さすがに想定外すぎた。自分の奴隷が他国の王女だなんて誰が予想できるだろうか。いや、絶対に不可能だろう。だから俺は悪くない。
自分にそう自己暗示をかけた後、俺は話を続けた。
「もしかして、ラミアを引き取るつもりですか?」
「············」
エレナ様が黙り込んでしまう。返答しないところを見るに、恐らくそのつもりだったのだろう。しかし、彼女が既に俺の所有物である以上下手に口出しが出来ない、というところか。
「私も最初見た時は驚きました······まさかラミアが他人の奴隷になっているなんて······と」
「······」
「憤りも感じたし、その人がどのような人なのかを確かめたいとも思いました。もしひどい人であれば、命懸けで引き取ろうとも」
「······そうでしたのか」
「しかし、彼女の顔を見てそれは杞憂だとわかりました」
「······!」
「アルマさん。あなたは優しい人です。ラミアのあんな嬉しそうな、安心しきった顔は初めて見ました。こんな事を言える立場ではありませんが、娘をお願いしても構いませんか······?」
「······もちろんです。まかせてください」
「ご主人様と一緒なら何も問題ないの!」
「良かったね。ラミア、アルマ様」
本当に良かった。俺にとってラミアはもう、かけがえのない存在になっていたから。離れ離れになることがなくて嬉しい。俺は心からそう思った。
そして先程までの重苦しい雰囲気は無くなり、俺達は色々な思い出話に花を咲かせ、楽しい一時を過ごした。
「着きました。ここがウォルテラ王国の王城です。この国に滞在している間は、ぜひ泊まっていってください」
「本当にいいんですか?」
「はい。色々と迷惑をかけてしまいましたし、私も久しぶりに昔の事を話せて嬉しい気分になれましたから」
「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます」
俺達は王城内の一室に案内され、そこで様々な待遇を受けることになった。頬が落ちそうになるほど美味しい食事。貸切の浴場。とんでもなく広い部屋にふかふかのベッド。
なるほど、これが王族か。そんなことを考えながら俺は二人と共に一夜を過ごした。
その日の夜、やけに情熱的なラミアとソフィーナに求められ、体を重ねたことはあえて深く触れないでおくことにした。
そして次の日······
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