兎人族の国・ウォルテラ
第3章スタートです!
「まだ見つからないのですか?」
「申し訳ございません······」
「早く見つけなければ、取り返しのつかないことになるかもしれません。なるべく急いでください」
「はっ!」
そう言って兵士が部屋を出ていく。私は軽い疲労感を覚え、ため息をついた。
その人物を探し始めてもう数年。まだろくな手がかりがない。唯一あったとすれば、彼女が住んでいた村の人々が彼女を奴隷として売ったということぐらいだろう。その村の人々には重い罰を与えておいた。
「ラミア······」
兎人族の国の女王エレナは、未だ見つからない生き別れの愛娘の名を呟き、再びため息をついたのだった······
「ご主人様〜あたまなでなでしてください〜」
「おいおいラミア。さっきもやったじゃないか」
そう言いながらも俺はラミアの頭を撫でる。彼女の表情が恍惚に染まり、「ふにゅ〜」という何ともだらしない声を出して気持ちよさそうに目を細めていた。
「ちょっと、ラミアだけずるいわよ」
「悪かったって。ソフィーナ。ほら」
そう言って俺はソフィーナの頭も撫でる。ラミアとは対照的にあまり格好を崩さなかったが、体をクネクネさせ、身を震わせていた。色気が凄かった。
「それにしても、やっぱり馬車ってすごいな······」
「そうですね〜。歩かなくてもいいですもんね〜」
「私はアルマ様と一緒なら歩いてでも良かったですよ?」
「それ俺がきついから」
ローランス王国を出て俺たちは馬車に乗り、セーナ大陸に入るための国境を目指していた。ちなみにこの馬車は王様が貸してくれた物であり、派手な装飾などはないものの乗り心地は快適であった。運転手の騎士様も快く引き受けてくれた。
さすがに至れり尽くせりすぎて王様に聞いたら、
「未来の国王だ。当然だろう?」
と何故か自慢げに言われた。正直すごいウザかったので、いつかギャフンと言わせてやろうと思う。
「それでご主人様。やっぱり最初は······」
「ああ。ウォルテラ王国に向かおうと思う。ラミアと同じ兎人族が住んでいる国だからな。ラミアも一度故郷を見ておいてもいいだろう」
「ありがとうございます!ご主人様!」
そう言ってラミアは抱きついてくる。俺は苦笑いしていたが、そこでソフィーナが質問してきた。
「アルマ様。あの国は種族差別が激しかったと思いますが、大丈夫でしょうか?」
「確かにそれは俺も考えたが、まあ何とか説得はしてみるよ。それで無理ならラミアには申し訳ないが、早めに国を出るしかないかな」
「私は全然構いませんよ!ご主人様さえいれば!」
「はは。ありがとうな」
のほほんとした会話をしながら数日、セーナ大陸の国境を越え、ようやくウォルテラ王国が見えてきた。
国の面積はローランス王国と同じか少し小さいくらい。
入国の門には同じように検問所のようなものがあり、兵士の人が入国チェックをしていた。
唯一ローランス王国と違うところがあるとするなら、ほとんどの人が兎人族ということぐらいだろう。中には人族も何人かいたので、完全に入国拒否ということではないそうだ。
そんなことを考えていると、あっという間に検問所の前まで来た。案の定兵士の人が来たが騎士様が対応してくれた。何やら話し合っていたが、しばらくすると入国許可が出たのか門が開いた。
「入国許可を頂けました。ですが、なるべく問題は起こさないよう注意もされました」
「わかった。気をつけるよ。それとありがとう」
「いえいえ。お気になさらず」
騎士様にお礼を言い、俺達はついに兎人族の国、ウォルテラ王国に入った。
「最初はどうしますか?」
「やっぱり宿の確保だろう。寝床は必要だしな」
「そうですね〜」
そうして俺は騎士様に、宿を見つけてほしいこと、なるべく安全性の高い所にして欲しいこと、お金なら問題ないことを告げた。騎士様は快く了承してくれた。
俺達は、馬車からウォルテラ王国の街並みを眺めてゆっくりしていた。すれ違う人々が振り向いて馬車を凝視していたことはあえてスルーしておこう。
しばらくすると、宿の前で馬車が止まった。騎士様が馬を宥め、俺達を降ろすため馬車の扉を開けてくれた。
俺はソフィーナとラミアの手を握りながら、エスコートするように一緒に馬車を降りた。
「それでは宿を取ってきますので、しばらくの間お待ちください」
「ああ。わかった。よろしく頼むよ」
そう言って騎士様が宿の中へ入っていく。俺はラミア達と談笑しながら馬車の傍で待っていた。すると······
「おい!見つけたぞ!」
そんな声が、ウォルテラ王国の街に響いた。俺が不思議に思いみると、何故か憤りを浮かべた兵士たち数人がこちらを指差していた。
第3章は兎人族の国について書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
ブクマや感想はモチベの向上に繋がりますので、ぜひよろしくお願いしますm(_ _)m




