いざ、新大陸へ
かなり急展開になってしまいました······笑
《龍の峡谷》から帰還した俺たちは、依頼の完了と報酬を貰うために冒険者ギルドに戻ってきていた。
「なあ、ソフィーナ」
「はい?どうしました?」
「俺たち一応《安らぎの宿》に宿泊してるんだけど、ソフィーナはどうするんだ?」
「それなら私もそこに泊まりますよ」
「城に戻らなくてもいいのか?」
「はい。許可は取ってあります。大人になってこいと」
「······わかった。じゃあラミアもそういうことで」
「一番は私ですからね!」
「わかったわかった。とりあえず中入ろう」
そう言って俺たちはギルドへ入った。すると、冒険者数人が俺たちの前に立ちはだかるように立っていた。
「あの〜すいません。どいてもらっていいですか?」
「てめえに用はねえ。そこの嬢ちゃん達置いて帰んな」
「······は?」
「俺達がたっぷり可愛がってやるからよ〜?」
そうして醜悪な視線を向けてきた。主にラミアとソフィーナに。ああ、これもまたテンプレか。
「私達はあなた方に興味はありません。アルマ様の邪魔をしないでくれませんか?」
「そうです。気持ち悪いのです。ご主人様に近寄らないでください。吐き気がします」
「おうおう。口だけはいっちょ前だな」
「そんなガキより、俺たちの方が気持ちいいことしてやるぜ?乗り換えた方がいいぜ〜?」
瞬間。
室内が圧に包まれた。その場にいた者は皆足が震えて膝をつき、失神している者もいた。
そして、その圧を直接受けた先程の冒険者達は───
恐怖で竦み上がり、言葉一つ発することすら出来ずにいた。失禁している者や嘔吐しているものまでいる。
とんでもなくおぞましい光景であった。その光景を作り出した当の本人達が、ぽつりと呟いた。
「それ以上侮辱してみなさい。本気で焼き尽くしますよ」
「次、また同じようなことをご主人様に言えば、息の根が止まると思ってください······ね?」
まるで魔王の魂を宿したかのようなラミアとソフィーナに気圧された冒険者達は、ちぎれんばかりに首をふっていた。
それを見て、二人が圧を解く。正直俺も少し怖かった。この二人は本気で怒らせないようにしよう······
「ささっ、アルマ様!いきましょう!」
「ご主人様〜!」
そう言って二人が腕を回してくる。先程までとの変わりように、冒険者達は恐怖を顔に貼り付けていた。俺は全てをスルーし、依頼達成の報告に向かった。
そして依頼の報酬を受け取った後、俺たちは《安らぎの宿》で夕食を取っていた。
「うん。ここは相変わらず美味しいな」
「ですね〜!ほっぺが落ちそうです!」
「おかわりください!」
二人にも絶賛のようだ。ラミアに至ってはおかわりまでしている。食費がかさむが、まあいいだろう。
「そうだ。二人に相談があるんだが」
「「相談?」」
「ああ。このローランス王国を出てセーナ大陸に行こうと思っている」
「セーナ大陸······ですか」
「もしかして、私の故郷とかにも行くのですか?」
「まあそのつもりだ。他にも色々回るけどな。それで相談っていうのはソフィーナの事なんだよ」
「······この王国を出られるか、ということですか?」
「端的に言えばそういう事だ」
ソフィーナはこの国の王女だ。いくらパーティーメンバーで、婚約者だからといって、おいそれと他国に連れ出せるような立場の人ではない。最悪······
「最悪、ソフィーナは来れないかもしれない」
「そんな······私はアルマ様と一緒にいたいのに······」
「ご主人様。どうしてそこまでして行きたいのですか?」
「それを話すには、ソフィーナにも俺の事を説明しておかなければならない」
「もしかして、《龍の峡谷》の時に言っていた······?」
「ああ。とりあえず、話は食べてからにしよう」
そうして俺たちは、早めに夕食を食べ終えた。ソフィーナは終始寂しそうであったが。
「それで、アルマ様のことについて······でしたよね」
「ああ。とりあえずステータスを見てくれ。二人とも」
「「はい」」
そう言って俺は二人にステータスを見せた。ラミアは事前に知っていたので普通だったが、ソフィーナはやはり驚いていた。
「アルマ様は転生者だったのですか······」
「ああ。······幻滅したか?」
「······なぜ?」
「俺のこのスキルは他人からもらったものだ。俺に惚れたソフィーナに対して、嘘をついていたのさ」
「······それでも、アルマ様はアルマ様です」
「······え?」
「どんな理由があろうとも、私はあなたに恋をしたのです。その想いだけで十分ではないのですか?」
「そうですよ。ご主人様。そんなの些細なことですよ」
思わず涙が出そうになるが、必死に堪え返事を返す。
「二人とも······本当にありがとうな」
「これくらい当然ですよ。アルマ様」
「それより、その話とセーナ大陸に行くことが何か関係があるのですか?」
ラミアがあっさり話題を変えてきた。もう少し感傷に浸らせて欲しかった。いいけどね?
「まあ一応な。俺は一度、この世界を見て回りたいと思っている。異世界に対する憧れってものかな」
「······わかりました」
「ん?どうした?ソフィーナ」
「私もあなたについて行きます!ええついて行きますとも!」
「えっ······大丈夫なのか?」
「大丈夫です!無理矢理でもお父様に許可をとります!」
「えぇ······そんなもんなの?」
「そんなもんです!」
ソフィーナはてこでも動かなかった。仕方ない。王様に許可がもらえるなら、連れていくか。
「わかった。けど、正直何が起こるかわからない。その辺は自己責任だからな?」
「はい!わかっています!」
「これからもよろしくね〜?ソフィーナ」
「ええ、よろしく!ラミア!」
とりあえず色々あったけど、結果的に良い形になったと思う。俺は心の中で安堵した。
「それで······今日の夜は······」
「······あっ」
「私が先ですからね!」
「じゃあその次は私が」
「おい、ちょ、待って······あーっ!」
そうして俺はその日の夜、童貞を捨てた。なんて言うか······その······まあ結構わりと良かった。
次の日、王様に(無理やり)許可を取ったソフィーナと少し顔が赤くなっていたラミアと一緒に、俺はローランス王国を出てセーナ大陸へ向かった。
更なるウサミミを求めて······
これで2章完結です!次回以降(ストーリー説明を除く)は恐らく一日一回投稿になると思いますが、よろしくお願いしますm(_ _)m




