ソフィーナの冒険者登録
「そうだ。アルマ君、ラミア君。この謁見が終わった後少し時間を貰えるかな?色々と話したいことがあるのだ」
「この後······ですか。わかりました」
俺がソフィーナ様のことで落胆していると、王様からそう声がかけられた。拒否権なんてあってないようなものだし俺は素直に承諾した。
「それでは、これにてSランク冒険者アルマとラミアの謁見を終了とさせていただきます」
レン王の左側に立っていた、恐らく宰相の人がそう告げると周りに控えていた人達は続々と退室していく。その中にはさっき進言していた上級貴族の姿もあった。
そして謁見の間に残ったのは俺とラミア、レン王、ソフィーナ王女、宰相、そして数人の護衛だけになった。
「悪いな二人とも。時間を取らせて」
「気にしないでください。俺たちはどうせ暇です」
「そうです!暇なのです!」
俺がそう返すと、ラミアも同じように反応する。こいつ段々とバカになってきてないか?まあいいや。
「それでは、私の部屋に案内しよう」
「な······陛下。さすがにそこまでは······」
「私が頼んだんだ。これくらいの配慮は必要だろう?」
「······そうですね」
「それに、見たところこの二人は礼儀正しい。何か問題を起こすということもないだろう」
そう言って俺たちを自分の部屋に案内してくれる。
本当に優しい人であった。
「さあ、入りたまえ」
「失礼······します」
「失礼しまーす」
王様に促され、俺たちは部屋に入る。内装は至ってシンプルだ。無駄に装飾品があったりする訳では無い。だが、それが逆に良い雰囲気を醸し出していた。
「そこのソファにでも掛けてくれ」
そう言われて俺たちはとてつもなく高そうなソファに座る。凄いふかふかだ。ベッド代わりにできるレベルだぞ。
王様は俺たちと対面するように逆のソファに座った。ソフィーナ様がその隣に座り、宰相の人は立って王様のそばにいた。
「それで、話したいこととは?」
「それなんだがな······そうだな。このことは本人の口から聞いた方がいいな。ソフィーナ」
「はい。私からあなた達に頼みたいことがあるのです」
「「頼みたいこと?」」
珍しく俺とラミアの声がシンクロする。
「私を······あなた達のパーティーに入れてください」
「······え」
「だ、ダメダメ!絶対ダメですよ!」
俺は驚きのあまりことがを発せず、ラミアは頑なに拒否していた。······え?王女様が俺達のパーティーに入る?
「······あの。それは一体どうして」
「そうですね······強いて言うなら、貴方に惚れました」
そう言ってソフィーナ様は顔を赤らめた。いやいやこれは······さっきの婚約云々もそうだが、パーティーに入ることも相当問題だろう。
「あの······それはさすがに無理では······ないかと」
「······私では満足いただけないのですか?」
そう言って上目遣いで懇願してくる。あと言い方に語弊があった。それは卑怯では?俺はそう思い王様にも言う。
「王様からも言ってあげてください。王女様がただのSランク冒険者のパーティーに入るなんて危険だと」
「うん?私は全然構わんぞ?君ならソフィーナを守ってくれるだろうし、何より私の娘を誑かせたんだ。この責任は取ってもらわないとな?」
そう言って心底楽しそうにニヤニヤ顔を向けてくる。ああクソ!味方がいない!······そうだ!ラミアがいた!
「おい、ラミア。お前は嫌だよな?」
「ソフィーナ様。この国は一夫多妻制なのですよね?」
「いや聞けよ」
「はい。なんなら私は第二婦人でも構いませんよ」
「······なら良いです。よろしくお願いします」
「おいおいおい!話が飛躍しすぎだろ!」
なんで急にそんな話になるんだ。二人の相手なんてさすがにきついぞ。色々な意味で。
「まあまあアルマ君。私からもお願いするよ。それに、君も意外と満更ではないかと思うけどね」
「王様······はぁ·········本当にいいんですか?」
「ああ。娘の事をよろしく頼むよ。」
「···········分かりました。こちらこそよろしくお願いします」
「これから頑張りましょうね!アルマ様!」
「ご主人様の一番は渡しませんからね!」
王女のパーティー加入と、俺の婚約が決まった瞬間であった。
───そして冒険者ギルド
「とりあえず、ソフィーナ様の登録もしないとな」
「アルマ様。私のことはソフィーナとお呼びください」
「いや······でも」
「お呼びください?」
「······わかったよ。ソフィーナ」
「はいっ!よろしくお願いしますね!」
そう言って満面の笑みを向けてくる。周りの冒険者の視線が痛い。それもそうだろう。美少女二人に両腕を組まれながら歩いているのだ。色んな意味で注目を受けている。
「ご主人様〜······今日の夜、お願いがあるのですが······」
「お願い?なんだ?ラミア」
「その······私の処女を貰ってほしいのです······」
「おまっ······!?こんなところで言うか!?」
ラミアがとんでもない爆弾を落としてくれた。周りの視線が嫉妬から憎悪に変わる。ひぃぃ。視線だけで殺されそうだ。
「ちょっと何言ってるんですか?私の方が先です!」
「いいえ!私が先にご主人様に貰われるのです!」
「こんなところでそんな言い争いをするな!」
恥ずかしすぎて死にそうだ。先が思いやられる······
俺はさっさと登録を済ませて、Bランク依頼の《ワイバーン討伐》を受注しギルドを出た。Bランクにした理由はラミアの時と同じ、ソフィーナの実力を確かめるためだ。
二人を連れ、ワイバーンの巣があるという《龍の峡谷》に向かった。二人はまだ言い争っていたので、軽く拳骨を落としておいた。
「ここが······龍の峡谷か······」
「すごいですね······ここにワイバーンの巣があるのですか」
「というかソフィーナ。いきなりBランク依頼で大丈夫だったのか?危ないと思うんだが」
「はい!Bランク依頼なら達成したことがあるので!」
「そうか。けど、油断はするなよ。······来るぞ!」
そう言って俺達は、戦闘を開始した。
「ご主人様!この一匹で最後です!」
「わかった!セアッ!」
「ギァァァァ!」
ラミアの言葉を片隅に、俺はワイバーンに振り下ろしを放った。その衝撃でワイバーンが後方に弾け飛ぶ。翼がもがれ、全身が血で真っ赤だ。だがまだ死んではいない。俺はソフィーナに指示する!
「ソフィーナ!決めろ!」
「はいっ!氷炎刃!」
ソフィーナが火炎魔法と氷結魔法を複合させた氷炎刃をワイバーンに放つ。直撃と同時に体を業火と吹雪が包み、表皮を溶かし、凍らせる。そして完全に動かなくなった直後、ワイバーンはその原型を留めていない体を魔石に変え消滅した。
「やったあ!やりましたね!アルマ様!」
「ああ。ソフィーナもラミアもよくやってくれたよ」
「当然です!私はご主人様の奴隷ですからね!」
俺達が戦闘を開始してから数十分ほどで、ワイバーンの巣を壊滅させることが出来た。やはり三人だと連携が取りやすいし、パーティーの攻撃力も上がる。ソフィーナ加入は正解だった。
「それにしても、ソフィーナは火炎魔法と氷結魔法が得意なんだな。最後の複合技は凄かったよ」
「えへへ〜。そうですか?私これでも、その二つはLv.5なんですよ!他はからっきしですけどね」
そう言ってはにかむ。俺は素直に凄いと感心した。
「そういうアルマ様だって、色々と規格外でしたよ?」
「まあ······色々あってな」
「そうです!ご主人様は特別なのです!」
「へえ······何か秘密があるのですか?」
「······帰ったら話すよ。それでいい?」
「はい!もちろんです!」
「さあご主人様!そろそろ帰りましょう!」
「ああ。そうだな」
「あっ!私のことも忘れないでくださいね!ラミアさん!」
そうして、俺たちは《龍の峡谷》を後にした。ラミアとソフィーナが打ち解けるのはまだ少し先なのかもしれない。俺は苦笑いを浮かべ、二人と一緒に帰途についた。
ラミア→アルマは「ご主人様」
ソフィーナ→アルマは「アルマ様」
で統一しようと思います。ごっちゃになるかもなので。
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