死闘の後には······
「アルマ様っ!アルマ様ぁっ!」
「ん······ああ、ラミアか」
「アルマ様······良かった!」
そう言ってラミアが抱きついてくる。少し苦しいが、彼女を不安にさせてしまったのは確かだ。これくらいはさせてあげるべきなのだろう。
「······悪かったな。心配かけて」
「ぐすっ······いえ······良かったです······本当に」
本気でラミアは俺のことを心配してくれていたようだ。俺はこんな奴隷を持って幸せ者だと思った。もう、なるべく彼女には心配をかけないようにしよう。
そしてしばらくの間、俺たちは抱き合っていた。
「······もう大丈夫か?」
「はい······迷惑かけてすみません」
「なんでお前が謝るんだ。俺こそ悪かった」
ラミアが泣き止んだ後、俺たちは木影で休んでいた。念の為、邪龍の魔石は回収してある。
「さあ、今度こそ帰るか。またさっきみたいなのが来ても困るしな。というか次来たら確実に負けそうだ」
「そう······ですね。早いとこ帰りましょう!」
何故か上機嫌であった彼女と一緒に俺は《魔獣の森》を後にした。
その頃冒険ギルドでは───。
「やばい······!あれは邪龍だ!」
「なっ······!?おい嘘だろ!?そんなの!」
「このままじゃみんなやられちまう!急いで逃げろ!」
「馬鹿言うな!街の人たちを見殺しにするのか!」
「ああそうだよ!自分の命が第一に決まってるだろ!」
「ふざけるな!」
突然のSS級出現にギルド内に悲鳴と罵声が響き渡る。頭を抱えて蹲る者、住民を守ろうと剣を取る者、自分の命恋しさに逃げ出そうとするものなど、まさしく阿鼻叫喚と化していた。
「クソっ!俺はもう逃げるからな!」
「おい待て!ラルア!」
ラルアと呼ばれた冒険者がギルドの出口向かって走る。仲間達が必死に止めるが、聞かず逃げようとする。しかし、突然の来訪者にぶつかり倒れてしまった。
「がはっ!いってぇなあ!」
「あ、すいません」
現れたのは、つい先日Bランクになった新人ルーキー。確か名前はアルマ。奴隷をパーティーに連れているとかなんとか。そいつが急に現れた。どうしたのだろうか。
そしてギルド内の状況を見たアルマは、
「······なにこれ」
信じられないものを見るように、ぽつりと呟いた
「おい!確かアルマとか言ったな!そこをどけ!」
「はい?アルマですけど。どうしました?」
「邪龍が現れたんだよ!お前達は知らないかもしれないけどな!逃げるんだよ!だからどけ!」
「ああ、そいつなら俺が倒しましたよ」
「·············································は?」
俺がそういった途端、辺りが急に静かになった。
ん?もしかして信じてないのだろうか。そう思って俺は魔石を取り出し掲げる。
「ほら。これが邪龍の魔石だよ」
そう言って周りの冒険者達をみる。皆何が起こっているのかわからないと言った顔だったが、段々と理解が追いついていき、一人が大声を上げた。
「ええええええ!?邪龍を倒したぁ!?」
その言葉を皮切りに、今度はギルド内が絶叫に包まれた。
「「「「「えええええええええ!?」」」」」
そうして皆が俺に近づいてくる。魔石を確認した後、手を挙げて喜んだり驚きすぎて泡を吹いて倒れるものまで現れた。ラミアは何故か誇らしそうに胸を張っていた。
そうしているとギルド長のオルバが現れた。
「アルバ君。ラミアさん。ギルド長室に来てくれ。話はそこでしよう」
そう言って俺たちを案内する。俺は未だ喧騒冷めやらぬ受付をあとにし、ギルド長室へ向かった。
「それで今回の件なんだけど、またやらかしてくれたね」
「まあ成り行きで······仕方なかったんですよ」
「ご主人様ですからね!」
前回とは違い部屋にいたのはオルバ、俺、そしてラミアだけだった。ロレナさんは仕事でいない。
「それでここに来てもらった理由なんだけど······」
「はい」
「魔石の回収。周囲への注意喚起。そして君の冒険者ランクの昇格だ」
「···また昇格ですか?」
「当たり前だよ。SS級を倒したんだ。間接的に国を救ったと言っても過言ではないんだよ?」
「······そんなもんですかね」
「そんなもんだよ。だから君をギルド長権限でSクラスに昇格する。生憎SSクラスはまだなくてね。それが限界だよ」
「分かりました。それと、魔石も回収ですか?」
「ああ。こちらで回収し処理する。勿論報酬は払う」
「なるほど······分かりました」
色々と話されたが、要は俺がSクラスに昇格し、邪龍の討伐報酬が貰えるということだろう。
「あ、一応受注依頼の《ブラッディ・ボア討伐》もお願いします」
「わかった。後で両方の報酬を渡すよ。それと」
「それと?」
「Sクラスに昇格した冒険者は国王に謁見することになっているんだ。もちろんパーティー全員でね」
「······マジで?」
「マジだ。だから、色々と準備しておいてくれ」
「はあ······わかったよ」
「了解なのです!」
もうろくに返事する気も起きない俺と、対照的に元気いっぱいなラミア。お前人生楽しそうだな。羨ましいよ。
そんなことを考えながら俺たちはギルド室を後にし、
二つの依頼の討伐報酬を貰ってギルドを出た。
ブラッディ・ボア討伐 金貨合計六十四枚
邪龍討伐 金貨二千枚
総額 金貨二千六十四枚
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