災禍との死闘
「セアッ!」
「グァァ!」
俺は突進してきたブラッディ・ボアを切り裂いた。断末魔を上げながら、血飛沫を撒き散らし地面に倒れる。
周りの群れを倒し、ラミアの方を見るとこちらもそろそろ終わりそうであった。
「せっ!」
「ギャッ!」
常に一定の距離を保ちながら的確にブラッディ・ボアの急所を射抜いていく。そして最後の一匹を倒し安堵している彼女の元に合流した。
「けど、さすがに疲れたな······」
「ですね······」
俺が相手取ったブラッディ・ボアの数はおよそ二十体。なるべくラミアの方に行かないようにしていたが、結果的にラミアもかなりの数と戦うことになっていた。
「にしても、この剣本当に凄いな」
「そうですね······」
俺が今持っている妖精の剣には「非戦闘時に限り、半径5m以内の味方の体力を自動回復」という特殊能力があった。つまりこの剣があれば体力を気にせず戦うことが出来るという訳だ。回復ポーションを作っている商人涙目である。
「あの、ご主人様······一つ思っていたことがあるのですが」
「ん?どうした?」
「どうやってそのような凄い剣を手に入れたのですか?」
「あー······」
そう言えばラミアにまだ説明していなかった。正直気が引けたが、隠さず正直にラミアに話すことにした。
俺が転生者であること。チートスキルを持っていること。ついでに妖精王と関わりがあること。
それを聞いたラミアは一瞬何かを考え込むように俯いたが、すぐに顔を上げ言った。
「確かに驚きました。けど、ご主人様はご主人様です。私を助けて下さったことだけで十分です」
「ラミア······ありがとうな」
彼女にお礼を言い、俺は立ち上がる。
「さあ、そろそろ帰ろうか」
「はい!どこまでもお供します!」
少し大袈裟な彼女に笑みを返し、街へ帰ろうとした。
瞬間。
天地を震わすような咆哮が轟いた。咄嗟の事に二人とも反応出来ず、硬直してまった。
その瞬間を逃さず「それ」は姿を現した。
人間の数倍は高い大きな体。全てを射抜くような金の眼。背中からは翼が生えており黒い鎧のような表皮を纏っていた。
それを見たラミアがぽつりと呟きを落とした。
「邪龍······」
邪龍。SS級に指定されており、オズフィア大陸でも一、二を争うほどの実力者である。過去に数え切れないほどの王国を滅ぼしており、今現在この大陸に国が少ない原因の元凶でもあった。
そのあまりの存在感に俺は逃げ出したくなったが、何とか踏みとどまる。
ここで逃げたら、ローランス王国が終わる。なんとしても俺が食い止めないと。いや、倒さないと。
そうして俺はラミアにすぐ離れるように促す。
ラミアも頷き、駆け出して行く。
彼女の気配が離れた瞬間、俺は疾駆し剣を薙ぐ。
邪龍も突進し、爪を振り下ろしてきた。
互いの武器が邂逅し、均衡が生まれる。
しかし───。
「がはっ!」
剣と爪の衝突の衝撃に耐えられず、吹き飛ばされる。
樹木に背中からぶつかり、地面に倒れ込んでしまう。
奴を見ると、傷口のついた手を舐め、何事もなかったかのように佇んでいた。
強すぎる。
力もスピードもかなわない。これがSS級か。絶望のあまり俺は意識を手放しそうになるが、何とかこらえる。
ここで倒れたら終わりだ。人々も街も蹂躙され、俺の親達だって殺されてしまう。そんなの絶対にだめだ。
ここで、倒す!
「うああああああああああああっ!」
「グアアアアアアアアアアアアッ!」
勇気を振り絞り、雄叫びに変えて疾走する。
邪龍も咆哮し、俺目がけて撃進してくる。
彼我の距離が一瞬で詰まり、金の眼が肉薄する。
そこ目がけて俺は、剣を振り上げた。
邪龍も俺を叩き潰そうと、腕を振り下ろしてきた。
爪が体を掠め、衣服を引きちぎるが、気にもとめずそのまま思いきり振り切った。ブシュッという生々しい音が鳴り、邪龍の眼が真っ赤に染まり砕けた。
「グゥァァァァァァ!」
痛みに悶える邪龍から距離をとり、とどめの一撃を放つ。
「絶命斬!」
剣から暗黒の衝撃波が飛び出し、邪龍にぶつかるや否や炎が噴き出し、奴の体を襲う。炎を振り払おうと必死にもがくが、決して離れずその巨躯を燃やし尽くす。
そして、それとは聞こえない断末魔を上げ、邪龍はその場に倒れた。その直後、暗黒の炎が体を包み、完全に消滅させる。そこには奴の物らしき特大の魔石が転がっていた。
「お······終わった······」
「アルマ様っ······アルマ様ぁ!」
途轍もない疲労感と安堵感を感じ、思わず倒れてこんでしまう。ラミアがこちらに駆け寄ってくるのが見えたが、そこで俺の意識は途切れた───
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