奴隷を買おうと思ったのに
「てめえがアルマか!」
「······そうだけど?」
俺は二十人ほどの荒くれ冒険者達に囲まれていた。全員が抜刀し、俺に向かって殺気を孕んだ視線を送ってくる。
奴隷を買いに行こうとしただけなのに、とんだ茶番に巻き込まれてしまった。面倒くさい。
「てかなんで俺がこんなことされてるの?」
「このガキ······昨日のこともう忘れたのか?」
「昨日······あ、ゴルムとレストアの事か」
「そうだ!俺たちの頭領を痛めつけてくれやがって!ぶっ殺してやるよ!」
なるほど。要は敵討ちということだろうか?意外と人情があるらしい。まあ死んではいなんだけどね。それでも、色々と迷惑極まりない。
「とりあえず剣を戻したら?街中での抜刀はそれこそ重罪じゃないのか?」
「うるせぇ!知ったこっちゃねえよ!」
「······もういいや。邪魔だからどいて」
そう言って俺は道を開けるよう彼らに促す。
······が
「······ふざけるなよ。覚悟は出来てるんだろうな?」
拒否された。本当に邪魔だ。
「覚悟?なんの覚悟だよ」
「もちろん······」
「「「「死ぬ覚悟だよ!」」」」
そう言って冒険者達が一斉に迫ってくる。多対一だからだろうか。彼らは皆舐めきった表情をしながら、今にも獲物を振り下ろしそうとしてくる。
俺はため息を吐きながら、詠唱した。
「雷嵐」
荒くれ冒険者達を中心に、突風と雷鳴が轟き渡る。
触れた傍から吹き飛び、二十人全員を蹂躙する。
あまりの瞬殺劇に、吹き飛ばされた冒険者はおろか、行方を見守っていた全ての人々が度肝を抜かれ驚いていた。
そんな彼らからの畏怖と好奇の目を全て無視し、俺は荒くれ冒険者達のリーダー格らしき男の前にたつ。
「どうする?まだやる?」
「ぐ······がはっ······降参······だ」
感電によるショックと吹き飛ばされた衝撃で、ろくに動くことも出来ないほどダメージを負っていた。思った以上に力が入りすぎていたのかもしれない。
「わかった。でも、今後俺に絡んできたりしたら、その時は覚悟しておけよ」
「······わ、わかった······」
リーダーは力なく頷く。これで変な言いがかりをつけられることも無さそうだ。俺は上機嫌で奴隷商に向かった。
この戦い(一方的)を見ていた住民達によって、アルマに
「雷帝」という二つ名がついたのは別の話。
展開がゆっくりで申し訳ありません...!
次回以降はもっとスピーディーに行けたらなと!
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