いざ、ローランス王国へ
ついさっき本気を出すのを自重したくせに、早速ボロを出してしまったことを嘆いていると、馭者の人が降りて、話しかけてきた。
「た、助けてくれてありがとうございます!」
「いえ、たまたま通りかかっただけですよ」
「それでもですよ。お礼くらい言わせてください」
そう言って、彼は頭を下げる。まあ、お礼を言われるのは嫌なことではないし、素直に受け取っておこう。
「それより、先程の魔法は······」
······やっぱり。さすがに子供が上級魔法なんか使ったら何かを怪しまれてもおかしくないもんな。
「もしかして、超級魔法ですか?」
「超級!?」
え?超級?さっきの氷獄が超級魔法に見えたのか?それは流石におかしい。超級魔法なんて、相当な手練でないと習得すら難しい。
······まあ俺は使えるんだけどね?
「ちょ、超級なわけないですよ」
だがここはあえて濁しておく。変に目立つのも嫌だし。
「やはりそうですよね······」
「ええ。とりあえず詮索はしないでもらえるとありがたいです。俺にも色々と事情があるので」
「我々はあなたのお陰で助かったんです。命の恩人に詮索なんてしませんよ」
そう言って馭者さんは、はっはっはと笑う。うん、案外いい人そうだ。助けておいてよかった。
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私はルークと言います。この度はありがとうございました」
「アルマだ。まあ、無事でよかったよ」
お互いの自己紹介と軽く会話を終えた後、一応俺はルークに念押しをしておく。
「ルーク。俺は今から王国に向かうが、なるべく悪目立ちはしたくないんだ。だから、あの魔法のことはここだけの秘密にしておいてくれないか?」
「分かりました。絶対に口外しないことを約束します」
「あと馬車に他の人がいるなら、その人達にも頼む」
「はい。······もう行かれるのですか?」
「あぁ。早く街でゆっくりしたいしな」
「では、盗賊達の後始末は我々がしておきますね」
「ありがとう。助かるよ」
後始末は任せつつも、戦利品は忘れない。
そういうところは自分でもちゃっかりしてると思う。
最後にルークと握手を交わし、俺はその場をあとにする。
「じゃあな!また縁があれば会おう!」
「はい!そちらもお元気で!」
こうして、俺は異世界で初めての知り合いを作ることが出来た。そのきっかけが盗賊退治というのも変な話だけどな······
ルークと別れ、しばらく街道に沿って走っていると、壁に囲まれた大きな都市が見えてきた。恐らくあれがローランス王国の王都だろう。俺の視線の先には、何やら城門らしきものが見える。
状況から察するに、検問所のようだ。なるほど、王都内に入るには必ずあそこを通らなければならないのか。それで不審な人物がいても、街に入れないようにしているのだな。
まあ俺は何も問題ないだろう。
そうして、俺は順番待ちの最後尾に並んだ。
10分程待った後、俺の番が来た。
「ローランス王国に入国希望です」
「身分証や、ギルドカードは持っているか?」
「いぇ······田舎からの出なので持ってないです」
「わかった。それでは仮身分証を発行する。そこの水晶に手をかざしてくれ」
そうして、兵士の人は横に置いてある水晶を指差した。なんでも、この水晶で犯罪歴を調べるらしい。潔白なら青く光り、犯罪歴があれば赤く光るのだそうだ。
俺が手を置くと、当然水晶は青く光った。
「ふむ、大丈夫だな。それでは、これが仮身分証だ」
「はい。ありがとうございます」
「仮身分証は発行から1週間は有効だ。その間にギルドカードなどを作っておくと良いだろう」
「あの、なぜギルドカードなのですか?」
「ギルドカードは、身分証明にも使えるんだ」
「なるほど······分かりました。ありがとうございます」
「気にするな。仕事だからな」
こうして、俺は無事ローランス王国に入ることが出来た。
さて、宿を探すのもいいが先に冒険者ギルドで冒険者登録しておこう。モンスターの換金とかもしたいしな。
そう考えて、俺は冒険者ギルドへ向かった
恐らく次話で序章(?)が終わると思います。
次章からは、本格的に冒険していくと思うので、
色々諸々よろしくお願い致しますm(_ _)m




