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世界大会編「にたものどうし」

インターナショナル杯も早いもので佳境に入る。

次なる扉べスト4を目指し4試合が行われる。

俺たち日本はトリノにて、メキシコと対戦するのだが、ある意味ではこの試合はベスト8で最も注目度の高い一戦だった。

俺たちは開催国イタリアを、方やメキシコは優勝候補の呼び声高いフランスを撃破して迎える一戦だからだ。

サッカーの醍醐味の一つにジャイアントキリング、即ち「大物喰らい」だ。

両チームともジャイアントキリングで勝ち上がったもの同士、現地誌でも1面で紹介されたのは日本とメキシコの体格が同等だということ、選手全員がハードワークする事なスタイルの類似が見られるという事だ。

似たもの同士の1戦が開かれようとしていた。

「丈留ちゃん、俺実はさ。」

俺は浪速のストライカーはウォーミングアップでペアになっていた。

泣けられたボールをインサイドでダイレクト、太ももと胸トラップして再び返す、そして高く投げられたボールをジャンプヘッド。

どの年代でも行われているようなウォーミングアップだが、ナショナルチームでもそれは一緒だった。

「どうした?」

「鳳条の時すごく居心地悪かったんや。」

「そうは見えなかったけど?」

鳳条高校は高校サッカー界の超名門。樫原や光宗はその中でも頭一つ抜けた存在だった。

「勝つのが当たり前って感じ、そんなん有り得へんやろ。負けようもんなら相手は大喜びやで。会場の空気もメディアも。王者陥落って。それ見たくない一心やったから高校サッカーは正直しんどかったわ。」

「俺は常に挑戦者側だったからな。」

「そやねん、お前と同じチームに入って挑戦して、負けて、また挑戦して。めっちゃおもろいわ。」

ふわりと俺が投げたボールを光宗は頭でインパクトした。

「メキシコもそういう奴らの集まりかもしれんけど、俺らはあくまで挑戦者やで!勝つぞ!」

「おう!」

会場の証明に照らされたからなのか、光宗の羽ばたいた姿は眩かった。

インターナショナル杯ラウンド8、イタリアの超名門、「貴婦人」の愛称を持つクラブのホームスタジアムでメキシコとの一戦は開かれる。

連戦が続き、披露が色濃く押し寄せる中、メディカルスタッフや料理人などの尽力もあってリカバリーは順調に行われた。

しかし舞川さんのコンティションは芳しくなく、この日はベンチからも外れた。騙し騙しになると本人は悔しそうに言っていたが、スタメンに抜擢された光宗は身体がキレている様子だ。

何よりマッテオーリからの「期待している」発言が刺激になったようだ。

ダークホース同士の一戦が幕を開け、俺たちはまず主導権をとるために落ち着いてボールを繋ぐ。

右サイドバックの司令塔、唐澤さんがボールを動かし、光宗が前線で積極的に動きをつける。


前半7分に実村さんが放ったミドルはポストに直撃するなど俺たちは首尾よく試合に入ったと日本の実況アナウンサーは盛り立てていたが、解説の修さんは冷静だった。

「実際ゴールしてませんからね。フランスも試合運びは良かったんですよ。」

フランスは違和感の糸口を見つけられないままメキシコに敗れた、それは俺たちのスカウティングでも明確だった。

修さんが懸念したように前半試合を支配している感覚を持ちながら、前半終了時、実際のチャンスクリエイトはメキシコが多かったとスタッツには表示されていた。

「外から見たらカラクリも何もないな。」

「ああ。」

バソングとジェルマンは静かに戦況を見つめていた。

クロウは「ムカつく」の一点張りでバカンスに向かったと樫原が言っていた。

しかしながらインターナショナル杯が終わればまたすぐに新シーズンのキャプインだ、切り替えも大事になってくる。

「メキシコはやる事をシンプルにやってるだけだ。」

「ボールを持たされて、主導権を握ってると色気が出てしまうんだな、メキシコは常に弱者でいる。」

「その点シャルドネは途中からだから関係なかったんだろうな。」

「日本も気付いてはいるんだろうが、如何せん前線の彼が空回りしている。」

パチンっと頬が叩かれる音がした後、ロッカールームには張り詰めた空気が流れていた。

慌ててスタッフが制止するが冷静な男の口振りは収まらなかった。

「しっかりしろよ!!試合になんねーんだよ!」

光宗に怒号を上げていたのは彼の高校時代のチームメイト樫原だった。


お久しぶりです!!

お盆休みが終わって、少し更新をお休みしていました!

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