世界大会編「選択肢」
インターナショナル杯の決勝トーナメント第1戦は開催ふ国イタリアと初のベスト8を狙う俺たち日本。
両者の睨み合いが続いた前半は0-0。
世界のサッカーファンたちもこの試合には大注目していた。
グループリーグの戦いが評価された俺たちがどこまでアッズーリを苦しめることが出来るか。
日本では各地でパブリックビューイングが行われ、俺の母校山の麓高校でも体育館に特設スクリーンを置かれ、皆が応援してくれているそうだ。
俺たちは後半のピッチへと向かうも、イタリアは前半とは違うフォーメーションでそれぞれがポジションについていた。
あろう事かセンターフォワードのクローネが左サイドに、センターにセルジーニョが位置している。
中盤の三角形もフラットに並んでいる、キックオフすると3枚の中盤は素早く入れ替わる事でマークを撹乱し、賀茂さんのマンマーク対策をとってきた。
前半に比べ、パス回しのテンポが上がる。
「目には目を歯には歯を。」
「あーうぜ。やる事が小賢しいぜ。」
スタンドのフランス代表バソングは冷静に戦況を、クロウは退屈そうにガムを噛む。
バソング曰く、イタリアは俺たちの明確なゾーニングに対してポジションを入れ替える事で変化を与えようという所だ。
最も、可変フォーメーションのように攻撃時、守備時、と言う訳ではなく、ある意味無秩序だ。
そうして、前半中盤に差しかかるところでイタリアにチャンスが生まれる。
上背の低い米田さんの頭上目がてロングボールを付けると今度は右に流れていたクローネが競り勝ち、セルジーニョの下にボールが流れる。
「させるか!·...しまった!」
セルジーニョがダイレクトで叩いたシュートのブロックに入った勇士さんの足に当たり、コースを変え、ボールはゴールへと向かう。
皆の足が1度止まる、瞬間だ。
コンマ1秒、ただ1人の足だけは動いていた。
ステップの逆を取られた徳重さんだったが、素早く逆方向に踏み直し懸命にジャンプ。
片手でハンドリングしたボールに逆手を被せるようにキャッチング。
「よっしゃぁ!」
徳重さんは雄叫びを上げ、直ぐに前線にロングスローする。
舞川さんが綺麗に収めてカウンター開始。
「頼んだ!ヨネ!」
「任せて!マイちゃん!」
自陣から俺と実村さん、橋本さんと米田さんが猛スピードで上がり、舞川さんは振り向きざまに米田さんに預ける。
米田さんはドリブルでシリウスを交わし、ゴールまで25m。
シュート体勢に入る。
「前半見たから大丈夫、はしもっさん!」
神速のスピードでカバーリングに入ったマルケッティを嘲笑うかように引き付け、アウトサイドでボールを流す。
フリーランニングしていた橋本さんがボールを持つと、唐澤さんがオーバーラップ、一瞬対面したバルデスの視線が向くのを確認して右足を振り抜く。
橋本砲には2週類がある。
地を這うような低弾道のシュート。
そしてもう1つが不可測のブレ球。
今回は後者、変化の瞬間が遅く、キーパー手前でボールがガクンと落ちる。
イタリアGKのレイモンティはギリギリ体に当ててボールはこぼれる。
「信じてたからブレ球にしたぜ!若造!」
俺も信じていた、橋本砲の効力を。
膝下のボール、丁寧にダイビングヘッドでねじ込む。
ついに均衡したゲームに風穴が空く。
堅いイタリアディフェンスを陥れたのはカウンターだった。
徳重さんがキャッチしてからゴールまで実に18秒。
人数をかけてのカウンターだったので、守られていると一転してピンチだったが、賭けに買った形だ。
スタンドには悲鳴が走り、異様な雰囲気を放つ。
俺は徳重さんの元へと走った。
「やったな!丈留!」
「いえ、シゲさんのお陰です!」
「キーパーは最後の砦、そして最初の槍だ。」
徳重さんは大きな手で俺の頭を鷲掴みして微笑んだ。
「いや丈留!俺は!?」
「橋本さん、交代です。」
指さす方向はピッチサイド。電光ボード示されていたのは橋本さんと樫原との交代だった。
橋本さんは「ひっでぇ!」と言いながらピッチを去る際、俺は「ナイスシュートでした!ありがとうございます!」と声を掛け、ハイタッチした。
一方で失点したイタリアだったが実に落ち着いていた。
残り時間は15分。
大観衆のスタンドはイタリアを後押しするように大きな声で歌い出す。
「何としても守りきるぞ!」
こちらも竜崎さんの掛け声のもと、守備体制を整え、試合は最旬局面に入る。
Jリーグも再開して海外サッカーももうすぐ開幕、DAZNの生活が再開しそうです。笑




