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世界大会編「我慢くらべ」

インターナショナル杯決勝トーナメント1回戦、イタリア対日本。決勝トーナメント1回戦の会場は首都ローマのオリンピアスタジアム。

スタジアムは大観衆でそのほとんどがイタリアチームの青で埋め尽くされている。

まるで周囲から波が襲ってくるような圧迫感に陥る俺たちだが、怯むわけには行かない、日本サポーターも恐怖と戦いながら俺たちを後押ししてくれているからだ。


「歴史を変える一戦」

日本では数日このキーワードが報道された、発したのはキャプテンの竜崎さん。

先人達の想いを引き継ぎ、そして未来を作る者たちへのメッセージにしなければならない。

熱く語った竜崎さんの言葉を胸に俺たちは運命の1戦のピッチに経った。


イタリアの選手達は非常にリラックスしているように見える。

まさかここで敗れるとは思いもしていないだろう。

フロックを起こしたい。

ガーナ人主審のメンディの笛がなり、俺たちのキックオフで試合が始まる、近年のルール改正によってセンターサークルに選手2人が立ち並ぶ光景は見られなくなった。

舞川さんは後ろにボールをフリックする。

このボールを勢いよく相手陣内へと蹴りこんだのは実村さん。

精度の高いボールは相手陣内へと入り、俺たちはライン全体を押し上げる。


イタリアはバックラインからボールポゼッションを開始し、俺たちに揺さぶりをかける。

青い目をしたセンターバックのマルケッティは挑発を揺らし、緻密なポジション取りをする、ボールを離したら直ぐにポジションを修正、ボールを受ける体制になる。

パートナーのバルデス、右サイドバックカルモナ、左サイドのシリウスも同様でテンポよくボールを回す。

「うーん、おかしいなぁ、こいつら前プレかまして来ないぜ。」

バルデスはボールを回しながら首を傾げる。


「プレスの破壊を警戒したのか。」

スタンドには俺のチームメイトであるバソングが戦況を見つめていた。

そしてその隣には樫原のチームメイトであるクロウ。

「馬鹿みてぇに前からプレスかけていなされる奴らは何度も見てきたな。」

「あぁ。イタリアみたいなチームに無闇なプレスは危険だ、かえって攻撃をスピードアップさせてしまう。」

「まぁあれだな。正確なポジション取りこそがデュエルの勝率を上げるってとこだな。んな事より、カタギハラはなんでベンチなんだよ。腹立つなボンクラ監督。」

「お前すっかり手懐けられたんだな。」

頭を掻きながら「んな事はねぇよ。」と照れくさそうに言うクロウだが、今季は樫原と共にイングランドリーグで大暴れ。

フランスは翌日に決勝トーナメント初戦を控えている。


スタンドの二人の会話通り、俺たちはこれまで行ってきた前線からのプレスを局面的に封印するという戦術になった。

コンパクトネスを保ち、賀茂さんがジョゼへのマンマーク、俺と実村さんでコンティの受け渡し。

それぞれの役割を明確化して、無理なプレッシングを控える事でイタリアの思惑である「プレスの破壊」を防いだ。


細やかに動き回るジョゼにすっぽんの様なマークを続ける賀茂さんは何やら挑発をうけている。

「おお、おう。くっつき虫かよお前は。」

「人が嫌がる仕草意外と好きなんだわ、俺。」

「お前の名前は覚えてるぜ、カモ。確かお前達が降格した試合勝ったのは俺たちだったよな?」

「ああ。あれは悔しかったね。でも俺、あの試合お前には何もさせてないから」

ニコリと歯を見せる賀茂さんに舌打ちをしてジョゼはまた動き直す。

イタリアリーグに所属する賀茂さんは今季降格の憂い目を味わったが、ジョゼとの対戦では何もさせなかった経験がある。


ジリジリと時計が進む前半、イタリアを後押しするようにサポーター達がウエーブを作り出す、一見娯楽性が少なく、「退屈」に見える試合だが、緻密なデュエルの数々に目の肥えたサポーター達は満足しているようだ。


「ノーファールだろ!」

左サイドから右サイドに流れていたセルジーニョが右松さんの接触を受け右サイドからのフリーキックを獲得する。

右松さんは触れていないと主張するも聞き入れられず、ゴールから30メートル離れた所でボールはセットされる。

「ここ集中だぞ!」

竜崎さんが大きく手を叩き、声を出した。

この試合はじめてのピンチを迎える事になる。

W杯感動の連続でした!

そしてもう4年後に向けた戦いは始まったわけですね!

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