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世界大会編「ケースバイケース」

ドイツとの激闘を終えた翌日、俺たち日本代表は一先ずのリカバリーに励んでいた。

ホテルのプールには氷水が浮かんでいる、急速に体の温度を冷やす事で蓄積された筋疲労を回復させる。

しかしながらこれが冷たい、情けない声を上げたくもなるが我慢する。

そんな俺をよそに浪速のストライカー、光宗は「つっめてぇー!」と大きな声を出しては高校の同期、樫原に咎められている。


その傍らのプールサイドではメディカルスタッフの葛城(かつらぎ)さんはある1人のプレイヤーの施術を行う。

「舞川、次の試合は休め。」

「葛城さん!俺は行けるって!!」

膝に大きなテーピングを巻く舞川さんだが実は膝に爆弾を抱えているそうだ、長いシーズン身体を張るプレーで既にボロボロらしい。

体調不慮と称したあの時も実は身体のメンテナンスに務めており、マッテオーリはこれを理解している。

「舞川、言葉を慎め。葛城さんに謝れ。」

葛城さんからの宣告に食ってかかった舞川さんだったが、キャプテンの竜崎さんは見逃していなかった。

「でも、やっとここまで来れたのに。次負けたら意味がないじゃないですか!...いてっ!」

舞川さんの大きな頭を小さな拳が捉える。

「マイちゃん頭冷やしなー。俺たちが負ける?流石にムカつくよ。」

米田さんは頬を膨らまし、腕組みする。

周りの選手達は各々に「俺たちを信じろ」と言葉をかける、もちろん氷水に顔をしかめながら。

「舞川!お前がいない間に絶対俺のサイドは割らさない!」

「右松...空回りするなよ...」

「くっ!何をっ!」

犬猿の仲だった二人は今でも口ではいがみ合うものの、すっかり信頼しあう仲になったようだ。

こうしてスイス戦の欠場が決まり、舞川さんは一足先に決勝トーナメントに向けてのコンディション調整に入る事になった。


ドイツから中3日、俺たちは試合前日の非公開練習を行っていた。

俺はサブ組のビブスをつけていた、決勝トーナメントも見据え、1節、2節は大きくメンバーを交代する事になった。

総力戦で臨む第3戦、引き分け以上で突破が決まるが、敗戦すると一転して脱落の可能性もあるため予断はならない状態だ。

そして、気になる情報が入っていた。

スイスは大会直前に怪我を負っていた2選手が復帰するそうだ、この2人はセンターバックであり、云わば守備の要を欠いての2試合だったらしい。

これがとう言う事か、俺たちは前線のターゲットマン舞川さんを欠いて戦う。


「+2と-1」と現地誌では報じられていたが、マッテオーリは会見でこれに遺憾の意を示した。

「私たちは+とか-とかそういう物差しでメンバー選びをしていない、23人全員でJAPANだ。敬意を書いた報道は黙ってはおけない。」

これを宿舎で見た俺たちは団結を高めた、特に代表初先発の光宗の瞳には闘志が漲っていた。

怪我の仲間、自ら矢面にたった監督の意思表明。

グループリーグ突破をかけた第3節を迎える。


いやー、W杯が待ちきれません!!

私の注目チームはズバリ!アイスランドです!

小国がどこまで世界の舞台で力を示せるのか、楽しみです。

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