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世界大会編「小兵」

残り25分、焦りは時間を、そして余裕を奪う。

しかし俺たちは決して焦れる事無く試合を運ばなければならない、ドイツは俺達のスキを睨んでいる。

さらに、前半からホルンに対して激しいプレッシャーをかけていた俺と賀茂さんは少しずつ、体力の消耗を感じていた。

しかしベンチは動かない、樫原と南川さんはうずうずとピッチサイドから視線を送り、光宗は必死に声をかける。

「丈留!折れたらあかんで!!」

やはりドイツには勝てないのか、ネガティブな思考を打ち消したのは頼れるキャプテンだった。

俺たちのマークを剥がしたホルンにクリーンなタックルを決めロングボール。それから大きく手を叩く。

「みんな!引くな!辛い時こそ立ち向かうんだ!」

ディフェンスライン、連動して中盤と大きく押し上げる。開きかけていたポジションにコンパクトさが復活する。


そしてロングボールの先には舞川さん。

「よっし!ヨネ、頼んだ。」

屈強なドイツセンターバックに対して、腰を低く入れ、圧力を緩和する。

そして胸でボールを落とす。

ポストプレーを得意とする舞川さんだが、以前はゴールに特化したFWで組み立てには参加しなかったそうだ。

転機になったのは米田さんと臨んだ年代別世界大会ドイツ戦。

海を渡っても当初は苦しんだが、何度もプレーを見直し、今のポストプレーを確立したそうだ。


「最高の落としだよー。」

落としに反応したのは米田さん。

絶妙な右足ワンタッチでドイツセンターバックのあいだに割って入る。

「低身長は武器だよ。」

以前米田さんが言っていた言葉だ。

身長で劣る米田さんがこれだけ活躍出来るのはドリブルだけではない、「トラップ」の正確性だ。

ワンタッチ目で相手の懐に入るプレーはとりわけ高身長の相手の急所をつく。

キーパーと1対1を迎えた米田さんはキーパーを交わし、無人のゴールに流し込む。

ボールはゴールを捉えていたように見えたが、めくれ上がった芝で軌道が変わりポストに直撃。

「ドイツリーグMVPの俺を忘れてもらったら困るぜ。」

橋本さんは開幕戦に続き、嗅覚を研ぎ澄ましていた。

後半37分、同点。

「よっしゃ!みんな来いよ!· · ·アレ?」

ゴールを奪った橋本さんの視線の先にはピッチサイドで揉みくちゃにされる舞川さんと米田さんだった。


俺はゆっくりと橋本さんのもとへ歩み寄る。

「橋本さん、ナイスゴールです。」

「丈留。やっぱりお前は良い奴だぁ!」

橋本さんから少し鬱陶しいくらいの抱擁を受けた後、俺たちはリスタートに向かう。

ベンチは慌ただしく交代の準備を進める、米田さんに変えてヤンコ、舞川さんに替えて光宗。そして三枚目は消耗の激しい賀茂さんから守備的プレイヤーの垣屋さん。

監督からのメッセージは「失点しない事」、この試合勝ち点を失わないための指示だ。

右サイドのゾイドが仕掛ける先には右松さん、冷静さを取り戻した彼はゾイドに対して間合いを作らせる前に身体をぶつけ、ボールを奪う。

そしてホイッスル。

1-1のドロー決着だが、格上のドイツに対して健闘、と言いたいところだが、今回内容で見ると完敗だ。

その意味を理解している俺たち日本代表には安堵の色は無い。

「アフロマン、お前との戦いはまたの決着だな。」

「けっ、思ったよりもやるみたいだなお前。」

「それからお前、俺の事舐めてただろ?」

「いてててて!」

右松さんは力を込めてシェイクハンド、ゾイドは苦笑いを浮かべてロッカールームに向かって行った。

「おい、タケル、たったか?大会終わったらウチに来い。監督に推薦するぞ。」

「気が早いよ。とにかく、またやろう!」

覚束無い足取りでホルンは俺へ勧誘してきた、流石に移籍の話は時期尚早だ。


勝ち点を4に積み上げた日本代表の第3節は曲者スイス。

グループリーグ突破をかけて戦う。


代表選考、色々言いたい事はありますけどここから文句を言わずに応援します!!

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