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世界大会編「ミスマッチ」

 サッカーの祭典、インターナショナル杯。

 クラブチームの名声がヨーロッパコンペディションだとすると、ナショナルチームではインターナショナル杯がそれに当たる。

 国によって目標は様々だ。

 サッカー発展途上国は一勝を目標に掲げているチームが多く、王国ブラジルやアルゼンチン、スペインなどの列強国は優勝はもはや至上命題だ。

 開催国イタリアと今日の俺たちの対戦相手ドイツもそれに当たる。

 イタリア、フィレンツェの夜では熱い1戦が繰り広げられていた。



 前半を終え、俺たちはロッカールームで後半に向けてのマッテオーリから指示をを受ける。

「うーん、腹が立つな、あいつら。」

 俺たちはポジショニングの修正などを受けると思っていたので、通訳の伊藤さんからの言葉に口をあんぐりとさせた。

「まぁなんだ。

 おまえ達は悪くなかったぞ。

 しかし、あのゲッツェルトの鼻を明かしたい。」

 戦術家のマッテオーリがここまで感情的な言葉を羅列するのは初めてだ、余程ゲッツェルトが嫌いなのだろうか。

 一呼吸置き、しばらくしてからマッテオーリはホワイトボードのマグネットの位置を入れ替える。

「ヨネダ、カタギハラとポジションチェンジだ。

 マイカワの近くでプレーしなさい。」

 サイドアタッカーの米田さんを中に持ってくる案に俺たちは驚いた、右松さんは「監督!正気ですか?」と声を荒らげたが、竜崎さんに制止された。

「まぁ、ともかく勝って来い。

 話はそれからだ! あの鼻くそ野郎をやっつけちまえ!」

 おおよそ、小学生が言うような言葉を通訳の伊藤さんは恥ずかしげもなく訳す。

 彼もまたプロフェッショナルだ。

 伊藤さんもかつてはサッカー選手を目指した過去があるそうだ。彼は握りこぶしを掲げ、「行こう!」と口にした。


「マイちゃん、分かってるよね?」

「もちろんだ!」

 米田さんは指示通り舞川さんの近くにポジションをとる、運命の後半が幕を開ける。

 後半もドイツがボールを保持する、対して俺たちは焦らずにしっかりブロックを作る。

 前半、ホルンにしてやられた俺と賀茂さんはマークの受け渡しをより明確にする。

 相変わらずゆらゆらとピッチを彷徨うホルンだが、常にアンテナを張り巡らせ、バイタルエリアに蓋をする。

 しかし、ドイツにはもう1人のキーマンがいた。


 アフリカ系のアフロヘアー、右サイドのゾイドだ。

 前半はあまり目立たなかったが後半に入ると果敢にボールを呼び込む。

 エジプトのアルのドリブルが初速型とすると、ゾイドのドリブルは「間合い型」だ。

 ボールを持ったゾイドはアウトサイドで試すようにツータッチする、対峙する右松さんも用意に飛び込まず、サポートを待つ。

 挑発するようにゾイドは笑う。

「誰かが助けてくれるって? ほらよ。」

「何?...クソがっ!」

 ゾイドは右松さんにボールをぶつけ、右松さんは跳ね返ったボールをクリアする……

 しかし、振りかぶった足は空を切っていた。

 ゾイドが巧みに右松さんの股下にボールをバウンドさせ、抜き去る。

 ヤンコと竜崎さんはカリウへのクロスを警戒する、角度的にシュートは厳しい。

「え?」

 センターバックの二人が思わず声を上げた、あろう事かそのままゾイドがドリブルで仕掛けてきたのだ。

 ゾイドのドリブルのタッチに合わせてキーパー徳重さんが体勢を倒し、キャッチングに入る。

「クソっ! させるか!」

 これも計算していたのか、ゾイドは鼻を鳴らす。

「ふんっ、一丁上がり♪」

 ボールをふわりと浮かし、宙を舞った後、受け身を取りながら転がり込む。

 徳重さんの体に足が触れていた。

 主審は迷わずペナルティスポットを指さす。

 オブストラクション。

 ボールのないところでの進路妨害、ドイツボールのペナルティキック。

 日本陣営必死の抗議も判定は覆らず。

 キッカーのホルンは落ち着いて右隅に沈めてドイツが先制点。

 時計の針は残り25分を示していた。


 ピッチサイドでは米田さんと光宗が準備を進める。

「監督、そろそろ米田替えますか??」

 かつての世代別代表の監督、秋山さんはヘッドコーチ。

 マッテオーリに交代を仰ぐ。

「いやもう少し待とう。」

 ドイツに因縁を持つ米田さんと舞川さんは結果を残す事が出来るのだろうか。


我が心のクラブインテルがついにやりました!!

反対にラツィオが気の毒でなりませんでしたが...

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