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世界大会編「ベース」

 イタリア、スタディオフィレンツェにてインターナショナル杯第2節日本対ドイツは行われていた。

 この試合両者ともに勝利で勝ち抜けが決まるため、ベストメンバーを揃えてきた。

 前半主導権を握ったのはドイツ。


 ドイツは見事なパスワークで俺たちを押し込んでくる。

 選手の距離感が素晴らしく、ボールの取りどころを定められない。

 賀茂さんがボールを奪うが、すぐに3、4人で囲んで奪い返してしまう。

 悠々自適にプレーする彼らに対してなかなか糸口がつかめない俺たちだがこの展開は想定内で爪を研ぎ澄ませる。


「ふん、相変わらず手堅いメンバーだな。

 気に食わん。」

 ベンチで爪を噛むのはマッテオーリ、前任のクラブチームの監督時代、ドイツ指揮官のゲッツェルトと火花を散らした過去がある。

 マッテオーリはメンバーを固定せずにローテーションするやり方、一方ゲッツェルトは主力メンバーを固定し、戦術の浸透を測っていた。

 しかしながらマッテオーリはゲッツェルトに直接対決での勝利がなく、苦手とする相手だ。


「ドイツ本当につまんないよね。

 なんかポゼッションはポゼッションなんだけど、手堅いというか。

 これならジャポネーゼの方が見てて面白いよ。」

 スタンドでは欠伸をしながらイタリアの太陽セルジーニョは語る。

 イタリアは第2節も圧勝、早々と首位通過をほぼ確実とさせた。

「そのつまんない相手に僕らは去年負けたんだけどね。」

 隣でスマホを弄るのはイタリアのコンダクターであるコンティ。

 ツーブロックの頭に爽やかなルックスは今大会1番と言われている。

 昨年イタリアは国際親善試合でドイツに0-2と屈している。

 怪我でセルジーニョを欠いていたとはいえ、完敗だった。

「まぁ、俺らのバックラインと一緒でさ、ある程度メンバーが固定できるのは強みっちゃ強みだけどね。」

「ああ、とりわけ中盤から前はサブ含めて2チームのみだからな。

 連携なんてまるで問題無しさ。」

 2人が話すように、ドイツは国内王者ミュウヘンFCとFCルールという2チームからメンバーが過半数選出されている。

 ナショナルチームの戦術の落とし込みは難しいとされるが、これこそ、ゲッツェルトの策だ。

 合理的だが、国外でプレーする有望株たちを選出しないやり方には疑問符も付く。


 試合に目を移すと相変わらずドイツはボールをキープする。

 すると、司令塔のホルンが、ゆらゆらとピッチを彷徨うようなポジショニングをする。

 これがスイッチの合図だったのか俺と賀茂さんの前に現れたホルンにボールを通したが、ホルンはこれをスルーする。

 完全に虚を突かれた形になる俺と賀茂さん。

 ストライカーのカリウが裏に抜け出す。

「まだだ!」

 竜崎さんがギリギリで足を伸ばしボールに触れる、しかしこのこぼれ球にはスルーした後もフリーランしていたホルンが反応していた。

 利き足の左でシュート体勢に入る、ヤンコ、そして徳重さんが身を呈してブロックに入るが、いつかの今シーズンのキャピテンヌのループを思い出す。

 嘲笑うかのような放物線を描いたシュートは二人の頭上を越えて、ゴールイン。

 ビューティフルゴールに会場は心を奪われる。

 ピッチサイドでは、ゲッツェルトは会心のガッツポーズをマッテオーリに見せ付ける。

「いや、ノーゴールだ。」

サイドバックの唐澤さんは落ち着いてアシスタントレフリーと主審にビデオ判定、「VAR」を要求する。

 主審はすぐさま映像を確認するため、ピッチサイドへ。

 スタジアムに緊張感が走る。

 判定を終えた主審は駆け寄り、オフサイドの裁定を下した。

 安堵する俺たち日本イレブン、どうやら抜け出そうとしたカリウがオフサイドだったようだ。

 マッテオーリはゲッツェルトを見て、舌を出して「あっかんべー」とでも言いたそうな表情を作った。

 前半はこのまま終了し、0-0。

 しかしながらチャンスがまるで作れなかった俺たちの足取りは軽く無かった。

 後半に向け、修正が必要になりそうだ。

 そして、まだ目立っていない舞川さんと米田さんは何かを確かめあっていた。

 秘策があるのかもしれない。

 グループ突破を賭けた一戦は後半戦へと戦いの場を移す。

メンバー発表、どうなるんでしょうかね。

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