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世界大会編「準備万端」

 ついに開幕したインターナショナル杯、俺たち日本はグループB第1節、セネガル戦の渦中にいた。

 裏側のカードでは優勝候補ドイツがスイスを3-0とリードしているようだ。

 そして2カード共に、試合終盤を迎えようとしていた。


 がっぷり四つで互いに激しい球際の競り合いで主導権を握らせない。

 前半は試合をコントロールしていたが、後半に入りエジプトがファイトしてきた事で俺達も簡単にボールを繋げない。

 そしてエジプトは徹底してアルにボールを集める。

 全ての選手、スタッフ、国民の期待を背負うウインガーは繰り返し、右サイドで仕掛ける。

 しかし、俺たちの左サイドを守る右松さん、そしてサイドアタッカーの米田さんが連携して守る。


 サブメンバーはピッチサイドでウォーミングアップを進める、難しい顔をして舞川さんの足が止まる。

「アルのドリブルは重心が低いのもあるけど、間合いが取れないんだよ。

 とにかく速い。」

「舞川さん、それダジャレっすか? あるけどって・・・」

「光宗、殴られたいのか?」

 舞川さんは光宗の頭を掴む、先発落ちの悔しさから力がこもり、光宗はいつも通りやかましく騒いだ。

「舞川! 行くぞ!」

 舞川さんは走ってベンチに向かい、マッテオーリからの指示を仰いだ。


 アルの左足のミドルが枠を外れたところで、交代ボードが点灯する、交代するのは米田さん。

「お疲れ、ヨネ。」

「ほんと疲れたよ、すぐるんいないとしんどい。」

 2人はユース年代からの戦友、誰より互いの事を認め合っている仲だ。

 この試合守備にエネルギーを割かれた米田さんはどっと疲れた様子で舞川さんとスイッチした。

 フォーメーションは実村さんが左サイドに周り、舞川さんは最前線に入った。


 相変わらずアルは貪欲に仕掛け、ついに右松さんと実村さん、カバーに入った賀茂さんも剥がし、ペナルティエリア深部まで突入する。

 アルは角度のないところから中に陣取ったエジプトFWに目配せし、キックの体勢に入る。

「なに!? クソっ!」

 意表突いたアルはゴールキーパー徳重さんの股を抜くシュートを放つ。

 ボールはゴールネットを揺らそうと転がる。

「お前なら狙うと思ったよ。」

 ゴールライン上にいたのは竜崎さんだった。

 今シーズン、アルに対してリーグ戦での対戦経験がある竜崎さんはボールをクリアし、ペナルティエリア付近、俺の前にルーズボールが訪れる。


「丈留!」

 俺は多少アバウト気味だったが、舞川に向けてロングボールを配球する。

 センターサークル付近、舞川さんはカウンターのリスクマネージメントに残っていた相手センターバックとアンカーの選手を背負い、ボールをキープする。

 膝下に重心を起き、ボールを死守する、舞川さん。

 相手ディフェンダーはたまらず強引に体を入れようと腕を引っ張る、レフェリーの口元にはホイッスルが。

「まだだ!」

 脅威の粘り、日々ヨーロッパの大男達に対しても屈しない強靭なフィジカルで反転する。

「あとは任せたぜ、若造共。」

 カウンター一閃。

 舞川さんは倒れ込みながら前線にスルーパス、その先には樫原と俺が完全に抜け出していた。

「やっぱり主人公は君だよ。」

「ナイスパス。」

 ボールを持った樫原はキーパーを目前にして俺にパス、後は流し込むだけだった。

 後半40分。

 エジプトが前がかりになった結果生まれた広大なスペースだった。

 日本の指揮官マッテオーリはしてやったりの表情。

 前半実村さんをゼロトップとして起用してのポゼッション、後半疲れたタイミングでボールがキープ出来る舞川さんの投入。

 全てはこの布石だった。


 第1節はこのまま勝利。

 幸先のいいスタートを切る事が出来たが、裏側のカードではドイツがさらに追加点をあげ、5-0。

 俺たちの次戦の相手はこのドイツ。

 歴戦の猛者との1戦に向け、すぐに俺たちは切り替えた。

い、イニエスタが!?

と、トーレスが!?

実現するかはさておき、ワクワクが止まらないですね!

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