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高校編最終話「旅立ち」

やっと一区切りです!!

思ったより時間がかかりました!

今回の話を作る時にイメージした楽曲はflumpoolの「明日への賛歌」です!

 選手権予選が終わって1ヶ月が経とうとする12月25日、俺は美由と裕樹とクリスマスパーティを開いた。

 ケーキを頬張る途中、周りを見渡して不思議そうに裕樹は口を開く。

「なぁ、光希ちゃんは?」

 相も変わらず光希は俺と口を利いてくれなかった。

 権田川さんに事情を説明して返答期限は少し伸ばしてもらった。

「友達の家でクリスマスパーティって置き紙あった。」

「はぁ? まだ光希ちゃんと喧嘩してんの?」


 俺はオファーの事も含めて2人に事情を説明した。

「まぁお前にプロの話が来てるのは知ってたけどな。」

「そうね。渋ってる理由も大方そんなとこだと思ったわ。」

 こいつらには敵わない、十年以上の付き合いだ。

「で、光希ちゃん、聞いてた?」

 裕樹がニタリと笑い、ドアに向かって声をかける。

 少しして、ドアが開く。そこには光希がいた。

「なんでお前ここにいんだ!?」

「ごめんな、丈留。

 俺たちの嘘ついてた。

 光希ちゃんから相談されてたんだ。」

 少しだけバツが悪そうに裕樹は両手を俺の前に合わせた。

 そして光希は俺に目の前まで向かってある資料を突き付けた。

「私、ここに行くから! お兄ちゃんは余計なこと考えなくていいの!

 本当にやりたいことやって!!」

「光希...お前。」

「私が店を継ぐ! 私がパパとママのラーメンを世界一にする、お兄ちゃんは世界一の選手になる!」

 流れる涙を必死に拭いながら訴える光希に母さんの強さと優しさを思い出した。

「強くなったな、ありがとう。」

 光希が差し出した資料は全寮制の調理科のある高校だ。

「ここまで言われてやらない男じゃねぇよな?丈留!」

「飛び込んできなさい!振り返ればいつも私たちがいるから。」

 裕樹と美由は背中を強く叩き、少ししてから4人でクリスマスパーティーを続けた。

 俺の門出を祝うように外では白い雪が降っていた。



 翌日、俺は権田川さんと予定の場所で交渉の席についた。

「どうして俺を取ろうと思ったんですか? 俺より上手い奴なんて何千何万といるはずです。」

 理解したという表情で権田川さんはタブレットを用意して、チームデータと俺のデータを掲示した。

「まず、君のボックストゥーボックスのプレースタイルがうちの戦術に非常にマッチする。

 次に無名高校の無名選手を取るというのはかなり話題性に富んでいる、活躍すればグッズも売れるだろう、大きな経済面での効果を生む。」

 さらに語気を強め、タブレットをしまい、「これは必要ないな」と続けた。

「これが一番の理由だ。

 君のプレーには理屈で説明出来ないような、人を惹きつける何かがある。

 俺はそこが気に入った。俺自身君のファンだ。」

 俺はこくりと頷きこう言った、そしてガッチリ握手を交わした。

「よろしくお願いします!

 長い付き合いになると思いますが、必ず権田川さんの期待に応えて見せます!」

「ああ、よろしく!」



 年が明け、入学先の有力大学の練習に早くも参加している天津川と食事に出かけた。

「大学サッカーはどうなんだ?」

「ああ、めちゃくちゃレベル高い。

 ユースチーム上がりの奴とか全国レベルの同い年がうじゃうじゃいるし、先輩にはU世代のレギュラークラスもいるからな。」

 少し参ったと言うよな表情とは裏腹に天津川の声色は楽しげだった。

「そうか、そういえば鳳条の貴瀬も進学するんじゃなかったか?」

「ああ、ムカつくぜ、もうトップのスタメンで練習参加してやがる。

 噂では盾垣はうちのライバル大学に進むらしい。」

「みんな、新しいスタートだな。」

「丈留、お前には先越されちまったけど必ず追い付くからな、いや追い越すからな!

 俺がプロに入るまでに引退とかやめてくれよ!」

「ハハハッ。

 俺も負けねぇよ!」

 舞台は違えど俺たちのライバル関係はこれからも続いていく。



 卒業式。

 暖かい風が吹き始める頃、俺はスタートラインに立つ。

 シャッターを切る光希。

 光希もまた、見知らぬ土地で新たなスターを切る。

「取りますよー! サッカー部のみなさん! ほら、お兄ちゃん笑って!」

「光希! お前が撮ってるんだよ!」


 集合写真の最中、耳元で裕樹がささやいた。

「おい、丈留。

 この写真終わったら俺たちはいいから美由に告りにいけよ!!」

「うるせぇな、わかってるよ!」

 裕樹は大学進学。

 教師になって山の麓を選手権に導くのが夢だそうだ。

 部室裏、美由を呼び出した。

 以前口にしていた通り、美由は看護科のある大学に進学する。

「美由、いままで本当にありがとう。」

「何よ? 改まって気持ち悪い。

 こちらこそよ。

 泣かせないでよ、もうしばらく逢えなくなるんだから。」

 目を潤ませる美由を強く抱き締めた。

「好きだ、離れても好きだ。

 だから俺が世界一の選手になるのを見ていて欲しい。

 心の傍で。」

 美由の体温が温かく伝わる。

 俺の背中には同じように強く握られた手の感触が伝わる。

「何言ってんのよ! 私の方が好きなんだから! 私が最初で一番のサポーターよ!」

 俺たちの行方を影で見届けていた裕樹達サッカー部員が俺の元へ雪崩込んでくる。

「やったぁ!! おめでとー!」

 告白が成功し、晴れてこの日から美由と恋人になった。


 俺が育ったこの町。

 数え切れないほどの思い出と愛情を与えてくれた。

 ガキの頃からたくさん笑って泣いてサッカーして来た。

 そして今は亡き親父と母さんが育ててくれたこの町を旅立つ。

 この先には果てしなく険しい道が待っているだろう。

 いつかこの町に帰ってくる時、それは俺が世界一の選手になった時だ。

 これは俺がチャンピオーネを聴くまでの礎になった青春時代だ。




高校編無事完結です!

次回から物語の舞台はプロです!

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