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世界大会編「祭典」

 6月、イタリア。

 ファッション。

 グルメは勿論、コロッセオ、ピサの斜塔、トレビの泉などの人気スポット。

 そして水の都ヴェネツィア。

 数え切れない程の魅力がこの国には詰まっている。

 それから忘れてはいけない、カルチョの国。

 アッズーリと呼ばれる偉大な青は近年低迷しているが、母国開催である今大会は並々ならぬ期待がかけられている。

 4年に1度のサッカーの祭典、インターナショナル杯はここ、イタリアで開催される。


「ひえー、こいつは壮観な眺めだなぁ。」

 イタリア南部にあるアマルフィ海岸を見て、右松さんは写真を撮った。

 日本にいる妻子に向けて、後で送るんだと微笑みながら。

 イタリア南部、太陽の街ナポリで合宿を行う俺たちは名所アマルフィへと休暇も兼ねて観光に赴いていた。

 そこから見える景色は美しいの一言、息をするのも忘れるような絶景に心を奪われる。


「先輩たち、俺は燃えてきましたよ!!」

「うるせぇヤンコ。

 お前はでかいんだから上から喋るな、唾が降りかかる。」

「ひどいなぁ。

 勇士さん! 見てくださいよ! アソコにイタリアのボインが!!」

「マジか!?」

 オランダ人とのハーフ、予選最終戦で評価を上げた最年少ヤンコは俺の日本時代のチームメイトの勇士さんとじゃれ合い、楽しそうに見えるが、彼はポジション争いの真っ只中。

 直前までどちらが先発かわからない状況だ。


「丈留は随分、落ち着いてるんだな。」

「はい、世界大会も2年連続ですから。

 それでも楽しみです。」

 加茂さんは遠くを見つめる俺に優しく語りかける。ピッチ内外でこの人は本当に気が利く人だ。

「一家に一台」の異名は伊達ではない。

 今大会コンビを組む事が予想されているが中盤は激戦区、誰とどの組み合わせになるか俺も油断ならない。

 視線を右に移すと、実村さんと樫原が互いに戦術論を重ねている。


「ですが、やはり3バックはトレンドですよね。」

「ああ、俺はオーソドックスな4バック派だけどな。」

 二人は大のつくほどのサッカーマニアだ。

 年間200試合は裕に見ているそうだ。

 サッカーIQの高い2人は2列目のポジションを争う。

「お前らは真面目すぎんだよ、直感だ直感! ねぇ、竜崎さん。」

「直感という言葉は曖昧だし危険だが、たまにはサッカーの事は忘れろよ、

 こんな絶景が目の前にあるんだ。」

 日本の大エース橋本さんはガハハと、豪快に笑いながら二人を指さす。

 そして、キャプテン竜崎さんは冷静に、それでいてチームの父親のような表情を見せる。


 ちなみに自称コンディション不良の舞川さんは宿泊地療養、出不精の米田さんはゲームに講じているそうだが、2人は攻撃のキーマン。

 本番にアジャストしてくれたらそれでいいと、母国での戦いに燃える監督マッテオーリは歯を見せていた。

 そして、もう1人。

 滑り込み招集された男が。

「まぁ今回の主役は頂くで! 大会後にはイングランド移籍や!!」

 浪速のストライカー光宗は直前のリーグ戦で10試合12ゴールと大爆発。

 当落選上からの選出を果たした。

「うるさいよ光宗。

 お前、今日俺の部屋で騒いだらつまみ出すからね。」

「痛いっ痛いわ! すんません! 唐川さん。」

 今シーズンフランスリーグで凌ぎを削ったサイドバック唐川さんも順当に選出。

 彼は微笑みながら光宗の腕を捻る。


 俺たちは海岸にもう一度視線を移す、美しい夕日が海に反射する。

 エメラルドブルーだった海はオレンジ色に、辺りを染める。

 ついに始まる、世界大会。

 夢の舞台で俺たちは過去最高のベスト8、いや、優勝を狙う。

世界大会編スタートです!!


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