表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
70/115

フル代表編「危機的状況」

 インターナショナル杯アジア地区最終予選。

 日本代表は順調なスタートを切り、年明けまでは出場は間違いない物だと見られていた。

 しかし年が明けた2月シリーズでまさかの2連敗。

 3月シリーズの2試合で少なくとも勝ち点4が必要になる。

 さらに実村さんと橋本さんの攻撃の2枚看板を怪我で欠き、対戦相手もグループ最大のライバルイランだとオーストラリアだ。

 そんな中で、メディアはアウェイのイラン戦以降、代表招集から遠ざかっていた俺と樫原の待望論を語り、ついに招集された形だ。


 俺が合流したチームの雰囲気はピリついていた。

「もっとパススピード上げてくれ!!」

「うるせぇんだよ、分かってんだよ!」

 練習中から緊張感を持つことは大事だが、それとはまた違う何か、張り詰めたものがあった。

 代表チームはクラブチームと違い、短期間で戦術を落とし込まなければならない。

 海外組と国内組のシーズン周期も違うのでコンディションにも差が出てしまい、両者の溝は深まってしまう。

「お前ら海外組がなんだよ! ボケ散らかせ!」

「は? お前ら国内みたいに生温い環境でやってる奴らが偉そうにするなよ!」

「もういい! お前ら練習から出ろ!」

 左サイドバックの右松さんとフォワードの舞川さん練習で衝突、見兼ねた竜崎さんが練習からつまみ出す事件が発生してしまった。


 練習後、俺は米田さんと共にマッサージを受けていた。

「丈留君は今日のどう思うー? 俺はめんどくさいのは嫌いだわー。」

「そうですね、まぁ代表って普段と違う練習と仲間だし難しいのは確かですよね。」

 米田さんは大きくため息をついた。

 マイペースに見えて誰よりもチームの事を考えていると、以前竜崎さんから話を聞いていた。

「右松さん、ずっと国内で戦ってるからね。

 海外移籍の話があったけどチームの慰留とかお子さんの事情で移籍できなかったんだ。

 だから海外組の体たらくには腹が立つのかもしれない。」

「そうなんですね……」

 右松さんはバルカンズ一筋10年目、若くから海外移籍を嘱望されたが当時のバルカンズは弱小チーム。

 さらに5年目に生まれた第1子は生まれつき思い難病を患っているらしく、環境を変えるのが好ましくない事もあり、長く国内組として戦ってきた。

「でもね、海外組と国内組って二分するのは好きじゃない。

 俺も一応日の丸背負ってる自負はあるからね。

 まぁめんどくさいけど。

 ふわぁぁ。

 今日はもう寝るよ、長話ありがとね。」

 大きな欠伸をしながら米田は自室へと戻って行った。

 俺は自室で回想する。

 国内一年目の大怪我、二年目のバルカンズとの激闘。

 別に国内のレベルが低いとは全く思わない。

 むしろ日本サッカーの裾野を広げるために国内リーグは日々奮闘していると強く感じていた。

 それぞれの選手がプライドを持って戦っている分、衝突は致し方ない事なのかもしれない。


 夜が明け、試合前日となった午前。

 選手達のみで緊急ミーティングが行われた。

「昨日の事、キャプテンである俺の責任だ。

 すまない。」

 竜崎さんが開口1番謝罪するのも見て、事件の当事者二人が慌てて訂正する。

「やめてください、竜崎さん。

 俺が熱くなっのが悪いんです。

 舞川、すまなかった。」

「いや、俺も言いすぎた。」

 とりあえず、険悪なムードから改善された所で米田さんが挙手する。

「あのさー、この際海外組とか国内組の垣根とっぱらって言いたいことぶつけ合おうよー。

 ぶっちゃけ俺はもっと前からプレスに行きたい。」

「確かに。

 なんか違和感感じてたんだよね。

 チームとして意思統一を図っとくと俺らも助かる。

 な、丈留?」

 加茂さんもこの意見に賛同し、結局、練習時間ギリギリまで話し合った俺たちは、最終的には監督のマッテオーリも交えてディスカッションを進めた。

 こうして、チームは一丸となりイラン戦に向けて士気を高めた。


 運命の3月12日。

 俺たちはナショナルスタジアムにて、イランを迎え撃つ。

 俺と樫原はスタメン起用。

「俺はメディアに煽られてお前達を起用した訳じゃない。

 それぞれが俺の与えた課題をクリアしたご褒美だ、思いっきり暴れて来い!」

 マッテオーリからの太鼓判を受け俺たちはピッチへ向かう。

「丈留、いつになく僕も燃えているよ。」

「俺もだ、行こう!」

 選手入場、眩い光が差し込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ