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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
66/115

海外編「首位攻防」

 決戦の日、静かな朝を迎える。

 いつものように美由と来未と朝食をとる。

 しょっぱめの玉子焼きは俺の大好物だ、試合の日はこれが無いと始まらない。

 そして遺影の前で手を合わせた。

「母さん、親父。

 行ってくるな!」



 二月下旬、フランスリーグ第28節。

 舞台はフランスの首都パリ。

 国内メディアの注目は今期一番だ。

 なぜならこの試合は首位攻防戦、優勝を占うビックマッチだからだ。

 俺たちモナコSFCは対戦するバリ・ジェネシスと勝ち点差2で首位に立つ。

 前回対戦では俺たちが絶不調の渦中におり、0-5の大敗を喫している。

 しかし、今回は立場が逆だ。

 パリは年明け調子を落とし、首位陥落。

 監督が交代が叫ばれている。


「よし、いつも通り。

 走って、戦って、全員攻撃、全員守備! 行くぞ!」

 キャプテン、バソングの掛け声と共にロッカーアウトする俺たち。

 彼とのコンビもシーズン後半になってますます磨きがかかる。

「うらっ! 後ろは任せてくれ! って言いてぇけどあいつらは流石に俺らだけじゃ守れねぇ。

 みんなも守備の意識頼むぜ! なぁ、ビエラ。」

「ゴンさん、そうですね! でもぼく達身体は絶対貼りますよ!」

 センターバックのゴンザレスとビエラは新年に入ってから絶好調。

 クリーンシートの山を築く。

 そして絶好調と言えばこの男の存在も忘れてはいけない。

「今日もガンガン切り裂くぜ!! 特攻は任せな!」

 シャルドネは今シーズン既に8ゴール11アシスト、名実ともにモナコのキープレーヤーだ。

「困ったら俺目掛けて放り込め、そんでミレウス。

 今日も頼むぜ。」

「最近影が薄くなりがちだけど二桁ゴールは諦めてないぜ!」

 ツートップのケネディとミレウスは今日も補完性抜群だ。

 モナコイレブンは意気揚々と整列した。


「ヘイ、カケガミ。

 久しぶりだな、今日は勝つぜ!」

 今冬パリに移籍したアルゼンチン代表ロドスだ。

 年代別世界大会凌ぎを削った。

 整列時に並ぶだけでわかる。

 パリの選手はオーラが違う。

 すべての選手が億を超える年棒で、10秒でコーヒーが飲める言われてるいるプレイヤーが四人もいる。

 中でも右ウイングに入るポルトガル代表のコンセスはキャリア通算300ゴールを上げているスーパープレイヤー、世界最優秀選手のタイトルを3回獲得している。

 俺たちモナコイレブンは黄金の城を攻め落とす事ができるのだろうか。


 完全アウェーの雰囲気の中、パリボールでキックオフする。

 まず、ボールを慣らそうとしているのか、11人全員でボールを触れさせるパリ、無闇にプレスをかけていなされることを嫌う俺たちは一先ずは見守る。

 パリはいきなりポジションチェンジ。

 左サイドのロドスが、トップ下のような位置に顔を出して前線をツートップのような形にする。

 広大なサイドのスペースにはサイドバックがオーバーラップし、厚みのある攻撃を産み出す。

「可変式フォーメーション」と呼ばれ、元来それぞれの役割が振られているポジションの概念を打ち壊す戦術だ。

 しかしこの戦術は織り込み済み、俺たちモナコも可変には可変で対応。

 フリー気味にポジションをとるロドスを俺がマンマーク。

 シャルドネが中に絞り、ミレウス左にずらす形で対応する。


「いいのか? あの人に人数かけなくて?」

 マークにつくロドスがニヤリと笑う。

 パリはセンターバックからエリア内のコンセスロングフィードを蹴り込む。

「ゴンザレス! えっ!?」

 ゴンザレスはマークにつくが、コンセスは片手で彼を弾き飛ばし後からのボールを右足ダイレクトで叩く。

 ボールはゴールに吸い込まれ、スタンドが大歓声に包まれるが、数秒後にため息に変わった。

 直前のハンドオフを主審がファールと判断し、俺たちは九死に一生を得た。

 規格外のプレーに俺たちは驚いたがすぐに切り替え、ボールを回し始め、キャプテンのバソングが右の人差し指を空に突き上げ叫んだ。

「行くぞ! お前ら!」

 モナコSFCの反撃が始まる。

どこのチームをモデルにしてるか、もちろん分かりますよね?笑

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