海外編(特別編)「密着取材」
今回はジャーナリスト五藤目線での1話です。
サッカージャーナリスト。
この仕事を始めて20年経つ、スポーツ雑誌の編集記者をしていた頃から通算すると四半世紀だ。
妻と娘を日本に残し、現在は単身でフランスに在住している。
というのもフランスリーグに所属している一人の日本人に密着する為だ。
彼のプレーには不思議な力がある。見ている者を熱くさせる何かを持っている。
ー懸上 丈留ー
今日は彼の取材日だ。
「五藤さん、本当に僕も同行させてもらってもいいんですか?」
駆け出しジャーナリストの安倍だ。若い頃の自分を見ているようで何かと世話を焼きたくなる。
「ああ、懸上には了承を得てる。」
待ち合わせのレストランに到着。
モナコの選手が入り浸っているらしく、私自身も懸上丈留に密着しているため、顔見知りだ。
通されたテーブル席には既に懸上丈留が座っていた。
「今日はよろしくお願いします、懸上選手。」
「敬語なんてやめてくださいよ。
いつも通り緩く行きましょう!」
公私共に仲良くしている懸上はまさに好青年。
若くして妻子持ちというのは決してサッカー選手だからではないだろう。
彼の人柄だ。
「あ、安倍です。
今日は同行させて貰います。」
「ああ、気楽にしてくださいね。
安倍さんのコラム1度目を通させて頂きましたよ、凄い熱量のある文章ですよね!」
緊張気味の安倍に対してもささやかなフォローをするくらいだ、当然取材陣からの評判の良い。
実際彼に対して批判的な記事は見た事が無い。
Q.「じゃあ、懸上選手。
フランスリーグ挑戦1年目、ここまでどうだった?」
A.「はい、最初はとにかくフィジカルの面のアジャストに苦しみましたね。
日本では経験した事無いプレーの強度でしたから。」
Q.「転機はやっぱりニース戦?」
A.「そうですね。
ここまで小さくまとまり気味だったんで、自分としても、チームとしても殻を敗れた試合でした。」
Q.「確かにそれまでの試合は苦悩してるって感じのプレーだったよな。」
A.「はい。
ほかプレーヤーと比べて"これだ"っていうブレーが無くて、どうしたら違いを見せれるだろうかって。」
Q.「それで、見つけた訳だな。」
A.「俺のプレーに代名詞はいらないです。
チームの為に今出来る事を全力でこなす、それだけです。」
一つ一つの質問に対して真摯に答える、懸上。
今シーズン決して順風満帆だった訳では無いが、現在はスランプを抜け出したようで、一安心である。
Q.「じゃあ、チームメイトで仲がいいのは?」
A.「ケネディですね。
休日に彼の家族と自分の家族で食事に出掛ける事が多いです。
あとはバソング、シャルドネなんかとも仲がいいですね。」
Q.「休日の過ごし方は?」
A.「家族と過ごす事が多いですね。
一人でこっちにいた時はとにかくフランス語を練習しましたね。」
Q.「本当に真面目だな。」
A.「そんな事ないですよ、ははっ。」
Q.「残りシーズン、クラブでの目標は?」
A.「今シーズンはもちろん優勝を狙ってます。
個人としてもベストイレブンを目標に頑張ろうと思います!」
私が初めて懸上丈留を見たのは年代別代表の合宿。
そこから1年足らずの彼の成長速度は目を見張るものがある。
今回はクラブをクローズアップしたが、次回は代表における彼について迫りたいと思う。
次回もインタービュー回です!




