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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
62/115

海外編「仕掛け」

 前半、ソールベージュの猛攻を耐えた俺たち、後半戦へ向けピッチへと向かった。

「ディフェンス、後半きついだろうけど頼むぜ! タケルとバソングは俺にボールを預けてくれ。

 必ずやって見せる。」

 円陣で意気揚々と声を張ったのはチーム最年少のサイドアタッカーシャルドネだった。

 シャルドネは十代ながら先日フランス代表入りを果たした伸び盛りのプレイヤー。

 心身ともにやる気に漲っている。

 しかしながら来季よりビッグクラブへの移籍が取り沙汰されており、下部組織出身の彼は、育ててくれた恩を返すために今シーズン何としてもタイトルが欲しいと、先日の練習後語っていた。

「生意気言ってんじゃねぇよ! 任せろ。

 思いっきり仕掛けてこい、タケルの代表でのチームメイトに一泡吹かせてやれ!」

 ウルグアイ人DFのゴンザレスが腕をまくり上げ、シャルドネの背中を勢いよく叩いた。

 俺は唐澤さんへのリスペクトから同調はできず、苦笑いしたが、同時にクラブでのチームメイトである彼らへの頼もしさを感じた。


後 半が開始し、再びポゼッションを高めるのはソールベージュ、唐澤さんの右サイドから攻撃を仕掛け、チャンスを演出する。

 ウイングのサッチャーが鋭い切り返しを駆使してペナルティエリア内最深部に侵入し、ゴンザレスとの1対1を迎える。

「さっきかっこつけたからには防がないとカッコがつかないよな!」

 ゴンザレスがクレバーな対応でファールなしでボールを奪うが素早い寄せに遭い、やむなくクリアに逃げる。

 再びボールを持ったサッチャーは今度はドリブルで抜ききらずにスワーブのかかったクロスを放り込む。

「こっちサイドは任せてください!ゴンザレスさん!」

 逆サイドまで到達したボールは右サイドバックサイールが神速の対応、事なきを得る。

こうした展開が続いた後半20分、ついに試合が動く。


 サッチャーからボールを奪ったゴンザレスのクリアボールが俺の足下へ届く。

 俺は素早く唐澤さんの裏のスペースへとボールを蹴り込む。

「そこには誰も居ないだろう、ん? なんでお前がそこにいるんだ!!」

 唐澤さんの意表を突き、待ち構えていたのはシャルドネ。

 前半から精力的に守備に動いていた背番号7番を守備から解放し、前線に残らせていた。

 シャルドネは一気にボールを持ち運ぶ。

 しかし、唐澤さんが必死に帰陣し、ここでも1対1を迎える。

 利き足のドリブルコースをカットする唐澤さんに対して、シャルドネは以前から練習していた妙技を披露する。

「あとは頼んだよ!」

 ゴールライン際ギリギリで踏み込んだ左足の裏に右足をクロスさせ、ボールを浮遊させる。

「ここでラボーナか!」

 記者席の五藤さんが立ち上がる。

 中で待ち構えていたケネディが頭で叩き、ソールベージュゴールを陥れる。

 ゴールを奪ったケネディより、アシストしたシャルドネの下に選手が集まり、ケネディは少し不服そうだったが俺はしっかり彼の事も労った。

 不規則なクロスだった事もあり、決して簡単なゴールではなかった。


 記者席の二人は感歎のため息を漏らす。

「さすが、策士ジャンディ。

 まさにVS偽サイドバックですね、サイドの選手を"浮かせた"んですね。」

 興奮気味に語る阿部さんに五藤さんは頷く。

「ああ、だけど当然少ない人数での守備になる分、相当なインテリジェンスと守備センスを必要とする。

 中で粘っていたゴンザレス達はもちろんの事だが、中盤センターのバソングと丈留の存在はやはり大きいよ、ポジショニングが絶妙だ。」

「後は追い込まれたキャプテン唐澤に注目ですね。」

 ソールベージュもこの試合にヨーロッパコンペティション出場権をかけて戦っている手前、簡単に負けるわけにはいない、残り時間モナコイレブンのさらなる結束が必要になる。

 残り25分、試合がリスタートした。

Jリーグはオフシーズンもいよいよ明けてキャンプインですね。

今年も楽しみなシーズンです!

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