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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
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海外編「休日」

 海外移籍後代表も合わせ、週2ペースで試合が続いていたが、リーグ戦がウインターブレイクに入り、1週間試合が空くため、選手達に二日間の完全オフが与えられた。

 俺は束の間の休息を妻と娘の過ごす事にした。

 慣れない環境の中で頑張ってくれている二人のために家族サービスを行うのは当然の事だ。

 3人で街に出かける事にした。

 リゾート地でもあるモナコには常に国際色豊かだ。

 そしてフランス国内に在りながらとても安全である。

 警備体制も整っており、スリにあうリスクも低いとされている。

 治安の良さがモナコSFCを移籍先に選んだ理由の一つでもある。

 ただでさえ、異国での育児は想像を越える苦労を与える事になるので少しでも美由たちを安心させてあげたかった。

「ねぇ、お昼だし丈留が行ってるいつものレストランに連れてってよ。」

 練習が午前で終わる時、俺はチームメイトと行きつけのレストランがあり、休日だが美由達を紹介できてなかったので訪れる事した。


「サリュ、マスター!」

「Salut,タケル!カミさんと子供かい?」

 扉を開けると白ヒゲを蓄えたシェフが出迎えてくれた、サルヴァトーレだ。

「そうだよ、妻の美由と来未だ。」

「ミユとクルミだね。

 いつものにしとくかい?」

「頼むよ。」

「ごゆっくり」と告げてサルヴァトーレは厨房へと消えていった。

 横では美由が口を開けながら硬直していて、ベビーカーの上の来未は手に持つおもちゃで遊び、はしゃいでいた。

「どうしたんだ?」

「あ、いや普通にフランス語で話してたから丈留が別の世界の人に見えたわ。」

 俺は少し照れくさかったが、適当に誤魔化し、椅子を引き美由に座ってもらった。


「おいおい、お前もここにいたのかよ。」

 後ろのテーブルにはチームメイトのケネディ夫妻が食事していた。

「なんだよ、お前もか。

 今日はサッカーの話はナシだからな。」

 せっかくなので食事を共にする事にした。

 美由が来るまでケネディ一家にはお世話になった事を美由に説明した。

 ケネディの妻は日系人という事もあり、美由とすぐに打ち解ける事が出来たようで俺は少しホッとした。


 食後、様々な観光名所を回った後、俺たちは帰宅した。

「なんかずっと夢の中にいるみたい。」

 美由が一息つき、これまでを回顧するように言った。

「迷惑かけっぱなしだな。」

「ううん、そうじゃないの。

 私ね、実は小学生の頃から丈留がサッカー選手になる事ずっと信じてたの。

 だけど隣にいるのはもっと綺麗な人だろうなって。

 アナウンサーとかモデルさんとかキラキラした人。」

 彼女はホットココアを口に運び、優しく言葉を紡ぐ。

「なんだよそれ、そんな事考えたのかよ。」

 俺は笑いながら来未の頭を撫で、照れを隠した。

 今日はよく恥ずかしい気持ちになる。

「でも、ほんとに今は幸せ。

 ありがとうね、私を丈留の人生に入れてくれて。」

 居間には、静かな、そして幸せな時間が流れた。


 ウインターブレイクが空け、リーグ戦が再開する。

 俺たちは快進撃を続け、ついに単独首位がかかった試合を迎える。

 相手はソールベージュ1912、唐澤さんがキャプテンを務めるチームだ。

「久しぶり丈留君、お互い精一杯プレーしようね!!」

「はい、よろしくお願いします!」

 首位浮上がかった日本人対決が幕を開ける。

新年明けましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いします!

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