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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
58/115

海外編「ダービーマッチ」

 30を超えるリーグ戦において一つ一つの試合に勝ち点が分配される。しかしながら、「ダービーマッチ」と呼ばれる試合は通常の分配以上の価値があるとされている。

 順位や戦力で劣る相手が番狂わせを起こす事も数多くあり、データの効力はもはや取るに足らない一つの参考に成り下がる。

 サポーター全面で後押しする事もあり、選手達はエネルギッシュかつ魂のこもったプレーを義務付けられる。

 今日は地中海ダービー、モナコSFC対ニース・スポルトの一戦だ。

 ピッチに足を踏み入れた瞬間に俺は胸を焦がした。

 ホームスタンドには「コレオグラフィー」と呼ばれる一文字が並んでおり、『MONACO』の文字がチームカラーの赤と白で浮かび上がっていた。

 美しい他なく、チームメイトの士気も上がったのがはっきり分かった。

 さらに「Allez!!(がんばれ)」の大歓声がこだまする。

 今日はホームゲーム、落とす訳にはいかない。


 試合が開始すると両チーム激しいプレーの応酬になる。

 キャプテンのバソングが激しいタックルを見せると、相手チームのエース、ブラジル代表MFアンジェルソンはレフェリーの見えない所でマーカーに対し肘を入れるなどのダーティーなプレーで応戦する。

 荒れそうな試合展開だが、バソングは常に声掛けを忘れず、高い集中力を維持する。

 日本サッカー界の某著名人の有名な言葉がある。

「頭はクールにハートは熱く」

 この言葉を体現しているのが俺たちのキャプテンだ。

 スタンドの後押し、キャプテンの支えもあって俺たちは徐々にペースを握り始める。

 そして前半のロスタイムにコーナーキックから先制点を奪い、1-0でハーフタイムを迎える。


 15分の休憩を過ごすロッカールームでは披露の色が濃かった。

 これがヨーロッパコンペティションとリーグ戦、さらにカップ戦を並行して戦うチームの宿命だ。

 ウチは選手層が厚いとは言えず、特に全試合出場中のバソング負担は計り知れなかった。

 ジャンディ監督の判断でキャプテンを欠いて後半に臨むことになり、キャプテンマークは俺に手渡された。

 悔しさを滲ませながら「頼むぞ」と俺の方を叩いたバソングを見て、俺は静かな闘志を燃やした。


 後半に入り、ニースは前線からのプレッシングを強化し、俺たちはペースを掴めない。

バイタルエリアでルーズボールが上がる、思考と行動が披露で一瞬遅れる、このエリアでのミスは命取りだ。

「ビエラ!クリアだ!」

 若きセンターバックのビエラがクリアを空振りしてしまう。

 一瞬のスキをついたアンジェルソンにボールをかっさらわれ失点を喫してしまう。

 スタンドからため息が漏れはじめ、スタジアムに嫌なムードが流れる。

 途中出場のルイスも流れを変えるには至らず、現地実況では「いよいよここまでか、ジャンディ率いるモナコSFC」と嘆かれていたそうだ。

 それでも食らいつく俺たちはシャルドネのミドルシュートで追いついた。


 そんな中で後半43分頃、ミスを取り返そうとビエラが身体を投げだし、顔面でボールをブロックする。

 こぼれ球が俺の足元に。

 恐らくビエラは脳震盪を起こしていただろう。

 俺はボールを外に蹴り出そうとした時だった。

「タケル! 出すな!」

 ベンチに下がったバソングの声だった。

 俺は決意する。

 迷いの先に導き出したプレーを選択した。

E-1カップ、正直かなり屈辱的でしたね。。

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