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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
55/115

フル代表編「順調な滑り出し」

 開始から呼吸をする間もなく、橋本さんが放ったシュートはクロスバーを叩いたが、相手を威圧、そして尻込みさせるには十分だった。

 勇気を持っていたアウェーチームにとってはこのシュートはただの「惜しい」以上の価値をもたらした。


 8月の食事会、試合前のミーティングで重ね重ね先輩達が言っていたのは「もう1度リスペクトさせよう」という言葉だった。

 近年、潤沢な資金をバックに中国や中東諸国はメキメキと力をつけている中で、日本や韓国、オーストラリアといったアジア列強国は苦戦を重ねている。

 大きな要因としては前者が自信をつけ、怯まなくなった事だ。

 守備を固める、パワープレーに持ち込むといったプレーだけでなく、彼らが元来持つ嫌らしさと合わさり、以前のように過度なリスペクトがなくなり、恐れている様子を見せない姿に列強国は「舐めた」試合をすると捉えるようになった。

 しかしそんな中で、今予選もう1度アジアを支配しようというのが日本チームのもくろみだ。

 それだけに格付けを示すかのような橋本さんのシュートは有効というべき他になかった。


「丈留、お前がポジション争うのは実村さんはもちろんだけど、賀茂さんはほんとすげぇから見とけよ。

 俺が日本にいる時チームメイトだったんだ。」

 俺の隣で食い入るように視線を送る南川さんがプッシュするプレーヤーは中盤センターの賀茂さんだ。

 途切れることの無い攻撃の波を作っているのは賀茂さんの所謂「危険察知能力」だ。

 緻密なポジション取り、感の良いインターセプトで攻守ともに縁の下の力持ち役としてレーダーを張り巡らせている。

「実際一緒にやったらわかるんだよ、後ろにいる安心感が。

 それにあの体格をウイークポイントどころか、強みにしてる。

 潜り込むディフェンスは一級品だよ。」

 加茂さんは南川さんの言うように170cmに満たない身長だが、ボール奪取の技術は一級品だ。

 小さな体を相手の脇から忍ばせたり味方の後ろに隠れて飛び出すディフェンスはしばしば形容される「忍者」その物だ。


 そして試合は賀茂さんがクリアボールを拾ったことによる二次攻撃から動く。

 サイドに開いた橋本さんのクロスを三列目から飛び込んできたむ実村さんがボレーで流し込み、日本が先制点を手にする。

 すると、会場の後押しを背にさらなる攻勢に出ると前半にセットプレーから竜崎さんの頭、橋本さんの今度は、とばかりのスーパーミドル。

 後半に入っても2点加点し、5-0と圧勝。

 素晴らしい予選の幕開けを切ったホームチームには拍手喝采が送られた。

 俺の出番は訪れなかったが、試合後監督から呼び出しを受けた。

「タケル、次の試合スタメンだ。

 次は厳しいアウェーゲームだ、準備をしておけ。」

 俺は驚きを隠せなかったが、この試合左サイドに入った樫原のパフォーマンスを考慮し、実村さんを一列前に上げたいそうだ。


 翌日第2戦の地、イランのテヘランに移動。

 歴史的にも中東のゲームは様々な嫌がらせを行ってくることが明確で、予想通り宿泊地の水道がストップするなど精神的な揺さぶりをかけてきた。

 もっとも、練習場のピッチに釘が落ちているよう衝撃的な事件は時代と共に淘汰されたようで、ひと安心した。

 樫原はスタメン落ちを知らされていたようで、悔しながらも俺へ選手の特徴などアドバイスをくれた。

 そして比較的に落ち着いて試合への調整を行った俺たちはついに試合当日を迎えた。

 グループ最大のライバルイランとのビックマッチが始まる。

イタリアまさかの敗退ですね。。

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