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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
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海外編「初の実戦」

 チームに合流して1週間、俺はチームメイトとまずまず打ち解け、家の近いアメリカ人のケネディとは食事を共にする仲になった。

 モナコSFCに移籍した俺だが既に8月に突入しており、チームは開幕2週間前を迎えていた。

 そんな中、ヨーロッパカップの予備予選が行われる事になり、対戦相手はポルトガルの強豪ポルティレンセとなった。

 ポルティレンセには昨年冬から日本代表レギュラーの実村さんが所属しており、途中加入ながら10アシストを記録し、リーグベストイレブンに選ばれた事から「サネムラ」の名は欧州に轟いている。

 実村を視察しに列強チームの強化部はこの一戦に数多く訪れ、日本人対決という事もあって日本のメディア陣も多く駆けつけた。

「久々だな、丈留!そろそろ一緒に代表でやれそうだな。

 今日は負けられないから一切手抜きだ。」

「よろしくお願いします! こっちも負けませんよ!」


 ホームアンドアウェーで行われる予備予選。

 ファーストレグは俺たちのホームスタジアム、スタディオ・パルコで行われる。

 収容人数は25000人、一昨年完成したばかりの新しいスタジアムである。

 先日の年代別世界大会での活躍もあり、俺の注目度は低く無かった。

 地元紙では「サムライキャプテン来たる」の文面で一面を飾り、この日はお披露目という事もあり、熱烈な歓迎を受けた。

 当然俺にかかる期待は小さくなく、サポーターとの顔合わせで何かインパクトを残す必要性を感じていた。

 何より、負けるとせっかく昨年獲得した出場権をみすみす手放してしまう事になる。

 俺は4-4-2のセンターハーフでスタメンに選ばれた。

 ゴールを守るのはフランス代表のウーゴ、長い手足を活かしたセービングが特徴。

 DFに右からレンタルで武者修行中のスペイン人のサイール、ウルグアイ代表の壁ゴンザレス、左利きのセンターバックフランスU-19代表のビエラ、果敢なオーバーラップが得意のコンゴ代表マルキ。

 中盤で俺とコンビを組むのはキャプテンのフランス代表バソング、「静」のボランチでゲームを司る。

 右サイドに切り込み隊長モロッコ代表ザネフ、左サイドに攻撃だけでなく守備で体を張れるフランスU-19代表、シャルドネ。

 ツートップには世界トップクラスのスピードを持つベルギー代表のミレウスと長身を活かしたポストプレイヤー、アメリカ代表ケネディが並ぶ。

 実にスタメンに8カ国もの国籍が並べられており、多国籍軍と言われるこのチームはモナコ公国の特性が反映されている。

 特筆すべき点はスタメン選手の9人が24歳以下で、バソングとウーゴのフランス代表コンビも26歳と最も脂ののった年齢であり、野心を持ったチーム編成になる。

 ベンチにはチームのレジェンドストライカー、元フランス代表35歳のルイスが控える。


 試合は快晴、短く刈られた芝に少々の散水が行われており、ボールは走りやすい。

 キックオフのホイッスルが響く。

 まず、攻撃に転じるのはアウェーチームのポルティレンセ。

 実村さんを中心にボールを保持する。

 現代サッカーの特徴でもある2試合制ではホームチームが慎重に入るケースが多い、「アウェーゴ ール」という通常のゴールの二倍の価値があるゴールがルールとして在するからだ。

 つまり、ホームで完封できるかどうかは大きな鍵になる。


 ポルティレンセの早いパス回しに対して俺たちは統率された守備で対抗。

 俺がボールを追いかけ、バソングが中盤のスペース埋めるように構える。

「今だ!」

 バソングの指示通り俺はサイド際までプレスをかけ、左サイドのシャルドネと挟み込む。

 苦し紛れに中央に返されたボールに反応したのはバソング。

 一気にカウンターに移る。

 左サイドバックのマルキが一気にオーバラップし展開されたボールにダイレクトでクロスを送る。

 これをファーサイドでケネディが落としミレウスが飛び込む。


 大歓声は「ウー」という低い声に変わる。

 ボールは僅かに右に逸れた。

 しかしこのプレーで俺たちは主導権を握り返した。

 沸き立つスタジアム、いきなり訪れた試練がヒートアップして行く。


お久しぶりです!

今月は週二投稿目指します!!

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