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チャンピオーネを聴くまで  作者: 登々野つまり
海外編(フランスリーグ)&予選編
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海外編「日出ずる国から」

 今もまだ微かに胸を打つ世界大会。

 俺たち日本は快進撃を見せ、決勝へと駒を進めたが惜しくも開催国フランスに敗れ準優勝。

 しかしこの大会で脚光を浴びた樫原はレンタル元へ復帰、イングランド名門での激しいレギュラー争いへと邁進していった。

 南川さんは活躍の場をオランダからドイツに移し、現在ワールドツアー中だ。

 俺と同じく、今シーズンから活躍の場を海外に移す勇士さんはイタリアへ。

 カテナチオの文化が今も継承されるカルチョでの活躍が期待される。

 国内組はと言うと、ヴィルモッツが快進撃を見せているようだ。

 光宗は得点ランク上位に食いこみ、チームはアジアリーグ圏内の3位になっている。

 柊さんの現役引退が発表されており、有終の美を飾れるかここから正念場を迎える。


 8月14日。

 メディカルチェックを終えた俺は記者会見を行った。

 先月からフランスに滞在していた事、プロ入り直後から英語に取り組んでいた事もあって、拙いながらも少しのフランス語と英語で自己紹介と意気込みを語る事が出来た。

 俺が新天地に選んだのはフランスリーグ。

 フランスリーグに籍は置かれるが、正確には所在地はフランスではなく、「モナコSFC」というフランスの中に位置する小さな国のチームに在籍することになった。

 ここ、モナコ公国は2.02k㎡と、極めて小さな面積でありながら人口密集率が高く、また租税回避地(タックスヘイブン)である事から、おおよそが外国籍で人口分布が占められる。

 地中海を見渡すことが出来る港は美しいの一言で、俺は初日からそこに身を寄せ、写真を一先ずは日本で過ごしている美由と来未に送信した。

 また、F1などスポーツの開催地になる事もしばしばでスポーツにも縁を感じさせる。


 そんな地で俺が所属する「モナコSFC」は若手が多く活躍する新鋭チーム。

 今シーズンから欧州カップ戦出場権を得た勢いのあるチームだ。

 オーソドックスなサッカーを信条とし、守備時にはブロックを形成し、攻撃時には多くの人数を費やす「全員攻撃・全員守備」を体現するチームだ。

 キャンプインしてから中盤の大黒柱が引き抜かれ、そこで白羽の矢が立ったのが俺だったらしい。監督には運動量と展開力に期待をされているそうだ。


 合流初日、チームへの挨拶をした俺。

 日本人と言う事で舐められる事も差別される事も覚悟していたが、チームメイトの反応は以外にも寛容的だった。

「おー、よろしく、ジェルマンから聞いてるぜ。

 期待してっから早く馴染んでくれ。」

 キャプテンのバソングはフランス代表で、既にフル代表のスタメンでもあったジェルマンとは旧知の仲で俺の事は彼から教えられていたそうだ。

 自己紹介を終えた和やかなムードとは一変して、練習での激しさには俺は衝撃を受けた。

 激しいタックルの応酬、体と体のぶつかり合う音。

 本での練習では考えられなかった光景だ。


「フランスリーグに行くのかい!? まぁキミらしい選択っていえばそうだね。

 気をつけなよ、あの国のサッカーは想像を超えるよ。」

 昨シーズンフランスでプレーしていた樫原は大層驚いた様子だった。

 フランスリーグは五大リーグの中でもとりわけフィジカルが強い。

 黒人系が多く、在籍しバネの強さを活かしたハードなプレーは日本人に向いているとは言い難い。

 しかし俺は自分に足らない判断力のスピードやフィジカルを鍛えるにはこの国がうってつけだと感じた。

 届かなかったあと1歩をこの地で埋める。

 そして夢にまで見た、欧州の舞台の決勝の地目指す挑戦が幕を開けた。


新章開幕です!!

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