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年代別代表編「火蓋」

フランス・・・ヨーロッパU-21王者。元々実力者であったが数年前から移民系との融合が進み、スーパースター軍団に成り上がった。

チームワークに難があったのも過去「四銃士」中心に圧倒的なサッカーを展開。

 フランスのキックオフで始まったゲーム、メインスタンドから見て左から右に攻めるのが日本チーム、右から左に攻めるのがフランス。

 試合は開始早々から両チームが激しくぶつかり合う。


 まず3分、球際の所でクロウが力強さを発揮しボールを左サイドサイドに展開。

 上がってきたサルビアがクロスを上げにかかる。

 長い距離を走ってきた南川さんが懸命に右足を伸ばし、ボールはサイドラインを割る。

「へっ、ミナガワか。

 今日も俺が勝たせてもらうぜ。」

「こっちのセリフだ、お前に負けたと思ったことなんてねぇよ!」

 サルビアはオランダリーグ所属で今シーズン南川さんとマッチアップしている。

 リスタートしてサルビアがロングスローを放り込む。

 頭一つクロウが抜けてヘッドで後ろに流すがこのボールはきっちり金澤がパンチングで弾き出す。

「まだだ!」

 樫原が大きな声を出す、ボールはジェルマンの下へ向かう。

 このボールをダイレクトでジェルマンは叩くが俺はいち早くジェルマンの位置を察してシュートブロックに入る。

「やっぱり、君とはサッカー観が合いそうだね。」

「ああ、是非とも一緒にプレーしてみたいよ。」

 平静を装う俺だったがジェルマンのシュートの重さは段違いでブロックした右足には強烈な痺れが走った。

 俺と同じプレースタイルだが、奴は俺の能力全てを上回る。

 この試合はやはり一筋縄では行かなそうだ。


 ピンチの後にはチャンスというように今度は10分日本にチャンスが訪れる。

 フランスからボールを奪った俺は務さんに預け、そこから一気にロングボールが蹴りこまれ光宗が反応する。

「主役は俺のもんやで!! って、何でおまえそんな所おんねん!」

「ペナルティエリアに張り付くキーパーなんて時代遅れだぜ♪」

 カパネラはロングボールが出るや否や素早く飛び出しボールを処理した。

 その後も何回か裏にボールが出てもすぐにカンパネラに処理されてしまう。


 スタンドではガルシアがミネイロと話し込む。

「あれが一番厄介なんだよ。

 裏へのボールをほとんど処理されてしまうから効果的な抜け出しを期待出来ない。

 それに出てきてクリアではなくて繋ぐからな。カンパネラは相当優秀なキーパーだ。」

「だけど、あのジャパンのフォワードもなかなか頭が切れるぜ、単細胞に見えるけどしっかりカンパネラの動きを観察して徐々にボールに近づいてる。」

 二人の見解ではそれぞれのポジションでどちらがイニシアチブを取るかが試合の争点になるそうだ。

 俺と樫原、務さんとジェルマン、クロウのマッチアップ。

 光宗とネネ、カンパネラとの戦い。

 並びにサイドの南川さんとサルビア。文字通りガチンコ勝負だ。


 そして試合は前半終盤に動く。

「さ、行くぜ。」

「かかってこい…なに!?」

 40分サルビアが南川さんをワンツーで剥がしクロスを上げる。

 左足で上げられたボールは鋭く曲がりファーサイドのクロウの下へ。

「させるか!」

「だからお前は甘いんだよ。」

 樫原が寄せに入る、クロウは胸元に入ったボールをそのままダイレクトジャンピングボレーで合わせる。

 一瞬スタジアムの時が止まる、誰もが胸トラップを予想したクロス、超人的なボレーに誰もが心を奪われる。

 ボールは鋭くドライブがかかりゴールネットを揺らした、金澤は一歩も動けない。


 フランス先制。

 ホームのフランスサポーターは歓喜と狂気入り混じった歓声を上げる。

 クロウな右胸のエンブレムを左手で叩くゴールセレブレーション、さらに歓声のボリュームが上がる。

 悔しそうな顔をしながら南川さんと樫原は俺たちに頭を下げたが、俺はすぐに「切り替えよう」と手を叩いた。

 心中ではヨーロッパでプレーしている彼らでもど肝を抜かれたプレーに少なからず俺にも動揺があった。

 けれどここまで来て、キャプテンとして闘志を漲らせる。

「立派になったな。」

 スタンドにはチームのオフを利用して勇士さんも駆けつけていたそうだ。


 気を取り直してリスタート、ボールを保持し揺さぶりをかける。

 しかしフランスのブロックを前になかなか起点を作れない、俺達のボール回しには会場から耳をつんざく程のブーイングがこだまする。

 焦れてはいけない、俺は必死にチームを鼓舞し続ける。

 そんな中試合を動かしたのは意外な男だった。

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