年代別代表編「辿り着いた場所」
8月3日。
14時4分キックオフ、雲ひとつない澄み渡る快晴で20℃、湿度も低く、文字通りサッカー日和だ。
今大会は天候に極めて恵まれた俺たちだったが決勝も素晴らしいコンディションの下、サッカーをすることが出来た。
選手入場を終え、日本国家が流れる。
テレビの前で歌っているのか口パクなのかと考えていたのも子供の頃。
今こうして憧れた光景に自分自身がたっていることを実感し、声高らかに歌い上げた。
日本のスターティングメンバーはスペイン戦と同様、樫原も強行出場を果たした。
対するフランスはGKに四銃士の一人目カンパネラ。
鋭い飛び出しと高精度なパントキックで攻撃の起点にもなる。
四銃士二人目は左サイドバックのサルビア。
高速クロスとプレースキックに絶対の自信を持ち、現在ビッククラブ争奪戦となっている。
三人目はキャプテンのジェルマン。
ボランチを主戦場とし、ボックストゥーボックスのスタイル、俺と似たプレーヤーだ。22歳の若 さにしてイタリアリーグベストイレブンに選ばれている。
そして四人目がトップ下のキディアンセ=クロウだ。
188cmの長身から予想もつかない俊敏さと圧倒的なフィジカル。
極めつけは両足から放たれるキャノン砲だ。
樫原のレンタル元ガンナーズの絶対的エースだ。
他にもセンターバックのコネなどまさに群雄割拠、最強のタレント軍団だ。
開催国としてここまで15ゴール2失点という圧倒的な戦績で勝ち上がってきた。
フランスサッカーの信条は個々の能力を活かした圧倒的サッカーだ。
良くいえば自由なサッカー、悪く言うと無秩序なサッカーである。
しかしながらキャプテンのジェルマンのカリスマ性の中チームが成り立ってきたという異色のチームでもある。
キャプテンの俺とジェルマン、レフェリー立会いの下でコイントスが行われ、それぞれ握手を交わした。
「さっきは僕達のサポーターが悪かったね。
それから昨日クロウが失礼を働いた事と併せて謝罪するよ。」
「いや、そんな事はいいよ。
せっかくの決勝楽しもう。」
長髪をヘアバンドで束ねた紳士はにこやかに対応した。
俺は日本の円陣加わった。
大会前にはまさかキャプテンを務めるなんて思いもしなかった、正直な所決勝にたどり着いたのも全くをもって想定外だ。
「まずは、ありがとう。
ここまで着いてきてくれて。」
言葉を続けようとした所で南川さんが口を挟む。
「続きは試合後だ、いつもみたいに背中で語ってくれキャプテン!」
南川さんの言葉に呼応するように皆が頷く。
合流したての南川さんからは考えられないような言動で驚いた、試合を重ねる毎に俺の事をキャプテンとして認めてくれたことがたまらなく嬉しい。
その嬉しさを噛み締め俺は「しゃーっ!」と掛け声をあげ、同時に日本イレブンは各々のポジションへと散らばっていった。
試合を裁くコッローニの口元に笛が運ばれ、高く鋭い音がピッチに広がって行った。
今回短くてスイマセン。。




