年代別代表編「予想外」
午後4時にキックオフしたゲームは後半開始に向け空は暗くなり始め、スタンドのライトもそろそろ点灯しようかという様子だ。
後半も引き続きハイプレスは継続しつつ、守備に重きを置きすぎる事を注意しようという旨のミーティングを終え、ピッチに戻った俺たち。
すると逆陣地で既にスペインチームはポジションについていた。
後半キックオフは日本。
光宗が後ろにボールを下げた所でスペインは猛然とプレッシャーをかけて来た。
プレスには連動性があり、FWに合わせて中盤、最終ライン、そしてキーパーまでもが高い位置を取りスペースを消してくる。
ソリッドな守備体系は俺たちにイニシアチブを取らせないという決意の表れだ。
人数をかけて守備をする俺たちと対極的な守備戦術に戸惑いボールを繋げない。
ボールを奪うとスペインはワンタッチでボールを繋ぎ始める。
綺麗な三角形の下ボールを繋がれ的を絞れない。
ガルシアに対して俺はプレスをかけるが簡単にかわされる、足を出してきたディフェンスを簡単にダブルタッチでいなす。
そしてトレスが中盤まで降りてきてボール回しに参加、スペースを開けることを嫌う俺達は一瞬プレスが遅れてしまう。
すかさずトレスが放ったシュートは急激にドライブがかかりGK金澤の頭上を越える。
クロスバーを叩いたボールは鋭くネットを揺らした。
スタンドに目をやるとフランス四銃士のうち3人も大きな声を挙げた。
「WOW! こりゃすげぇな。」
「あそこから落とすのか、今度真似しよう。」
「しかしこれでジャパンはどうするかね。」
「ああ、難しくなるな。
まずこのポゼッション地獄から抜け出すか、それにスペインは隠して持ってるもう一つの武器がある。」
「おいおいまじかよ、こいつら。」
俺はチームを落ち着かせるために円陣を組んだが、リスタート後目を疑うような光景を目にした。
試合は70分に突入していたが、なんとミネイロともうひとりのセンターバックを残して攻撃を開始してきた。
スペインの途中交代で入ってきたサルシドは、データではボランチの選手だがトレスと最前線で構える
それに加え両サイドバックが高い位置に構える一気に俺達の精神状態をリング際に追い込みパンチを繰り返してくる。
圧倒的なパス回しから中央突破を図ると思えばシンプルにクロスを上げられ取り所の的が絞れない。
クロスのこぼれ球をガルシアが突っ込むが一人の壁が立ちはだかる。
「勇士みたいにはなれないけど、俺だって日本のセンターバック任されてんだよ。」
シュートブロックに入ったのはこの日誕生日を迎えた佐野さんだった。
コースの変わったボールはゴール裏スタンドに入った。
俺はボールが飛び込んだスタンドを見てハッとした。
遠く離れた異国にまでこんなにたくさんのサポーターが駆けつけてくれている。
ヴィルモッツのユニフォーム姿のサポーターもいる。
ここで負ける訳にはいかない、サポーターに向けて俺は両手の手のひらを上に向け煽った。
「よっしゃー! 俺達もついてるぜ! 死ぬ気で守れ日本!」
時計の針はラスト5分、試合は最終局面に入った。
京都に住んでるんですけどね、物凄く蒸し暑いんですよ。
これからどんどんそうなると考えると今から恐怖におののいています。。




