年代別代表編「生きるか死ぬか」
アルゼンチン· · ·攻撃陣は世界最強クラス。ロドス、マルセル、カジアーノのトリデンテは脅威。
グループを首位通過した俺達。
ベスト8で迎える一戦、対戦相手はアルゼンチン。
試合開始時間は現地時間昼の13:30分。
会場はザンビア戦とな同じスタッド・ジェントル。
戦前の予想では大方アルゼンチン優勢だった。
アルゼンチンのスターティングメンバーにはグループ最終戦と同じメンバーが組まれた。
なんといっても攻撃陣が強力だ。
4-3-3のシステムでスリートップに右からスペインリーグ王者でスーパーサブを担うカジアーノ、中央にイタリアリーグ得点ランキング3位のマルセル、左には今大会のMVP候補ロドスで構成される。
代わって日本のシステムはアルゼンチンと同じく4-3-3。
開幕戦と同じメンバーが選出された。
試合前の整列中、相手エースのロドスが話し掛けてくる。
「お前がタケルか。
なかなかやるみたいだから期待してるぜ。」
「ああ、よろしく。」
どこか見下したような口ぶりにイラッとしたが、すぐに気を取り直した。
自分はキャプテンなのだから、常に冷静でいなければならない。
決勝トーナメント、負けたら帰国。
そんな緊張感から試合は重苦しい雰囲気で展開される。
両チーム相手の出方を見てからという序盤戦、高いテンションを期待した会場も思わず息を呑む。
そんな状況を打破したのはアルゼンチンだった。
左サイドでボールを持ったロドスがドリブルを開始、と見られたがワンタッチから強烈なシュートを放つ。
鋭いシュートはクロスバーに弾かれ、ラインを割った。
試合前のスカウティングでもロドスのシュートレンジは警戒していたが、実際ピッチに立つと彼の足の振りの速さは規格外だ。
「ヘイヘイ! 出てこいよニッポン!」
ロドスの挑発を無視して、俺は大きな声でチームを盛り立てる。
「いいぞ! 気にするな! 自分たちのやり方を信じよう!」
すると光宗が動き出しを開始する。
中央から右サイドへ、連動して南川さんがダイアゴナルラン、斜めの動きを入れる。
さらに樫原が相手センターバックとサイドバックの間に走り出す。
自陣でボールを受けた俺は一気に樫原へとグラウンダーのボールを送る。
「樫原! フリックだ!」
「分かってるよ! 南川さん。」
左足で軸裏を通した落としのボールを南川さんがダイレクトでシュートを放つ。
「あーくそっ! すまん!」
これは惜しくもゴールを外れる。
連動性あるプレーをきっかけに俺達はリズムを掴む。
しかし牙を向いたのはアルゼンチンだった。
「よしいくぜ、なに!?」
アルゼンチン中盤は務さんがボールを持ったところを人数をかけてボールを奪い、前線のマルセルに配球。
「なんだコイツ! 動かねぇ。」
センターバックの佐野さんが厳しくチェックしようとするがマルセルにハンドオフされ弾き飛ばされてしまう。
そしてマルセルは裏へ走り込んだロドスへスルーパス。
「させるか!」
金澤が反応よく飛び出す。
「甘いぜ!」
右足チップキックで浮かせたボールはゴールの枠外へと軌道を描いていた。
しかしここに飛び込んでいたのはカジアーノ。
先制したのはアルゼンチン、会場のボルテージも一気に引き上げられる。
「慌てるな! やれてるぞ!」
エンジンを組み直しマークの受け渡しなど再確認する。
すると、先制された俺たちだったが慌てることは無かった。
すぐにリズムを取り戻しボールを支配する。
右サイドバックの香山さんがアーリーでクロスをあげる。
俺は三列目から飛び出しダイビングヘッドで飛び込む。
「決まれ!」
叫びながら放ったヘディングは左サイドネットを揺らす。
同点、時計の針は前半43分。
手荒い祝福を受ける。
前半を1-1で折り返した試合は後半さらに激しさを増していくのであった。
暖かくなってきましたね。




