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年代別代表編「誇り」

ザンビア· · ·アフリカ第3代表国。タレントは少ないがアフリカらしい勢いを持ったチーム、グループ敗退が確定している。

 3節の相手はザンビア。

 2連敗で既にグループ敗退が決している。

 3節は同時進行で開催時間は昼の12時45分、会場スタッド・ジェントル、一位通過なら移動もなくこのままこのスタジアムで戦うことになる。


 試合は意外な形で進む。

 ザンビアがロングボール中心に攻め立て、開始20分で2点を奪う。

 ゴールを決めた選手達は独特のダンスで喜びを爆発させる。

 日本にとっては出鼻をくじかれる形となってしまう。

 ベンチスタートの俺達は監督の指示でアップを始める。


 前半ザンビアのハードワークの前にチャンスを作れず2点ビハインドでハーフタイムに入る。

 ロッカールームで監督がゆっくりとした口調で語り始める。

「お前たちは少年時代どうやってボールを蹴ってきた? 光宗。」

「そうですねぇ、俺は地元のチームでストライカーやったね。」

「恵まれた環境だよな。

 当たり前にボールを蹴ることが出来て、当たり前に用具も、対戦相手も、会場も用意されて。

 俺もそうだった。」


 ビブスをつけた南川さんが問いかける。

「つまり、俺たちにはヤツらのようなハングリー精神がないということですか?」

 監督は首を横に降る。

「いや、そうじゃない。

 これは生まれ育った環境だ。

 どうすることもできないし、明日サッカーがなくなったら死ぬなんて言われてもお前達に理解できないのは当たり前だ。

 でもな、お前達にだって信じてきたものがあるはずだ。

 家族、友達、恋人。 

 もう一度それを想像してみろ。」


 目を閉じろと監督が発し1分間程だろうか、目を閉じた後監督がパンッと手を叩いた。

「精神論はここまでだ。

 後半は早い時間で一点返すぞ、そうしたら相手は焦るはずだ。

 相手のロングボールに合わせる必要は無いぞ!」


 言霊という言葉があるように、監督の言葉は選手の心に火をつけた。

 前半慌てふためいていたイレブンは落ち着きを取り戻しボールを保持する。

 そして後半10分コーナーキックから一点を返す。

 さらにその5分後途中から入った南川さんが右足ボレーで試合を振り戻す。


 アフリカのチームに見られる、バタつき。

 メンタル面の勢いと裏腹に逆境で悪循環に陥りやすいのもまた、彼らの特徴である。

 そこから更に5分後、8分後に追加点。一気に逆転し、突き放す。

 スコアラーは南川さん。

 後半から投入され、なんとハットトリックを達成した。


 そこから前に出てきたザンビアに後半アディショナルタイムで一点を返されるが、4-3で見事にグループ三連勝で首位通過を決めた。

 俺や樫原は温存で出場機会は無かった。

 一方、ベルギー対ウルグアイの一戦は後半アディショナルタイムに劇的なゴールをあげたウルグアイが勝利し2位通過を決めた。


 試合後、宿舎に戻りクールダウンを済ませた後ミーティングが行われた。

「お疲れ様。

 みんな今日の試合の後半は誇りを持って戦ってくれた。」

 監督はそう言うと、一つのDVDを取り出し再生する。


「みんな、グルーブリーグ突破おめでとう! ほんとによくやってると思う、力になれなくて申し訳ない。

 俺は今新しいチームでスタメンとるため必死に食らいついてます! みんなも必死に食らいついて最後まで諦めず頑張ってくれ! 辛くなったら丈瑠の背中を見るんだ!」

 勇士さんからのビデオメッセージだった。


 一夜明け、一回戦の相手が決まった。

 最強の攻撃力を誇る南米のアルゼンチンだ。グループではイタリアに苦杯を舐めたが、最終戦では7-2の爆勝を収めている。

 運命のノックアウトラウンドが幕を開ける。


贔屓のチームが調子がいいことこの上ないので私自身の調子もいいことこの上ないです。

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